自分に、何ができるのかを。
気が付くと、僕は真っ暗な空間にいた。
立っている感じはしないのに、浮いている感じもしない不思議な空間だ。
「お、来たか」
その声に振り返ってみると、そこにいたのは・・・
「僕?」
「そうさ。俺はお前、お前は俺だ」
そこに立っていたのは僕と全く同じ見た目の人物。
数秒考えて、納得した。
「もう一人の僕みたいなもの?」
「まぁ似たようなもんだ。俺は表には出ないけどな」
そう言ってもう一人の僕は肩をすくめた。
「さて、早速だがお前の能力を教えるぞ」
「僕にもあるんだ、能力」
「そりゃそうさ。能力がなければ俺はここにはいない。お前の能力はこれだ」
もう一人の僕の手が頭に触れた。
その瞬間、頭の中にイメージが広がった。
「今のは?今のが僕の能力?」
「そうだ。言葉で説明するより、こっちの方が速くて分かりやすいだろ」
「確かにそうだね。すごい、これが僕の能力なんだ・・・そうだ!もう一人の僕なら、失くしてしまった僕の記憶も知ってるんじゃ!?」
「悪いが、それはできない。俺はあくまでお前の心と霊夢の力が作り出した幻影のようなもの。お前が知っていること以上のことは、俺も知らないんだ」
「そっか、じゃあ仕方ないね」
「すまない」
「良いって」
その時、頭上から光が差してきて、霊夢の声が聞こえてきた。
「どう静也、もう少しかかりそう?」
「ううん、もう大丈夫だよ」
「それなら意識をこっちに戻すわよ」
「お願い」
「じゃあな、向こうでもがんばれよ❝俺❞」
「うん。また機会があれば会おう❝僕❞」
入ってきた時とは逆の引っ張られるような感覚。
明るい光に目を開けてみると、目の前に霊夢と魔理沙の顔があった。
「どうだったかしら?」
「うん、僕にも能力はあったよ。
僕の能力は❝願いを叶える程度の能力❞だ」
「は、強すぎない(だぜ)!?」
僕も最初そう思ったから、二人の反応は面白いな。
「それって用は、何でもできるってことだろ。それじゃ紫とおんなじだぜ!」
「いや、そこまで万能ではないんだ。」
「どういうこと?」
「世の中の理を壊すような願いは叶えられないんだ。夜を昼に変えるとかね。それに質量保存の法則や等価交換を無視することもできないんだ」
「ふーん・・・」
「は?質量保存?等価交換?何のことかさっぱりだぜ」
何かを考え始める霊夢と今にも頭から煙を出しそうな魔理沙。
うん、また一つ二人の事を知ることができたな。
これからは魔理沙に難しい話をするのはよそう。
「つまり、常識の範囲内の願いしか叶えられず、何かを作ろうとすれば必ず材料がいるってこと?」
「ご名答」
「なんだよ、だったら最初からそういえばいいじゃないか」
「あんたが魔法以外の事は勉強しないのがいけないんでしょ」
「だってそれ以外は必要ない知識だろ?っていうか、いつも修行をさぼってる霊夢には言われたくないぜ!!」
「私は必要ないからいいのよ」
「なんだと!」
「なによ!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
今にも弾幕を打ち出しそうなふたりをなだめると、しぶしぶといった感じで引き下がった。
この二人は親友というより、悪友の方が近いのかもしれないな。
「まぁそれはいいとしてだ。静也の能力も分かったことだし、さっそく弾幕ごっこしようぜ。そして私が勝ったら、そのかばんの中のもんなんかくれ!」
「え~・・・」
正直なところ、他にも聞きたいことがいろいろあるんだけど、魔理沙のキラキラした笑顔を見ていると、断れなくなった。
「仕方ないな。どのみち弾幕ごっこにも慣れないといけないみたいだしね」
「うっし!そうこなくっちゃな」
「ひとまず、弾幕の打ち方とスペルカードの作り方を教えてほしいんだけど」
「それは私が教えてあげるわ」
こうして、僕の初めての弾幕ごっこが行われることになった。
静也は己の能力を知った。
彼はこの能力を使いこなせるのだろうか?
それでは次回第4話を、こうご期待