東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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空を駆ける紅白の巫女。
地を駆ける黒龍。
向かい立つは二つの紅き月。


第21話 地に墜ちし龍

僕のスペルとフランドールのスペルが衝突し、

景色を一瞬紅色に染め上げる。

視界が閉ざされているが、構わずに正面に駆け出す。

弾幕ごっこはお世辞にも上手いとは言えない僕。

それならばすぐにでも近接戦に持っていくべきだろう。

フランドールも大剣を持っていたけど、体格差は大きい。

いくら吸血鬼とは言えども、正面から負けることはないだろう。

世界が色を取り戻す。

正面にはかなり近い位置まで近づいたフランドール。

けど僕の予想と違い、しっかりと大剣を構えている。

この展開は読まれていたか。

けれども関係ない、正面から斬り伏せる!

「龍導一刀流剣術中伝『崩龍』(ほうりゅう)!!」

敵の構えを崩すための一刀流で一番の威力を誇る技。

これであの大剣を弾き、すぐさま白龍を抜いて返す刀で勝負を決める!

フランドールは大剣を縦に構えて防御の構え。

構わずに一閃。

けれども僕の渾身の一撃を受けても、フランドールの小さな体は全く揺らがなかった。

「うそ・・・でしょ・・・くっ!」

白龍を抜き、二刀流に変更して連続で剣を振るう。

それなのに、僕よりもずっと小さなはずの体は僅かも揺らぐことはない。

まるで岩を切っているような感覚だ。

今までも刀の効かない相手はいた。

けれども、いくら剣を振るっても全く動じないのは初めてだ。

ちらりと霊夢のほうを確認すると、向こうも完全に膠着状態のようだ。

弾幕が飛び交う高速戦闘が行われてる。

早く援護しないと!

僕はさらに一歩深く踏み込む。

けれどそれがいけなかった。

わずかに力を緩めた一瞬で、フランドールが大剣を振り上げる。

予想のできていなかったその動きにこちらが弾かれた。

「しまった!?」

そのすきにフランドールが大剣とは思えない速度で踏み込んでくる。

殺られる!!

けれどもフランドールは後ろに下がった。

何が起こったのか理解できないうちに、いくつもの弾幕が降り注いだ。

「ボケっとしないで、相手は吸血鬼よ!見た目で判断しちゃダメ!」

「ありがとう霊夢、助かった!!」

援護するはずが、逆に助けられてしまった。

焦りばかりが募る。

視線を戻せば、フランドールが手にスペルカードを握っている。

「禁忌『フォーオブアカインド』」

どんなスペルかと身構えてると、フランドールが4人に分裂した。

それぞれが大剣を構え、一斉に突撃してくる。

一対多の戦闘。

本来なら龍導流が最も得意とする状況。

けれどそれは攻撃が通じるならの話だ。

正面からの攻撃を流し、左右から同時に襲い来るのはかがんで回避する。

最後にそのまま前転をして後ろからの攻撃を回避する。

「天罰『スターオブダビデ』」

レミリアの声に視線を上げれば、霊夢がレミリアのスペルをグレイズしていた。

けれども動きにキレがない。

霊夢のトレードマークである紅白の巫女服もかなりのホコリをかぶっている。

まずいな、早く何とかしないと。

けれども焦った所で何にも解決しない。

今は耐えて好機を伺うんだ!

一対多の戦闘、守りに徹すればどうとでもなる。

再び一斉に突撃してくるフランドール。

初めの方こそ回避することが多かったけど、

徐々に全ての攻撃を流せるようになってきた。

そしてついにフランドールが一人に戻った。

スペルブレイクだ。

その一瞬の隙を見逃さない。

「龍導二刀流剣術初伝『双龍』(そうりゅう)!!」

フランドールは大剣を構えてはいるが、さっきよりも力が入っていない。

これならいける!

黒龍と白龍に渾身の力を籠め、一気に振り下ろす。

けれども、運命は非情だ。

フランドールのレーヴァテインと黒龍がぶつかり、

今までとは全く違う金属音が鳴り響く。

黒龍が、刀身の真ん中から折れていた。

僕がずっと愛用してきた刀。

それが折れて、僕は一瞬呆然としてしまった。

その隙を、フランドールは見逃さない。

大剣を正面に構え、突きを放つ。

それは正確に、僕の左胸を貫いた。

「ガハッッ!!」

フランドールが僕の体から大剣を引き抜く。

そのまま地面に倒れこみ、紅い床でもわかる血だまりが広がっていく。

霊夢や魔理沙、真の叫び声がとても遠いところから聞こえてくる。

体が冷えていく感覚とともに、僕の意識は完全に闇に閉ざされた。

 

 

 




フランドールのレーヴァテインに倒れ伏した静也。
この後どうなるのだろうか!?
次回を乞うご期待。

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