東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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その出会いは偶然か、それとも運命なのか。
ここから全てが始まる。


第2話 始まりの出会い

「なぁ霊夢、さっきからボーっとしてるけどなんかあったのか?」

魔理沙にお茶を出した後、私もその横に座って同じように飲んでいたら魔理沙がそう聞いてきた。

いつも通りにしてるつもりだったんだけど、やっぱり魔理沙に隠し事は無理ね。

「さきっから何かが起きそうな気がするのよね」

「それは〝勘”か?」

「ええ、〝勘”よ」

「そっか。じゃあなんか起きるんだな。はぁ、面倒事はごめんだぜ」

私も面倒事は嫌だけど、なんだか今回はそれだけじゃない気もする。

『楽しそうね、私も混ぜてくれないかしら』

どこからかそんな声がして、目の前で開く〝スキマ”そこから出てくるのは一人しかいない。

「うぉ、紫!?」

「出たわね、スキマ妖怪」

「そんなに嫌そうにしなくてもいいじゃない霊夢。いくら私でも悲しいわ」

「はぁ、何しに来たわけ紫?内容によってはシバクわよ」

私がそう言うと、紫は自分の手元に小さなスキマを開いて懐から何かを取り出した。

よく見てみるとそれは小銭だった。

本当に何をする気かしら?

紫が小銭をスキマに落とす。

すると神社の表から小銭の音がした。

「今の音、まさか!?」

「賽銭したのか、あの紫が!?」

思わず大声を出す私と魔理沙。

「霊夢、これを踏まえたうえであなたにお願いがあるの。いいかしら?」

そう言って私を見る紫の目はいつにもまして真剣だった。

「いいわ、聞いてあげる」

 

 

 

「う・・・ここは?」

目を覚ますと、僕は布団に寝かされていた。

辺りを見渡してみると、畳張りの和室だった。

誰が助けてくれたんだろう?

なんか最後に賢者って聞こえた気がしたんだけど、まさかね。

そんなRPGじゃあるまいし。

「あら、起きたのね」

その声に顔を上げてみると、一人の女の子がふすまを開けて立っていた。

黒い長髪をリボンでまとめ、紅白の巫女服を着た女の子だ。

でも、どうして腋の部分が開いてるの?

最近の神社ってそういうスタイルなの?

いろいろ疑問に思ったけど、まずはあいさつしないと。

「ありがとうございます。あなたが助けてくれたんですか?」

「ううん、私じゃないわ。そのことも含めて話があるんだけど、立てる?」

「はい、大丈夫です」

「ならついてきてちょうだい」

「わかりました」

僕は布団から立ち上がって先に歩き始めた女の子の後をついていく。

廊下に出てすぐに分かったけど、やっぱりここは神社だ。

あの子が巫女服を着ていたからそうだろうとは思ってたけど。

女の子が案内したのは神社の表に近い縁側で、そこには他にもあと二人の人物がいた。

一人は長い金髪に日傘を差している女の人。

もう一人は同じ金髪に黒と白のとんがり帽子をかぶった女の子だ。

「お、やっと目を覚ましたようだな」

「まずは自己紹介をしましょうか。私は八雲 紫。この幻想郷の管理人をしているわ」

「幻想郷?」

「幻想郷は忘れ去られた者が集う場所。ここでは人間や妖怪、他にもたくさんの種族が共存しているわ。そこに、あなたは外の世界から落ちたの」

「え!?じゃあ僕は、異世界にきてしまったのですか!?」

僕の言葉にうなずく紫さん。

まさかそんなことになっていたなんて。

ということは、さっき僕を襲ったのは妖怪だったのか。

「で、あんたの名前は?」

僕が戸惑っていると、巫女の女の子が聞いてきた。

「僕?僕は龍導院 静也。たぶん・・・」

普通自分の名前を聞かれてたぶんなんて言う人いないよね。

でも、僕にはこうするしか・・・

「お前、記憶がないんだってな」

「!?どうしてそれを・・・」

「ごめんなさい、それは私のせいなの」

「え?どういう意味ですか?」

「私の能力は〝境界を操る程度の能力”。でも今この力とても不安定になっているの。

そのせいであなたをここに落としてしまって、その時に記憶の境界もいじってしまったの

ごめんなさい」

そう言って頭を下げる紫さん。紫さんとは初対面だけど、その物腰からめったに頭を下げない人だというのは分かる。

「頭を上げてください!確かに記憶がないのは不安ですけど、こうして生きていますし、自分の名前が分かればそれで充分です」

「そう、ありがとう。でもそれでは私の気が済まないの。

だから近々、あなたに関係の深い人物を連れてくるは。

もちろん、相手の同意を得たうえでね。

少しでも早く、静也の記憶が戻るように」

「はい、お願いします」

「それと、あなたの荷物は別の場所に落ちていたから、拾っておいたわ」

紫さんがそう言うと、その横に変な裂け目みたいなのが現れた。

そしてそこから通学鞄が出てきた。

今のが境界なのかな?

「わざわざ見つけてきてくれて、ありがとうございます」

「いいえ。それじゃあ私はこっちに連れてくる人物を探すから行くわね。

霊夢、後は頼んだわよ」

「わかったわ」

巫女の娘にそう言うと、紫さんはさっきと同じ裂け目の中に入っていった。

「よし、次は私の番だな。私は霧雨 魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

「普通の魔法使い?普通じゃない魔法使いの方が多いってこと?」

「いや、そういうわけじゃないんだ。私は魔法が使えるけど、種族としては人間なんだ。

だから普通の魔法使いなんだ」

「なるほど、そういう意味なんだ」

「博麗の巫女、博麗 霊夢よ。よろしく」

「霧雨さんと博麗さんだね。うん、覚えた」

「名字じゃなくて名前で呼んでくれ。あとさんずけもなしだぜ」

「私もそうしてちょうだい。というか、この幻想郷では名前呼びが普通だから、これからはそうしなさい」

「わかったよ。霊夢、魔理沙」

「それでいいわ。それとあんたはしばらく家で預かることになったから。

家事とか色々手伝ってもらうわよ」

「もちろんだよ。居候させてもらえるだけでもありがたい」

「あと、この幻想郷で暮らしていくんならもう一つ大事なものがあるぜ。

弾幕ごっこだ!」

「弾幕ごっこ?」

「あぁ。弾幕ごっこっていうのはな・・・~魔法使い説明中~」

「なるほど。弾幕とスペルカード、そして能力か。それじゃあ二人とも何かの能力を持ってるの?」

「もちろん。私は〝魔法を使える程度の能力”だぜ」

「私は〝空を飛べる程度の能力”よ」

「空、飛べるんだ!?」

「と言っても、ここにいる奴らはだいたい飛べるんだけどな。

もちろん私もだぜ」

「それなら意味ないんじゃない?」

「私の能力は言葉通りの意味だけじゃなくて、事象も含めるのよ」

「つまり、あらゆるしがらみから浮くことができるってこと?」

僕の言葉にうなずく霊夢。

すごいな。

人は常に何かしらかのしがらみを受けている。

そのせいで100%の実力を出せる人は少ない。

できたとしてもほんのわずかな時間で、むしろ動きを鈍らせてしまうことの方が多い。

さっきの僕の恐怖がいい例だ。

でもそれから浮けるってことは、常に100%の力が出せると言うこと。

紫さんほどじゃないけど、ちょっとつよすぎない?

「能力か、僕にも有ったらよかったのに」

「あると思うわよ」

「え?・・・本当!?」

「私は巫女だから分かるんだけど、静也から結構強い霊力を感じるのよね。

これだけの霊力があるんだから、きっと能力もあるとおもうわよ。

まだ気づいていないだけで」

「どうやったら分かるの?」

「そうね・・・静也、ちょっとこっち向いてくれる?」

僕が体を霊夢の方に向けると、霊夢は僕の額の所に指を当てた。

「今から静也の意識を深層心理に送るは。

そこにいる人に聞くのが一番速いと思う。準備はいい?」

「うん、いつでもいいよ」

霊夢が目を閉じると同時に、僕の意識が深いところに落ちていく感覚がして、目の前が暗くなっていった。

 

 

 




博麗神社で居候をすることになった静也。
静也の能力とはいったい?
次回、第3話を乞うご期待

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