そこで彼らを待ち受けるものとは。
「吸血鬼?」
紅魔館へ向かいながらそこに住む住人について聞くと、霊夢は吸血鬼だと言った。
「そう。紅魔館の主とその妹は、500年近くを生きる吸血鬼よ。
他には妖怪の門番、図書館の管理人である魔女、人間のメイドがいるわね」
「えらくいろんな種族が住んでるんだな。吸血鬼か、やっぱ負けると血を吸われて血の従者にされたりするのか?」
「いや、あいつらはほとんど人間の血は吸わないぜ」
「それなら安心だが、それはそれで吸血鬼としてどうなんだ?」
そんな話をしているうちにチルノたちと遊んだ霧の湖を抜け、だんだんと大きな館が見えてきた。
「うわ、なんだここ?目に悪すぎるだろ」
「いくらなんでも赤すぎるわよね」
なるほど、その館は”紅魔館”という名も納得の紅さだった。
その館の門には、一人の妖怪が立っている。
赤く長い髪に、緑色のチャイナドレスを着た女の人だ。
「彼女が美鈴?」
「そう。紅 美鈴。紅魔館の門番をしている妖怪よ」
霊夢が言うように、彼女からは妖力を感じた。
「静也、あれどう思う?」
「明らかに普通じゃないね」
美鈴からは生気のようなものを感じられず、まるでゾンビのように立っている。
なにより、瞳が黒く濁りきっている。
「で、誰が相手をするんだ?」
「私がやるぜ」
真の問いかけに魔理沙が答えた。
「美鈴は格闘戦こそ得意だが、弾幕の方はそこまでじゃない。だから魔法使いの私が遠距離から一気に片を付けてやるぜ」
「分かった。頼んだよ魔理沙」
「頼まれたぜ!」
箒にまたがって飛んでいく魔理沙。
そして美鈴から少し離れたところで止まった。
「おい美鈴、今日も本を借りに来てやったぜ!」
美鈴に向かって大声で話しかける魔理沙。
先にどのくらい意識が有るか確かめているみたいだね。
「お前たちに紹介したいやつもいるし、レミリアの所に案内してくれよ」
だけど美鈴は魔理沙の言葉に反応することはなく、無言で拳を構える。
魔理沙もそれを見て無駄だと判断したのだろう。
ミニ八卦炉を構えた。
「美鈴っていつもあんななのか?」
「いいえ。いつも居眠りばかりしているけど、わりと友好的な妖怪よ」
「普通じゃないってこどだね。一体ここで何が起きてるんだ?」
「ま、中に入れば分かるわよ」
僕たちが目線を戻すと、ちょうど魔理沙がスペルを構えたところだった。
「先手必勝だぜ!星符『メテオニックシャワー』!!」
魔理沙の手から大量の星形の弾幕が放たれ、美鈴へと迫る。
美鈴は右へ左へと弾幕の隙間を縫っていくが、とうとう躱し切れなくなって両手を交差させ防御の構えをとる。
そこに無数の弾幕が降り注ぎ、土煙が舞い上がった。
どうみても直撃だっただろう。
「ふぅ~、案外あっけなかったな。警戒して損したぜ」
「すごいな。これが魔法使いか」
「真は見るの初めてだよね。これが霧雨 魔理沙と言う少女の強さだよ」
「もはや普通の魔法使いってレベルじゃないだろ」
魔理沙が箒を肩に戻ってくる。
その表情は笑顔だ。
僕もつられて手を振ろうとするけど、魔理沙の背後で土煙が不自然にゆがんだ。
「魔理沙、まだだ!」
「は?」
魔理沙も後ろを振り返る。
そして土煙の中から美鈴が飛び出してきた。
「な!?」
急いで空に逃げようとする魔理沙。
だけど一歩遅く、美鈴の蹴りが直撃して大きく吹き飛ばされた。
「ぐはっ!?」
「魔理沙!?」
「そんな、確かに直撃したはずよ!?」
「さっきの攻撃に耐えきったのか!?」
「まだ来るよ!!」
魔理沙へと追撃を仕掛ける美鈴。
魔理沙の動きは見るからに鈍っていて、今度は体に美鈴の拳が突き込まれ、吹き飛ばされた魔理沙は壁に叩きつけられた。
「まずいぞ、もう一撃くらったら!」
魔理沙にとどめを刺すべく迫る美鈴。
けれども魔理沙はすでにミニ八卦炉を構えている。
背中が壁だから、反動を気にする必要もなく全力を出すことが出来る。
「私を、舐めるな!恋符『マスタースパーク』!!」
魔理沙の手から放たれる極太のレーザー。
すでに慣性のついていた美鈴がそれを避けられるはずもなく、光の奔流に飲み込まれた。
「やったか?」
「分からない」
真の問いかけに銃を取り出しながら答える。
もしもまだ立っているなら、無理やりにでも割り込む必要があるだろう。
光が消えた時、そこには地面に倒れる美鈴がいた。
それを確認して、僕たちは急いで魔理沙に駆け寄る。
「へへ、やってやったぜ」
「そんなことより、大丈夫なの魔理沙?」
「あぁ。体のそこらじゅうが痛むが、歩けないわけじゃない」
「よし、とうとう館の中だ。気を引き締めていこう」
門番を突破した静也達。
その先に待ち受けるものは?
お知らせ
小説家になろう様にてオリジナル小説を始めました。
そちらもご覧になってもらえると嬉しいです。
http://ncode.syosetu.com/n4173eb/