東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

28 / 48
少女は何よりも大切な者のために、幻想へと誘われた。
そこで出会う住人たちに、少女は何を得るのだろうか。



第28話 桃色と紅

周りに目がたくさんある不気味な空間が終わると、

私は深い森の中にいた。

そしていつの間にか、私の手には一つの弓が握られていた。

慌てて腰を見ると、ご丁寧に矢筒もある。

「どんな手品を使ったの?感覚が全然なかった」

紫って名乗ってたけど、やっぱりただものじゃない。

改めて弓に目を向ける。

僅かに青白く輝いていて、ただの弓じゃなさそう。

今度はその弓を”視る”。

この弓自体にも霊力が流れていて、神器まではいかないけど、

それに近いものを感じる。

「これを使えってことなのかな?まぁ、良い武器は嬉しいけど」

私は試しに矢をつがえて放ってみる。

矢は私の思い通りの軌跡を描いた。

うん、使えそう。

一瞬私の中から霊力が抜ける感覚がした。

なるほどね、矢は私の霊力から作られるんだ。

なら矢の本数を気にしなくていいな。

「おーい!早く行こうよ!!」

奥の方から女の子の声が聞こえた。

森の中をその声の方に向かっていくと、広い湖に出た。

「あれ?声が聞こえたと思ったんだけど、見当たらないな・・・」

空を見上げてみると、羽を生やした小さな女の子たちが空を飛んでいた。

「まるで妖精みたい。本当に人間以外も普通に暮らしてるんだ」

私は思わず笑ってしまった。

お兄ちゃんが望んでいた世界、やっと見つかった。

「って、こんなことしてる場合じゃなかった!早くお兄ちゃんを見つけないと!!」

私は矢を背中にからうと、走り出す。

そう言えば、あの紫にお兄ちゃんの場所を聞いてくればよかった。

いつも稽古の時にお兄ちゃんに言われてるのにな。

どれくらい走っただろう?目の前に一面真っ紅な館が現れた。

「なにこの館?目に悪すぎじゃない?」

でもここの人に聞けば、お兄ちゃんがいるところを知ってるかも。

ちょうど門の前に女の人が立ってた。

でもその人、立ったまま寝てる。

「あの~、すいません・・・」

声をかけてみるけど、全然起きる気配がない。

どうしよう?流石に勝手に家に入っちゃだめだよね。

う~ん、門の前にいるってことは、たぶん門番だよね?

それなら・・・

私はその人の一瞬だけ殺気を送る。

その途端、目の前の女の人はすぐさま目を開いてこぶしを構えた。

でも私が弓を構えていないのを見ると、こぶしを下ろした。

「敵が来たのかと思いました。見ない顔ですね。どちら様ですか?

 私は紅 美鈴と言います」

「私は龍導院 愛花です。少し聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」

「龍導院?少々お待ちください」

美鈴さんは駆け足で館の中に入っていった。

あの様子だとお兄ちゃんのことを知ってるみたいだね。

いきなり当たりを引くなんて、さすが私!

お兄ちゃん、すぐに行くからね。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「ふふ、今夜が楽しみで仕方ないわ。

 こんなにわくわくしたの、一体いつ以来かしら?」

昨日、霊夢がここにやってきて、今夜宴会をやることを告げて行った。

この間の異変と、静也と真の歓迎会を兼ねてやるそうだ。

もちろん、私達紅魔館も全員が参加する。

いつもは外に出るのを嫌がるパチェも、今回はすぐに行くといった。

私は椅子に座って咲夜の入れた紅茶を飲む。

早く夜にならないかしら。

「お嬢様、少しよろしいでしょうか?」

「良いわよ。どうしたの咲夜?」

「龍導院を名乗る少女が館の前に来ているそうです。

 いかがいたしますか?」

「龍導院ですって?」

静也と同じ苗字、偶然とは考えにくいわね。

まさか静也には、すでに伴侶がいたと言うの?

「その少女の見た目は?」

「背中に弓をからっており、とても小柄な少女だったそうです」

「私が対応をするわ。ここに連れてきてちょうだい」

「かしこまりました」

龍導院を名乗る少女、見極める必要があるわね。




紅魔館へとたどり着いた愛花。
果たして愛花は、レミリアと何を語るのだろうか?
次回を乞うご期待。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。