今明かされる、龍王の力とは。
「・・・うっ!」
腹部の鈍い痛みで意識を取り戻す。
薄く目を開けると、見えたのは赤い絨毯の床。
そして耳には僕の名前を叫ぶ真と魔理沙の声。
「木龍よ、汝が加護を我に・・・」
(はい。すぐにでも)
かすれた声でつぶやくと、僕の体を温かな緑色の光が包んだ。
すると、腹部の痛みが薄まり、傷がみるみるふさがっていく。
これが木龍の加護、想像以上だ。
立ち上がって前を見てみると、霊夢が2対1で戦っている。
あの二人を相手にできる霊夢はさすがだけど、防戦一方の状況だ。
床に落ちていた白竜と銃を拾いあげ、すぐさま発砲。
弾は躱されたけど、三人を一旦離させることはできた。
「静也!?フランに斬られたはずじゃ?」
「説明は後、来るよ霊夢!」
一度は動きを止めた二人だったが、再びフランドールが僕の方に向かってくる。
その隙に、僕は霊夢を霊視する。
霊夢が持つのは、光の気。
「聖龍よ、汝の加護を与え給え!」
(かしこまりました)
霊夢の体を白い光が包む。
するとさっきまで相打ちだった霊夢の弾幕がわずかにレミリアを押し始めた。
「なにこれ、威力が上がった!?」
「霊力は気にしなくていい。全力で行くんだ!」
「よくわからないけど、分かったわ!」
目線を前に戻せば、フランドールが剣を振り上げていた。
その軌道を読み、前転してレーヴァテインを躱して背後に回り込む。
速さや読みは決して負けていない。
勝つために必要なのは、彼女の膂力に負けない力。
「我が身に宿れ、炎龍!」
(御意)
僕の体を赤い光が包み、体の奥から力が湧いてくるのを感じる。
白龍を右手に持ち替え、フランドールに向かって振り下ろす。
フランドールは剣を横に倒すことで防いだけど、
そうなることは分かっていた。
手を止めずに連続で刀を振るう。
袈裟斬り、逆袈裟斬り、横薙ぎ。
同じ個所を狙わず、
多種に渡る軌道をランダムに繰り出すことで相手に剣筋を読ませない。
さっきはびくともしなかった小さな体が、今は少しずつ後ろに下がっている。
このままならいける!!
(主よ、このまま剣を合わせていればいずれ白竜をも折れてしまうぞ)
炎龍の声に冷静さを取り戻す。
黒龍ほどではないが、白竜もレーヴァテインと打ち合わせていた。
このままフランドールが防御に専念すれば、白竜がどうなるのかは明白だ。
(ありがとう炎龍。おかげで気づけたよ)
(礼には及ばぬぞ、主よ)
しかしどうする?銃倉はすでに空、残っているのは白竜のみ。
すぐに決着をつけようにも、白竜一本ではそれも難しい。
どうすればいいんだ?
フランドールへの手は止めず、頭の片隅で考える。
本来であれば詰みの状態だ。
けれど今なら・・・
(金龍、君の変環で作り出したものは加護を変えても残るかい?)
(帝の霊力が消えない限り、残ります)
それなら行ける。
フランドールに全力で刀を振るって怯ませた後、後ろに下がる。
(金龍、汝の加護を)
(了解)
僕の体を銀色の光が包む。
白龍を地面に刺し、手の中に刀をイメージする。
わずかに霊力が抜ける感覚とともに、手の中にイメージ通りの刀が出来ていた。
霊力で作られたこれなら、炎で折れることもないだろう。
(炎龍、もう一度頼む)
(お任せを)
両手に刀を作り終わると、すぐに炎龍の加護に戻す。
そして今気づいたけど、刀もわずかに赤く光っていて、炎の気を帯びているみたいだ。
(炎龍、フランドールが持つのは炎の気で合っているかい?)
(彼の者は二つの気を持っているようですが、炎と言っていいでしょう)
(分かった。ありがとう)
それだけ聞ければ十分だ。
足に力を込めて一気に駆け出す。
フランドールもまた大剣を大上段に構えて速度を上げる。
このままいけば正面からあたるが、もちろんそんなことはしない。
右へひねっていた体を利用して急制動をかけ、
左へと反転し、正面から剣を振り下ろしたフランドールの左側に抜ける。
「水龍よ、我に加護を与え給え!」
(了解いたしました)
理性を感じなかったから大丈夫だと思うけど、
確実に勝つためにこのタイミングで加護を切り替える。
右の剣を上から打ち付け、左の剣は下から振り上げる。
戦闘が始まってから一度も変わらなかったフランドールの顔が、
一瞬苦痛にゆがんだ。
陰陽師の基本、五行相克。
水克火だ。
フランドールの火の気を、水の気で打ち消しているんだ。
左の剣で横薙ぎに払い、右の剣で柄の部分を切り上げる。
そしてついに、フランドールの手から大剣が吹き飛んだ。
「もらった!龍導二刀流剣術奧伝
二刀流の二つあるうちの奧伝の一つ。
雄々しき龍は、戦いで浴びた敵の血でさえも美しい。
それ故に刹那の時間に二閃の斬撃を繰り出す。
水龍の加護を受けた刀が、ついにフランドールを捉えた。
もちろんこれは弾幕ごっこ。
斬った所から血が出ることはなく、フランドールは力が抜けて仰向けに倒れた。
そしてやはり、その体から黒い霧のようなものが抜けだしていった。
それを見届けてから目線を前に向けると、
霊夢のスペルがレミリアを倒したところだった。
それを見届けて、僕も肩から力を抜く。
厳しい戦いではあったけど、何とか勝つ事が出来た。
レミリアとフランを倒した静也と霊夢。
果たして、この異変の主犯とは?
次回を乞うご期待。