東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少年は己の血の中に眠る力に出会う。
果たして、龍帝とは。


第22話 黒き龍帝

気が付くと、僕は漆黒の空間にいた。

自分の姿さえも見えない深淵の闇。

「・・・ま」

僕は、死んだのか?

脳裏に蘇るのは黒龍が折れ、フランドールのレーヴァテインが僕の体を貫いた記憶。

「・・・様」

僕の能力で強度を上げていたとはいえ、フランドールの剣は炎を上げていた。

その熱に耐えられなかったんだろう。

「・・・帝様」

僕は、また守れなかったのか?

全てを守れるなんて思ってなかった。

けど、せめて守りたいと思ったものだけでも守りたかった。

けれど結局、何一つ守れなかった。

すまない、霊夢。

ごめん、魔理沙。

後は頼んだよ、まこ・・・

「龍帝様」

その声を認識した途端、目の前を光が包んだ。

恐る恐る目を開けると、8体の巨大な龍が僕を取り囲んでいた。

「これは、いったい?」

「貴方様が目覚めるのを、我ら一同心待ちにしておりました」

「僕が目覚めた?一体何に?」

僕の目の前にいる薄緑色の鱗を持つ龍が話しかけてくる。

「陰陽師にです。元より幻想郷に来たことで高まっていた霊力が、

貴方様が命の危機に瀕したことで、血の中に眠る力が完全に目覚めたのです」

「僕が、陰陽師?じゃあ、君たちは何者?」

「我々は八龍王。代々龍導院家に仕えてきた護法式にございます」

「・・・式神」

「はい。我々は初代龍導院家当主により下され、式神の契約を結びました。

故に、我々は主のことをこう呼びます。

龍王と龍神の間の存在、即ち龍帝(・・)と。

我々は”龍の加護を与える程度”の能力を持っています」

そこで言葉を区切り、一体を残して一歩下がる龍達。

残されたの炎のように真っ赤な鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、一ノ龍・炎龍。与える加護は身体強化」

次に出てきたのは美しい蒼色の鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、二ノ龍・水龍。与える加護は五感強化です」

次に出てきたのは深緑色の鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、三ノ龍・木龍。与える加護は基礎治癒能力の上昇です」

次に出てきたのはさっきまで僕に話しかけていた龍。

「八龍王が一柱、四ノ龍・風龍。与える加護は追い風」

次に出てきたのは鋭い鋼色の鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、五ノ龍・金龍。与える加護は変換だ」

次に出てきたのは茶色の鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、六ノ龍・土龍。与える加護は硬化じゃ」

次に出てきたのは白く輝く鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、七ノ龍・聖龍。与える加護は霊力の上昇にございます」

最後に出てきたのは漆黒の鱗を持つ龍。

「八龍王が一柱、八ノ龍・冥龍。与える加護は侵蝕だよ」

それが終わると、また風龍が口を開いた。

「龍導院家現当主、龍導院 静也。

黒き龍帝、黒龍帝よ。どうぞ、我らを御身のお側に」

「「「御身のお側に」」」

そういって頭を下げる八龍王。

僕の式神、それも護法式だ。

断る理由などない。

「僕は強くなりたい。守りたいと思ったものを、守れるぐらいに。

その為に、力を貸してくれるかい?」

「もちろんです、龍帝よ。貴方様の願いは、我らの願いでもあるのですから」

「分かった。龍導院 静也の名の下に、汝らを式神と認めよう」

「感謝いたします、我が主よ。命尽きるその時まで、御身の側に」

その言葉を最後に、八龍王達は光の粒子になって僕の中に入ってきた。

「ところで、ここはどこ?」

僕が尋ねると、頭の中に直接声が聞こえてきた。

(ここは主の心の中です。現在主は気絶している状態です。

このままでは確実に出血多量で死に至ります。

ですので向こうに戻り次第、木龍の加護で傷を塞いで下さい)

「分かった。頼んだよ、木龍」

(はい。お任せください、主様)

そして、再び視界が光に包まれた。

 

 




陰陽師の力に目覚めた静也。
静也はこの新しい力を使いこなせるのか。
次回を乞うご期待。

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