東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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紅き館の中で、彼らは魔女と対峙する。
そして、黒き龍が羽ばたく。


第17話 七曜の魔女

次にやってきたのは館の地下にある図書館。

ここには小悪魔の言っていたパチュリーがいるらしい。

警戒しつつ奥へ入っていくと、通路の開けたところに彼女はいた。

月のアクセサリーをつけた紫色の長髪に、まるでパジャマのような服を着た少女だ。

やはり、彼女の瞳も黒色に染まっている。

「少しは期待していたが、どうやら手遅れだったようだな。

 それで、今回は誰が相手をするんだ?」

「私が・・・」

「いや、僕が行こう」

霊夢の言葉をさえぎって、一歩前に出る。

「相手は魔女よ。刀を使うあんたじゃ相性が悪いでしょ」

「こちらの最大戦力である霊夢には、相手のお嬢様と戦ってもらいたい。

 そして能力を聞く限り、メイド長と相性が良いのは真だろう。

 ならば、彼女と戦うべきなのは僕だ」

「勝てる見込みはあるのね?」

「複翼龍を使えば僕も遠距離戦はできるし、

 それに相手が魔女ということは、逆に言えば近づきさえすればこちらのもの。

 大丈夫、勝てるよ」

僕の言葉に霊夢は少し考えるそぶりを見せた後、顔を上げた。

「分かった。必ず勝ってきて」

「もちろん」

「気をつけろよ静也。パチュリーは”七曜の魔女”の二つ名を持ってる。

 こと魔法の知識、扱える魔法に関して言えば、私以上だ」

「気を付けるよ」

黒龍を抜き、懐から銃を取り出して、最初から複翼龍の構えで行く。

そして、少し離れたところで足を止める。

「初めまして、パチュリー。すごい本の数だね。

 僕も本は好きでさ、いくつか見せてくれないかな?」

一応と思って声をかけてみる。

けど、パチュリーは無言で魔導書を広げ、足元に魔方陣を浮かべた。

駄目みたいだね。

仕方ない、やるしかないか。

「龍導流剣術皆伝、龍導院 静也。いざ、推して参る」

低く姿勢を取り、一気に駆け出す。

霊夢にも言ったように、距離を置いておけば不利になるのはこちら。

相手が反応をする前に、少しでも距離を詰める。

「スペルカード、日符『ロイヤルフレア』」

パチュリーが感情のこもっていない無機質な声で宣言すると同時に、

巨大な球体型の弾幕が放たれる。

銃口を中心部に向けるけど、これじゃ相殺は無理だろう。

ならば!!

「スペルカード、二刀流『銀牙龍連』(ぎんがりゅうれん)!!」

銃をしまい、素早く白竜を抜くと同時に相手のスペルに二閃。

剣の先から漸属性の弾幕を放ち、相手のスペルを両断する。

僕は記憶が戻った後、自分の弾幕の在り方について考えた。

魔理沙と戦った時のように、ただ弾幕をばらまくだけの戦い方に疑問を感じたのだ。

そして、妖夢の弾幕を見たときにたどり着いたのがこれだ。

刀で虚空を切り、その先から漸属性の付加された弾幕を放つ。

もちろん、撃てる数は激減するが、この弾幕は貫通する。

華やかさには欠けるが、これが一番しっくりくる。

「はぁぁぁ!!」

周囲から放たれる弾幕を切り裂きながらも、足だけは決して止めない。

そして、弾幕の影に隠れていたパチュリーが見えたと同時に、弾幕が止んだ。

スペルブレイクだ。

「行け、静也!!」

「あぁ!!」

魔理沙の声に後押しされ、足にさらに力を入れて速度を上げる。

「この一撃で決める!龍導二刀流剣術奧伝・・・」

「土符『レイジィトリリトン』」

あと少しで刀が届くという所で、パチュリーが次のスペルを唱えると同時に、

僕の身長の倍はあり、所々に魔方陣が浮かんでいる巨大な壁が出現した。

あれは魔術障壁か!?ならばあの壁ごと・・・だめだ、刀のほうが折れる!!

すでに振りかぶっていた刀を下げ、壁に向かって飛び上がる。

壁に足がつくと同時に蹴り上げ、三角飛びの要領で後方に戻る。

「月符『サイレントセレナ』」

壁の向こうからパチュリーが新たなスペルを宣言する声がした。

その瞬間、僕の周囲に青色の魔方陣が浮かび上がった。

直感でまずいと感じ、白竜を鞘に納めて銃を抜いて二発発砲。

正面の二つを撃ち抜き、受け身も考えずに大きく後ろに飛ぶ。

空中で左右に2射、地面に背中から落ちた後も仰向けのまま上に向けてもう2射する。

計6つの魔方陣を打ち消したが、まだ後ろにいくつか残っていたものから光弾が放たれる

立ち上がっていては間に合わないので、膝立ちのまま前に転がることでこれを避ける。

「ふぅ、危なかったな」

さっきので弾を撃ち尽くしたから、制服のポケットから新しい弾を取り出そうとする。

けれど、突如おぞましいまでの寒気を感じ、

手を止めて辺りを見回すと、さっきと同様、いやそれ以上の魔方陣が浮かび上がっていた

「嘘でしょ・・・」

それはすでに準備を終えつつあるのか、光がどんどん強くなっていく。

「くっ!?一刀流『閃龍』!」

弾を取り出すために黒龍は地面に置いていたから、手に持っていた銃を投げ捨て、

鞘から白竜を抜いて龍導流最速の抜刀術を放つ。

剣先から放たれた弾幕が前方の魔方陣を切り裂く。

けれど連射性に劣る僕の弾幕はこれが精一杯。

前方に向かって体を投げ出して避けようとするも、

大量の魔方陣から放たれる魔法すべてを避けきれず、一つが被弾し爆発した。

被弾時の痛みを感じる暇もなく爆風に吹き飛ばされ、

すぐそばにあった本棚に叩きつけられた。

「ガハッ!!」

肺の中の空気が一気に押し出され、背中に激痛が走る。

思わず手にしていた刀を落としかけたけど、それだけは意地で握りしめる。

棚を支えにして立ち上がった所で、三度青色の魔方陣が僕を取り囲む。

「これはちょっと、まずいな・・・」

僕のほほから、一筋の冷たい汗が滴り落ちた。

 




パチュリーの多彩な魔法に翻弄される静也。
絶体絶命に陥った静也の運命とは?
次回を乞うご期待。

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