東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少女は解放され、少年と出会う。
その先が導くものとは。


第4章 風のたどり着く場所
第45話 黒き羽のもたらすもの


微かに光の差し込む部屋の中で、特にやることのない私はぼーっと天井を見ていた。

次はどんな記事を書こうか?そんなことを考えながら。

すると、扉の開く音とともに、まぶしい日の光が差し込んできた。

久々に感じる太陽に目の慣れていない私は、目を細めた。

「時間です。外に出ていいですよ」

見張り役だった白狼天狗にそう告げられて、私はようやく一月経ったことを知った。

外に出て私が最初にしたことは、大きく背伸びをすること。

日の射さない部屋だと、気分まで暗くなってしまいますからね。

「やっと外に出られました。しかし、この程度で私の情熱を止めることはできません!私の感覚が正しければ、異変が起きていたはず。いざ、突撃取材です!!」

私は大きく羽を伸ばし、博麗神社へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしかったのですか?あの程度の罰で」

解放されると同時に飛んでいく元気なアイツの姿を見ていると、隣で側近がそう問いかけてきた。

確かに、上下関係が絶対の天狗社会において、ルールを破った者に軟禁一月というのは軽かったかもしれない。だが・・・

「私は少し嬉しかったのだよ。この数十年、私に挑もうという者はめっきりいなくなってしまった。それを不法侵入とはいえ、あの者はルールを破ったのだ。だからこれは、ちょっとした礼のようなものさ」

私の言葉に、側近は少し複雑そうな顔を浮かべた。

「しかし、これで秩序が乱れるようでは・・・!?」

側近の言葉は途中で止まった。

私が浮かべた笑みを見たからだろう。

「その時は、誰が上なのか教えてやるさ。二度と忘れられないほどにな」

誰か、私に挑むものはいないものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の鍛錬はここまでにしよう。おつかれ」

「はい、ありがとうございました!」

私は師匠に大きく頭を下げた。

近頃は師匠もたくさん技術を教えてくださり、私は大きく成長できている実感を感じるとともに、師匠が私を信用してくれているんだという喜びを感じる。

「妖夢も随分と成長したね。そろそろ一刀流に関しては中伝を教え始めてもいいかもしれないな」

「本当ですか!やった!!」

私は思わず飛び上がりそうになるほど嬉しくなった。

中伝。

皆伝にはまだまだ遠いけど、いつか愛花さんに認めてもらうためにも、頑張らなければ!

でも、師匠に触れあっていけばいくほど、師匠の偉大さを痛感するばかりだ。

この程度の腕でいい気になっていた昔の自分が恥ずかしいです。

そういえば、この間の修行の時師匠は随分と気合が入っていたように感じた。

何かあったんでしょうか?

私としては嬉しかったですが、師匠は大丈夫だったのでしょうか?

何かあったのかすら聞けない自分が悔しい。

師匠に恩を返すためにも、強くなりたいです。

「さて、博麗神社によって行くよね?昼ご飯を作るよ。もちろん、幽々子さんの分も」

「はい。幽々子様も喜びます」

私と師匠は並んで博麗神社に向かう。

私も師匠に倣って最近はなるべく歩くようにしている。

博麗神社の鳥居が見えてきたあたりで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

そういえば、前回の宴会にはいませんでしたね。

珍しいこともあるものです。

「なんと!では前回の異変はその外来人が解決したというのですか!?」

それにしても、いつもよりもテンションが高い気がします。

私たちの気配に気づいたのか、霊夢さんがこちらを向いて手を振ってきた。

私も手を振り返すとその人、文さんも私たちに気づきました。

「妖夢、知り合い?」

「はい。と言っても、たいていの人は彼女を知っていると思いますよ。あの人は鴉天狗の射命丸 文さん。文々。新聞を書いているブン屋です」

「へぇ、幻想郷にも新聞があったんだね」

「ただし、まともなことは書かないけどね」

「ひどいです霊夢さん。私そこまでひどくはないですよ!」

「どうだか」

「私って信用無しですか!?いえ、そんなことより大事なことがありました」

文さんは師匠の目にやってくると、小さく頭を下げた。

「初めまして。伝統の幻想ブン屋。清く正しい射命丸 文と申します!早速で悪いのですが、取材よろしいですか!?」

よほど興奮しているのか、前のめりになる文さんに少し引き気味の師匠。

本当にどうしたんでしょうか?

「それはいいんだけど、僕もその新聞を読んでもいいかな?できれば定期的に届けてくれると嬉しい」

師匠の言葉に、文さんの動きが止まった。

確か、文さんの新聞って・・・

「読んで、くれるんですか!?」

「え!?泣くほど!」

師匠の言葉に目じりに涙を浮かべる文さん。

「幻想郷で新聞を読む奴なんてそうそういないのよ。ていうか静也、本当に読むつもり?」

「もちろんさ。妖夢、なぜだと思う?」

軽い調子で私に聞く師匠。

でもこれは私を試しているはずです!

「情報のためですよね?どんなことでも、何か行動を起こす時は情報が必要。ですよね?」

「その通り。上出来だ」

師匠の期待に応えることができたことにほっと胸をなでおろす。

「では早速。まずは・・・」

思いがけず手に入れることのできた師匠の情報に、私は初めて文さんに感謝した。




静也は記事に載ることになった。
果たして、それは何をもたらすのだろうか。
次回を乞うご期待。

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