東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少女は紅き館の主と出会う。
その出会いは、少女に何をもたらすのか。


第29話 少女達の邂逅

「いつまで待ってればいいんだろう?」

別にそんなに時間は立ってないんだけど、

門の前に一人で待たされるのも退屈だな。

「お待たせいたしました」

私の背後から女の人の声がした。

近づいてくる気配がなかった。

よほど気配を消すのがうまいのか、それとも一瞬でここに来たのか・・・

まぁ、考えても仕方ないか。

後ろを見ると、銀髪でメイド服を着た女の人が立っていた。

「この館のメイド長を務めております、十六夜 咲夜と申します。

お嬢様の元へ案内いたしますので、どうぞこちらへ」

先に歩き出したメイドさんの後に続いて私も館に入る。

館の中には、さっき見た妖精みたいな娘達がメイド服を着ていた。

あれがメイド?

「さっきの門番の人も妖怪でしたけど、この館に人間は何人いるんですか?」

「やはり、お分かりになるのですね。

それも龍導院の”眼”ですか?」

「やっぱり、お兄ちゃんのことを知っているんですね」

「なるほど、静也様の妹様でしたか。

その話は私ではなくお嬢様と。この中にいらっしゃいます」

私が案内されたのはこの館でもひと際豪勢な扉の所だった。

お嬢様の部屋なら当然か。

「お嬢様、件の少女を連れてまいりました」

「いいわ。入りなさい」

中から聞こえた声は思いのほか幼かった。

でも私はほかのことに気を取られてた。

扉越しからでも感じる濃厚な妖力。

紫さんは上手に隠してたみたいだけど、

それは自分の妖力を隠せるだけの実力が有るってこと。

ここのお嬢様って、どれだけの化け物なの?

それなりの修羅場を潜ってきたつもりだけど、私の頬を冷汗が流れた。

これは、下手なこと言えないな。

私は一度深呼吸をして扉を開けた。

「紅魔館が主、レミリア・スカーレットよ。

ようこそ、龍導院の少女」

あの羽からすると、吸血鬼かな?

「龍導院家が長女、龍導院 愛花と申します。

以後お見知りおきください」

「龍導院家の長女ということは、静也の妹ね。

かしこまる必要はないわ。静也には随分と世話になったのだから」

「おに・・・、兄をご存じなのですね。

よろしければ、居場所を教えていただけないでしょうか?」

「その前に一つ提案があるわ。あなた、ここのメイドになる気はないかしら?」

「・・・へ?何言ってるの?」

予想外の言葉についいつもの口調が出てしまった。

慌てて口を押えるけど、レミリアさんは怒る様子はなかった。

「メイドなんて無理だよ。それに、お兄ちゃんと一緒の家がいい」

「残念だけど、居候を二人抱えられるほど霊夢に余裕はないわ。

あなたも強いようだけど、

野宿ばかりで生きていられるような優しい世界ではないわよ、ここは」

「うっ!でも、村ぐらいならあるでしょ?そこで・・・」

「突然やってきた少女。

それも外来人に、そう簡単に仕事が見つかるとは思えないけど」

「それは・・・そうかもだけど・・・」

「ふふふ・・・」

うわ~、これ苦手なタイプ。

お兄ちゃんと一緒で、だんだんと私の反論の内容を消していく。

レミリアさんも軍略家タイプだ。

「ここなら衣食住の心配はいらないし、仕事も咲夜がきちんと教えるわ。

ちょうど今夜宴会が有るから、静也とはそこで合えるわよ。

どうする?あなたの選択肢は、それほど多くないと思うけど」

・・・はぁ、仕方ないか。

「分かりました。よろしくお願いします、お嬢様」

「ふふ、あなたは今日から私の妹の専属メイドよ。

頼んだわよ、愛花」

 

 




期せずして?働き場所を見つけた愛花。
静也との再会は、また次の話。
次回を乞うご期待。

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