東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少年は自分の中に問いかける。
自分に、何ができるのかを。


第3話 心の声

気が付くと、僕は真っ暗な空間にいた。

立っている感じはしないのに、浮いている感じもしない不思議な空間だ。

「お、来たか」

その声に振り返ってみると、そこにいたのは・・・

「僕?」

「そうさ。俺はお前、お前は俺だ」

そこに立っていたのは僕と全く同じ見た目の人物。

数秒考えて、納得した。

「もう一人の僕みたいなもの?」

「まぁ似たようなもんだ。俺は表には出ないけどな」

そう言ってもう一人の僕は肩をすくめた。

「さて、早速だがお前の能力を教えるぞ」

「僕にもあるんだ、能力」

「そりゃそうさ。能力がなければ俺はここにはいない。お前の能力はこれだ」

もう一人の僕の手が頭に触れた。

その瞬間、頭の中にイメージが広がった。

「今のは?今のが僕の能力?」

「そうだ。言葉で説明するより、こっちの方が速くて分かりやすいだろ」

「確かにそうだね。すごい、これが僕の能力なんだ・・・そうだ!もう一人の僕なら、失くしてしまった僕の記憶も知ってるんじゃ!?」

「悪いが、それはできない。俺はあくまでお前の心と霊夢の力が作り出した幻影のようなもの。お前が知っていること以上のことは、俺も知らないんだ」

「そっか、じゃあ仕方ないね」

「すまない」

「良いって」

その時、頭上から光が差してきて、霊夢の声が聞こえてきた。

「どう静也、もう少しかかりそう?」

「ううん、もう大丈夫だよ」

「それなら意識をこっちに戻すわよ」

「お願い」

「じゃあな、向こうでもがんばれよ❝俺❞」

「うん。また機会があれば会おう❝僕❞」

入ってきた時とは逆の引っ張られるような感覚。

明るい光に目を開けてみると、目の前に霊夢と魔理沙の顔があった。

「どうだったかしら?」

「うん、僕にも能力はあったよ。

僕の能力は❝願いを叶える程度の能力❞だ」

「は、強すぎない(だぜ)!?」

僕も最初そう思ったから、二人の反応は面白いな。

「それって用は、何でもできるってことだろ。それじゃ紫とおんなじだぜ!」

「いや、そこまで万能ではないんだ。」

「どういうこと?」

「世の中の理を壊すような願いは叶えられないんだ。夜を昼に変えるとかね。それに質量保存の法則や等価交換を無視することもできないんだ」

「ふーん・・・」

「は?質量保存?等価交換?何のことかさっぱりだぜ」

何かを考え始める霊夢と今にも頭から煙を出しそうな魔理沙。

うん、また一つ二人の事を知ることができたな。

これからは魔理沙に難しい話をするのはよそう。

「つまり、常識の範囲内の願いしか叶えられず、何かを作ろうとすれば必ず材料がいるってこと?」

「ご名答」

「なんだよ、だったら最初からそういえばいいじゃないか」

「あんたが魔法以外の事は勉強しないのがいけないんでしょ」

「だってそれ以外は必要ない知識だろ?っていうか、いつも修行をさぼってる霊夢には言われたくないぜ!!」

「私は必要ないからいいのよ」

「なんだと!」

「なによ!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」

今にも弾幕を打ち出しそうなふたりをなだめると、しぶしぶといった感じで引き下がった。

この二人は親友というより、悪友の方が近いのかもしれないな。

「まぁそれはいいとしてだ。静也の能力も分かったことだし、さっそく弾幕ごっこしようぜ。そして私が勝ったら、そのかばんの中のもんなんかくれ!」

「え~・・・」

正直なところ、他にも聞きたいことがいろいろあるんだけど、魔理沙のキラキラした笑顔を見ていると、断れなくなった。

「仕方ないな。どのみち弾幕ごっこにも慣れないといけないみたいだしね」

「うっし!そうこなくっちゃな」

「ひとまず、弾幕の打ち方とスペルカードの作り方を教えてほしいんだけど」

「それは私が教えてあげるわ」

こうして、僕の初めての弾幕ごっこが行われることになった。




静也は己の能力を知った。
彼はこの能力を使いこなせるのだろうか?
それでは次回第4話を、こうご期待

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