東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少年と少女は、ついに吸血鬼の姉妹と邂逅する。
はたして、この幼き姉妹を救うことができるのだろうか?


第20話 幼き吸血鬼たち

咲夜を倒した僕たちは、この館の玉座の間へとやってきた。

そしてこの部屋にいるのは、当然この館の主だ。

僕の目の前には二人の小さな少女がいる。

片方は青色の髪に蝙蝠のような羽を生やした少女。

もう一人は金色の髪に宝石のような羽を生やした少女。

おそらく前者が姉のレミリア、後者が妹のフランドールだろう。

二人の瞳も、やはり赤黒く濁っている。

「それじゃ、いってくるわね」

「僕も行こう。霊夢の強さは信頼しているけど、やっぱり数的不利は大きい。

援護くらいは、僕でも出来る」

「ダメだ静也、行くなら私が!」

「右腕」

「っっ!?気づいてたのか?」

美鈴との戦いの後、魔理沙は確かに普通に歩いていた。

けど僕は見逃さなかった。

魔理沙が時折、右腕をかばうようなしぐさをしていたことを。

「魔理沙の利き腕は右。その腕で満足に戦えるのかい?」

「・・・だったら真が行くのはどうだ!?パチュリーの一撃を受けた静也と違って、

真は咲夜の攻撃を一撃も受けなかっただろう!」

「残念だけど、真も無理だよ。さっきの戦いで真は常に能力を全開にしていた。

外傷はなくとも、激しく疲弊しているはずだよ。

そうだよね真?」

「・・・静也の言う通りだ。正直な話、さっきから体を動かすのもだるい」

「だから僕が行くしかないんだ」

「けど!・・・」

なおも言いつのろうとする魔理沙。

そんなにも僕の身を案じてくれるのが嬉しくて、

一歩近づいて魔理沙の頭を思わず撫ででいた。

「大丈夫、僕を信じて」

「・・・分かったぜ」

魔理沙に笑いかけて、霊夢のほうを向く。

「いいよね、霊夢。迷惑はかけないと約束するから」

「・・・いいわよ。でも危なくなったらすぐに下がるのよ」

霊夢は少し悩んだけど、許してくれた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

静也と並んでレミリアの所に向かう。

なぜだかわからないけど、安心している自分がいる。

静也の横顔をちらりと見て、すぐに正面に向き直る。

いろいろ考えるのは後よ。

今はこの異変を解決しないと。

それに、静也は嫌な予感がすると言っていたけど、

ここにきてから私の”勘”も同じものを感じた。

この異変はたぶん、私が今まで解決してきたどの異変とも違って、普通じゃない。

けど引くわけにはいかないの。

異変解決は博麗の巫女の仕事。

これは私がやらなければならないことなの。

「もうすぐだよ霊夢。準備は良い?」

静也の声に思考を戻すと、いつの間にかずいぶんと近いところまで来ていた。

「えぇ、大丈夫よ」

「しかし、吸血鬼というから怖い人なんだろうと思っていたけど、あの見た目とはね」

「レミリア!宴会がしたいなら付き合ってあげるから、

この霧晴らしてくれないかしら?」

そう言うけど、私はこの異変の主犯がレミリアだとは思ってない。

カリスマだなんだとうるさい奴だけど、彼女の誇りは本物だと知っているから。

私は単に、レミリア達の意識がどのくらいあるのか確認したかっただけ。

他の住人は駄目だったけど、レミリアとフランは吸血鬼。

幻想郷でも随一の力を持つ二人なら、もしかしたら・・・

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

「禁忌『レーヴァテイン』」

私の言葉に何も返すことなく、レミリアは真紅の槍を。

フランは紅蓮の大剣を手元に出現させた。

それを見て、私は札を取り出し、静也は黒龍に手を添えた。

「守龍の心得。護衛対象、博麗 霊夢。我が身は汝の盾と為らん」

静也が小さくつぶやく。

そういえば、ルーミアと会った時も同じことを言ってたわね。

かけ声みたいなものかしら?

私は能力を使って空に浮くと、レミリアも翼をはためかせて空を飛ぶ。

どうやら空中戦で私とレミリア。

地上戦で静也とフランが戦うみたいね。

多次元的な戦闘になるけど、やれないことはないわね。

辺りを一瞬の静寂が包み込む。

「霊符『夢想封印』!」

「紅符『スカーレットシュート』」

「一刀流初伝『閃龍』!」

「禁弾『スターボウブレイク』」

それぞれの弾幕がぶつかり合い、世界を紅色に染め上げた。

 




果たして静也達はレミリア達に勝つ事が出来るのだろうか?
次回を乞うご期待。

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