東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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黒守龍と七曜の魔女の戦いは佳境を迎える。
守龍の翼とは。


第18話 黒龍の翼

「静也!」

俺達が見守る前で、静也がパチュリーの魔法の直撃を受けて吹き飛ばされた。

さっきのレイジィトリリトンといい、ロイヤルフレアといい、

ずいぶんと手持ちのカードの多い奴だ。

魔法自体の威力でいえば魔理沙のほうが一段上だろう。

だが、魔法の多彩さはパチュリーのほうが上だな。

さっきのサイレントセレナも、

あの連射速度を知っていれば、初撃で弾倉を空にはしなかっただろう。

「もう我慢できないぜ!」

それまで静也の戦いに大きく騒ぎながら見ていた魔理沙が、

箒にまたがりながらそんな声を上げた。

もしかしなくてもあの戦いに介入する気だ!

「待て魔理沙!」

「どうして止めるんだ!」

「これは静也の戦いだ。邪魔をするんじゃない」

「私じゃ足手まといだって言うのか!?」

「そうじゃないが、魔理沙はさっきの戦いで疲れてるだろ」

「だったら、私が行くわ」

それまで一切口を開かなかった霊夢が、突如口を開いた。

「私はまだ戦ってないし、あの壁を飛んで越えることできる。

 私なら足手まといにはならないわ」

「それこそ駄目だ。さっきの静也の言葉を忘れたのか?」

「そんなことは分かってるわよ!でも・・・」

「信じるんだ。静也のことを」

俺の言葉に何とか落ち着きを取り戻したようで、二人は動きを止めた。

しかしこの二人の反応、まさか・・・。

魔理沙のほうは何となくそうなんじゃないかと思っていたが、霊夢もそうだったとは。

博麗の巫女は他人に興味がないと聞いていたが、これは認識を改めねぇとな。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

「一刀流『輪龍』(わりゅう)!!」

一度刀を鞘に戻し、右足を軸に回転しながら放つ抜刀術。

敵に囲まれた時のためのもので、周囲の魔方陣を一刀の元に切り裂く。

しかしこの弾幕ごっこには高低差があり、上方には今だに魔方陣が残っている。

だがそれは所詮下向きの攻撃。

発射と同時に大きく右に飛ぶことで何とか回避する。

自分でもはっきり分かるぐらい、動きが鈍っている。

あの魔法は予想以上のダメージだった。

このままではいづれやられる。

パチュリーを倒そうにも、空を飛べない僕ではあの土壁を越えることができない。

銃も黒龍も手放し、残るのは白竜のみ。

やはり、ここは霊夢に任せるべきだったのか?

霊夢ならあの壁も簡単に越えられるだろうし・・・いや駄目だ。

敵にまだ上がいると分かっていながら、霊夢を疲弊させてはそれこそ愚策。

空を飛べる真もやはりメイド長相手に必須。

僕の選択は正しい。

後は僕がどうやって勝つかだけだ。

考えろ、考えるんだ。

どうすればあの壁を越えられる?

捕捉されないように走り続けながら、周囲に目を走らせる。

だけどここには、どこまでも本しかない。

これだけじゃ・・・いや、待てよ。

本棚と本棚との間は決して広くない。

そして今やってるのは弾幕ごっこだ。

この距離なら、スペルカードを使えば!!

ポケットの中から白紙のカードを取り出して念じる。

頼む、出来てくれ!!

僕が見つめる先で、白紙のカードに羽を広げている龍の姿が浮かび上がった。

出来た!これなら・・・

新しいスペルを握り、壁に向かって一直線に走る。

壁にたどり着いたところで、また魔方陣が浮かび上がる。

白竜を振り抜き、魔方陣を切り裂く。

上方のものを(・・・・・・)

そして魔方陣が輝きだすと同時に、スペルの宣言をする。

「スペルカード!龍翼『天駆ける翼』(あまかけるつばさ)!!」

さっきと同様に壁に向かって大きく飛び、足が当たると同時に蹴り上げる。

しかしさっきと違い、後ろには飛ばずに右側に飛ぶ。

その先にあるのは本棚。

今度は本棚を蹴り上げ、左側の本棚へ。そしてもう一度壁に。

それを繰り返して高度を上げていく。

一瞬でもタイミングを間違えれば地面に落ち、そこを狙い撃ちにされ終わりだ。

危険な賭けだが、賭ける価値は十分にある。

そしてついに、あの巨大な壁を越えた。

パチュリーは壁の近くに立っており、呪文の詠唱を始めている。

今度こそ決める!!

「龍導一刀流剣術奧伝!『龍空閃』(りゅうくうせん)!!」

刀を大上段に構え、重力に従って落ちると同時に、

落下エネルギーをも刀に乗せて振り下ろす。

「せいっっ!!」

パチュリーが防御型の魔方陣を展開させたが、構わずに一閃。

魔方陣と刀が衝突し、動きが一瞬止まったが、魔方陣ごとパチュリーを切り裂いた。

仰向けに倒れこみ、気絶するパチュリー。

気を抜かずに見ていた僕は確かに見た。

パチュリーの体から、黒い霧のようなものが出て行ったことを。

「ふぅ、何とか勝てたか」

それを見届けてから白竜を鞘に納め、一息をつく。

背後を見れば、術者が気絶したことにより壁が崩れているところだった。

壁が完全に崩れたところで、落としていた黒龍と銃を回収してから3人の元に戻る。

「やったな、静也!」

「ありがとう魔理沙。戦ってる時も、魔理沙の声は聞こえてきたよ」

「へへっ!」

「よくやったわ。お疲れ様」

「ありがとう、霊夢」

「しかし、よくあんなトリッキーな動きができたな」

「場所とスペルカードのおかげだよ。どちらかが抜けていれば負けていたさ。

 それよりも、次に出てくるのはおそらくメイド長。頼んだよ、真」

「あぁ、お前が勝ったんだ。俺もしっかり後に続くさ」

 




辛くも勝利を収めた静也。
真の戦いはどうなるのだろうか。
次回を乞うご期待。

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