東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少年の前に立ちはだかる銀髪のメイド長。
少年は、親友の期待に応え、勝利することができるのだろうか。

投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
先の展開に行き詰ってしまい、なかなか創作意欲が湧かなかったのです。





第19話 銀のナイフと煌めきの長槍

地下の図書館を出て、僕たちはホールにやってきた。

そこには、霊夢の予想通りの人物がいた。

銀色の髪にメイド服を纏った少女。

「彼女が、十六夜 咲夜?」

「そうよ。紅魔館唯一の人間で、”時を操る程度”の能力を持つメイド長よ」

「誰しもが一度は憧れる能力だよな。実際にいたとは驚きだが」

「気を付けてね真。この霧、単に操っているだけではないような気がするんだ」

「了解だ。それじゃあ行ってくるわ」

咲夜に向かって歩いていく真。

その手にはさっき買ったばかりの槍。

「そういえば、真の弾幕ごっこを見るのは初めてだな。実際の所はどのくらい強いんだ?」

「見てれば分かるよ」

魔理沙に不敵な笑顔を浮かべてそう返す。

魔理沙は少し不満そうにしたけど、言葉で説明するよりも見たほうが早い。

百聞は一見に如かず。

どうせすぐに始まるんだからね。

真が咲夜にある程度近づいた途端、咲夜は足のホルスターからナイフを取り出して投げた。

まだ槍を構えていなかった真だけど、慌てることなく槍でナイフを叩き落した。

「おいおいご挨拶だな。さっきまでの二人はこっちが話しかけるまで待ってくれたぞ?」

真の言葉もやはり届いた様子はなく、無言で新しいナイフを引き抜く咲夜。

真もまた下げていた槍を上げて構える。

「篠宮流槍術目録、篠宮 真。

女の子の手前かっこ悪い姿を見せるわけにもいかないんでね。

死なない程度に本気で行かせてもらう」

僕らが見ている前で、咲夜の姿が忽然と消えた。

初見なら驚いていただろうけど、

霊夢からの事前情報のおかげで何が起きたのか理解できる。

時間を止めてその間に別の場所に移動したんだろう。

それが分かっていても、どこに移動したのかまでは分からない。

敵の意表を突くことにおいてはまさに理想的な能力だ。

だけど、真の能力の前に奇襲は意味を成さない。

右から飛来してきたナイフを叩き落し、

続けて左から飛んできたナイフは槍を横に一閃させることで薙ぎ払う。

前後から同時に飛んできたナイフは槍を回転させることで無力化する。

僕には出来ない、重くリーチの長い槍だからこそ出来る技だ。

「すごいわね。能力を事前に知っていたとはいえ、

咲夜のナイフを全く寄せ付けてないわ」

「よくナイフが飛んでくる方向が分かるな。

時を止められてるのに」

「真の能力は”感覚を操る程度”の能力。

真はその能力を使って自分の五感を最大限まで上げてるんだ。

そのおかげでわずかな情報で相手の動きを捉えてるんだ。

もし僕が彼女と戦っていたのなら、ここまで上手くは立ち回れなかっただろう」

「幻想入りしてまだ日が浅いのに、もう自分の能力を使いこなしてるのね」

「もう一つ理由はある。真の篠宮流槍術の元は龍導流だ。

彼女は時間を止めることで周囲から一斉に攻撃しているけど、

それは疑似的な一対多の戦闘と同じ。

龍導流の使い手に取って、これは最も得意とする状況だ」

龍導流の使い手に一対多の戦闘を仕掛けるなど愚の骨頂。

咲夜があの戦い方を変えない限り、彼女に勝ち目はないだろう。

もっとも、今はそれに気づけるだけの理性が有るようには見えないけどね。

「でも、なんで真は自分から攻撃しようとしないんだ?」

真はさっきからナイフを弾くばかりで、散発的にしか弾幕を放っていない。

「あれが真の強みなんだ。真の強みはあの性格に似合わずに忍耐力。

相手の攻撃をいなし、一瞬の隙に必殺のカウンターを叩き込む。

それが真の戦い方なんだ」

「なんかまどろっこしい戦い方だな」

確かに見てる分には地味かもしれない。

でもあの戦い方は誰にでもできるわけじゃない。

相手がこちらの意表を突かない限り、あれが敗れることはそうそうない。

「幻在『クロックコープス』」

咲夜が初めてのスペルカード宣言をしてナイフを投げた。

真もそれに対処しようと槍を構えた。

けど瞬き一つの間に、目の前のナイフが増えた。

「な!?瞬槍『刹那の空隙』!」

真もスペルカードを宣言。

一度引かれた槍が、目にも止まらない速さで横に振るわれた。

ギリギリの所ではあったけど、何とか全てのナイフを打ち払った。

「ふぅ、今のは危なかったぜ。やっぱ時間を操れるってのは強力だな」

槍を戻しながら真がつぶやいた。

本当にその通りだ。

「・・・『咲夜の世界』」

咲夜が連続してスペルカードを宣言。

目の前から再び咲夜の姿が消えた。

そして咲夜が姿を現したとき、真の周囲全てをナイフが取り囲んでいた。

けどそんな状況の中で、真は不敵に笑っている。

どうやら待っていた時が来たみたいだね。

「この距離まで近づいてくるのを待っていた!

重圧『グラビティドロップ』!!」

真が手にしていた槍を地面に突き刺す。

すると、黒い半透明状のフィールドが広がり辺りを包み込んだ。

それは当然、真を取り囲んでいたナイフと咲夜も飲み込む。

その途端、浮かんでいたナイフが勢いよく地面に落ち、咲夜が地面に膝をつける。

そしてその頭上には白色の弾幕が形成されている。

真が手を振り下ろし、弾幕が降り注ぐ。

煙が晴れたとき、咲夜はうつ伏せに倒れていた。

「やったぜ!!」

「あの咲夜を圧倒するなんて、なかなかやるじゃない」

「いや、そうでもないぞ。相手に深く踏み込ませるために余裕ぶってはいたが、

実際の所は一杯一杯だった」

「何はともあれ、お疲れ様真」

 




見事咲夜を撃破した真。
残るは吸血鬼の姉妹のみ。
静也たちはレミリアとフランに勝つことができるのだろうか?
次回を乞うご期待。

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