果たして、龍帝とは。
気が付くと、僕は漆黒の空間にいた。
自分の姿さえも見えない深淵の闇。
「・・・ま」
僕は、死んだのか?
脳裏に蘇るのは黒龍が折れ、フランドールのレーヴァテインが僕の体を貫いた記憶。
「・・・様」
僕の能力で強度を上げていたとはいえ、フランドールの剣は炎を上げていた。
その熱に耐えられなかったんだろう。
「・・・帝様」
僕は、また守れなかったのか?
全てを守れるなんて思ってなかった。
けど、せめて守りたいと思ったものだけでも守りたかった。
けれど結局、何一つ守れなかった。
すまない、霊夢。
ごめん、魔理沙。
後は頼んだよ、まこ・・・
「龍帝様」
その声を認識した途端、目の前を光が包んだ。
恐る恐る目を開けると、8体の巨大な龍が僕を取り囲んでいた。
「これは、いったい?」
「貴方様が目覚めるのを、我ら一同心待ちにしておりました」
「僕が目覚めた?一体何に?」
僕の目の前にいる薄緑色の鱗を持つ龍が話しかけてくる。
「陰陽師にです。元より幻想郷に来たことで高まっていた霊力が、
貴方様が命の危機に瀕したことで、血の中に眠る力が完全に目覚めたのです」
「僕が、陰陽師?じゃあ、君たちは何者?」
「我々は八龍王。代々龍導院家に仕えてきた護法式にございます」
「・・・式神」
「はい。我々は初代龍導院家当主により下され、式神の契約を結びました。
故に、我々は主のことをこう呼びます。
龍王と龍神の間の存在、即ち
我々は”龍の加護を与える程度”の能力を持っています」
そこで言葉を区切り、一体を残して一歩下がる龍達。
残されたの炎のように真っ赤な鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、一ノ龍・炎龍。与える加護は身体強化」
次に出てきたのは美しい蒼色の鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、二ノ龍・水龍。与える加護は五感強化です」
次に出てきたのは深緑色の鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、三ノ龍・木龍。与える加護は基礎治癒能力の上昇です」
次に出てきたのはさっきまで僕に話しかけていた龍。
「八龍王が一柱、四ノ龍・風龍。与える加護は追い風」
次に出てきたのは鋭い鋼色の鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、五ノ龍・金龍。与える加護は変換だ」
次に出てきたのは茶色の鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、六ノ龍・土龍。与える加護は硬化じゃ」
次に出てきたのは白く輝く鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、七ノ龍・聖龍。与える加護は霊力の上昇にございます」
最後に出てきたのは漆黒の鱗を持つ龍。
「八龍王が一柱、八ノ龍・冥龍。与える加護は侵蝕だよ」
それが終わると、また風龍が口を開いた。
「龍導院家現当主、龍導院 静也。
黒き龍帝、黒龍帝よ。どうぞ、我らを御身のお側に」
「「「御身のお側に」」」
そういって頭を下げる八龍王。
僕の式神、それも護法式だ。
断る理由などない。
「僕は強くなりたい。守りたいと思ったものを、守れるぐらいに。
その為に、力を貸してくれるかい?」
「もちろんです、龍帝よ。貴方様の願いは、我らの願いでもあるのですから」
「分かった。龍導院 静也の名の下に、汝らを式神と認めよう」
「感謝いたします、我が主よ。命尽きるその時まで、御身の側に」
その言葉を最後に、八龍王達は光の粒子になって僕の中に入ってきた。
「ところで、ここはどこ?」
僕が尋ねると、頭の中に直接声が聞こえてきた。
(ここは主の心の中です。現在主は気絶している状態です。
このままでは確実に出血多量で死に至ります。
ですので向こうに戻り次第、木龍の加護で傷を塞いで下さい)
「分かった。頼んだよ、木龍」
(はい。お任せください、主様)
そして、再び視界が光に包まれた。
陰陽師の力に目覚めた静也。
静也はこの新しい力を使いこなせるのか。
次回を乞うご期待。