東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少女は最愛の人を捜し求める。
そして、新たな世界に誘われる。


第27話 全ては貴方のために

「う・・・ん・・・」

窓から漏れ出る光で私は目を覚ました。

辺りを見渡して、ここが自分の部屋じゃないことに気が付いた。

「そっか。寂しくてお兄ちゃんの部屋に来て、そのまま寝ちゃったんだ」

お兄ちゃんがいなくなってもうずいぶん経つ。

部屋の中から『白龍』と『黒龍』が無くなってたから、

連れ去られたんじゃないと思う。

でも、家族に何も言わずにお兄ちゃんがいなくなるなんて信じられない。

それに、お兄ちゃんがいなくなってすぐに真もいなくなった。

真のことだから、お兄ちゃんを探しに行ったに決まってる。

私はもう、何日も学校に行ってない。

もしかしたらお兄ちゃんが返ってくるかもしれないと思うと、家から出られない。

それなのに、ずっとお兄ちゃん心配してたお父さんたちが昨日、

信じられないことを言い始めた。

『愛花、静也のことはもう気にしなくていい』

『え?なにそれ?もうお兄ちゃんのことなんて、どうでもいいってこと!』

『ち、違う愛花、そういう意味じゃ・・・』

『信じらんない!お父さんがそんな薄情な人だとは思わなかった!!』

そのまま私はお兄ちゃんの部屋に駆け込んだ後、そのまま寝ちゃたんだ。

もう一度お兄ちゃんの布団に倒れこむ。

抱きしめている枕から香るお兄ちゃんの匂いが、だんだんと薄くなっていく。

それが、お兄ちゃんがだんだんと離れていくみたいに感じて、怖い。

「会いたい。会いたいよ、お兄ちゃん」

泣かないって決めてたのに、思わず涙があふれだしてきた。

「寂しいよお兄ちゃん。私このままじゃ、おかしくなっちゃいそう」

不意におなかが鳴った。

そう言えば、昨日の夜から何も食べてなかった。

でも、食欲無いな。

もう一度目をつぶる。

せめて、お兄ちゃんの夢を見たいな。

そのままもう一度眠ろうとする。

その直後に布団から跳ね起きて、

お兄ちゃんが机の中に隠している護身用のダガーを取り出して構える。

「誰?私のこと見てるのは分かってるよ」

「驚いたわね。てっきり塞ぎ込んでるんだと思ってたけど」

「なめないで。私は龍導院家の長女。

それに何より、お兄ちゃんの妹なんだから!」

「流石ね。龍導院 愛花。」

私の目の前に不気味な裂け目が現れて、そこから一人の女の人が現れた。

「安心しなさい、あなたに危害を加える気はないわ」

私はしばらくその人を見た後、ダガーを下ろす。

「一応信じてあげる。でも妙な真似をしないでね。

私の”目”をなめないで」

「もちろん知っているわ、桃守龍。

それとも、”龍眼の弓兵”と呼んだほうがいいかしら?」

「そんなことを話しに来たわけじゃないでしょ?

私の通り名を知ってるってことは、ただの妖怪でもないだろうし」

「貴方を幻想郷に招待しに来たのよ」

「幻想郷?どこなの?」

「人と妖怪、それ以上の種族が共存する世界。

そして何よりも重要なのは、静也がいる世界よ」

「お兄ちゃんが!!」

「真もいるわ。もちろんあなたも来るでしょう?」

「当たり前だよ!どうやったらいけるの!?」

「このスキマに入ってちょうだい」

私はすぐさまその裂け目に駆け込む。

お兄ちゃんがいる。

それ以外の理由なんて私にはいらない。

「せっかちね。どこに落とそうかしら・・・

そうね、あそこがいいわ」

 




静也の後を追い、幻想郷へと向かった愛花。
果たして愛花は、静也に会えるのだろうか。
次回を乞うご期待。
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