東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少年は少女達との遊びを楽しむ。
この世界の遊び方で。


第14話 氷精との遊び

最初に静也先生を見たときは不安でした。

私は同じ寺子屋に通う男の子にさえも話したことがほとんどなかったからです。

男の人の先生とうまくやっていけるのかな?

そんなことを思っていました。

でもそんな不安はすぐになくなりました。

自己紹介の時も、授業で問題が分からなかった時も、先生は笑顔で教えてくれました。

ルーミアちゃんは先生と知り合いだったみたいで、

ごはんの時にいろいろなことを話してくれました。

ルーミアちゃんが頭の上にのせていたおにぎりも先生がくれたものだそうです。

静也先生は、とっても優しい人です。

人里の外に向かいながら、私はそっと先生の横顔を覗く。

風に揺れるさらさらの黒い髪に同じ色の瞳。

私の視線に気づいたのか、先生がこっちを見て目が合う。

「どうかした、大妖精?」

「いえ、なんでもありません」

急いで目を離して前を見る。

私は自分でもわかるぐらい顔が赤くなってる。

ふと思い出したのはさっきの出来事。

誰かに頭を撫でてもらったのは初めてでした。

「見えてきたよ」

ミスティアちゃんの声で思考を戻すと、いつの間にか霧の湖についていました。

「静也、やっと来たのね。待ちあきたわ!」

湖の上にいたチルノちゃんも私たちに気づいたみたいです。

「それを言うなら待ちわびただよ、チルノ。

 それじゃあさっそく始めようか。3人は下がってて」

腰の刀を抜いて構える静也先生。

私たちもそれを見て距離を開けます。

「ねぇ、大ちゃんはどっちが勝つと思う?」

「やっぱりチルノちゃんじゃないかな?体格差は合っても、静也先生は人間だし」

私とミスティアちゃんはチルノちゃんが勝つと思っているけど、

ルーミアちゃんは違うみたいで首をかしげている。

「ルーミアは静也が勝つと思うの?」

「う~ん、よくわからないけど、静也が簡単には負けないような気がするんだよね」

「でも静也先生は飛べないみたいだから、ずっと飛んでいればチルノちゃんが有利じゃないかな?」

「まぁ、見ていれば分かるよ」

2人の方を見ると、チルノちゃんがスペルカードを構えているところでした。

「一撃で倒してやる!氷符『アイシクルフォール』!」

宣言と同時に氷型の弾幕が静也先生に向かう。

先生は一瞬構えたけど、その場にとどまる。

「やっぱりそうするよね、あのスペルカードなら」

ミスティアちゃんの言う通り、チルノちゃんのアイシクルフォールは正面にいれば弾幕が飛んでこないんです。

そのままスペルブレイクまで待つのだと思ってると、静也先生はチルノちゃんに向かって駆け出しました。

「え!?なんでスペルブレイクまで待たないの!?」

正面が安全といってもそれは一定の距離があるから。

近づけば近づくほど、弾幕は激しくなる。

静也先生は姿勢を低くして弾幕の嵐の中に飛び込む。

なのに一つも被弾することなくわずかな隙間に体を滑り込ませていく。

「すごい」

思わずつぶやいていた。

「でもあの高さじゃ刀は届かないよね。どうするつもりなんだろ?」

チルノちゃんは木の中ほどのあたりを飛んでいて、確かにあの高さならジャンプしても届かないと思う。

「静也、左手に何か持ってない?」

ルーミアちゃんの言葉で静也先生の左手をよく見ると、確かに筒状の見たことのないものを握っています。

「スペルカード、複翼流中伝『雨呼びの水龍 五月雨(あまよびのすいりゅう さみだれ)』!」

静也先生が手に持っていた物を空に掲げると、その中から青色の弾幕が打ちあがった。

それは空高く飛んでいき、途中で爆発すると無数の弾幕が降り注ぐ。

それに気づいたチルノちゃんがグレイズしようとするけど、

スペルカードの途中だったせいで動きが遅れて被弾してそのまま落ちていく。

「チルノちゃん!!」

そのまま落ちると思ったけど、途中で静也先生が受け止めてくれました。

「大丈夫、チルノ?」

「うぅ~、負けた!でも楽しかった!静也って強いのね。最強のあたいに勝つなんてやるじゃない!」

チルノちゃんはすごく楽しそうに笑っている。

「静也、今度はみんなで遊ぼう?」

「もちろん。時間の許す限り楽しもう!」

静也先生は、陽が落ちて暗くなるまで私たちと遊んでくれました。

 

 




静也は楽しく子供たちと遊ぶことが出来たようだ。
今話にて第一章が終了。
次回からは第二章へと入っていきます。
幻想郷にも慣れてきた静也と真。
そんな二人にとうとう異変が起こる。
果たしてその時、静也と真がとる行動とは?
ついに現れる今作の敵。
そして静也の中に眠る力がついに目覚める。
第二章も、楽しんでいただけると幸いです。

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