東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

13 / 48
少女たちは少年から何を教わるのか。
少年は少女たちに何をもたらすのか。


第13話 幼き思い

「今日から新しい先生が入ってきた。静也、挨拶を」

簡単な説明と担当教科を決めた後、

僕は慧音さんに連れられて教室にやってきた。

ちなみに担当教科は僕が語学と算学。

慧音さんが社会と歴史を教えることになった。

「初めまして、今日から新しく先生になった龍導院 静也です。

 みんなと楽しく授業が出来るようにがんばるので、よろしくお願いします」

教卓の上に立って教室を見渡す。

教室の中には数十人の子供たちがいて、一人一人を”視る”と本当にいろんな種族がいる。

人間の子供の横に羽や耳を生やしている子供が座っているのは何とも不思議な光景だ。

「それじゃあ後は頼んだぞ静也。私は奥の部屋にいるから、何か困ったことがあれば来てくれ」

「分かりました」

慧音さんが部屋を出て、足音が遠ざかったのを確認してから子供たちの方に振り向く。

「さて、それじゃあさっそく授業を始めようと思う。

 それで一つ相談なんだけど、この時間は本当は算学の授業だよね?

 だけど僕はみんなのことをよく知らないし、みんなも僕の事をよく知らない。

 その状態で授業をしてもどうかと思うし、この時間は自己紹介の時間にしようと思うんだけど、どうかな?」

僕の言葉に隣の子と目を見合わせる子供たち。

そして意味が理解できたのか、一様に笑顔を浮かべた。

「「「さんせ~い!!」」」

「よし、でもあんまり騒ぎすぎないでね。慧音先生に見つかったら怒られちゃうからね」

「慧音先生には怒られたくないなー」

「うん。だって頭突きが飛んでくるもんね」

え?頭突き?

一瞬僕の聞き間違いかと思ったけど、他の子たちも口々に頭突きって言ってるからそうなんだろう。

慧音さんは一体どんな叱り方をしてるの?

相手が妖怪が多いから実力行使に出てるのかな?

「ま、まぁ。とりあえずつまらない教本なんてしまって、みんなで楽しもう!」

「「「は~い!!」」」

「まずは僕から自己紹介をしようか。名前はさっき言った通り龍導院 静也。

 呼ぶときは好きに呼んでいいよ。実を言うと、僕は外来人なんだ。

 今は博麗神社で居候をさせてもらってる。得意なことは料理だよ。よろしくね。

 次はみんなの事を教えてくれ。一番右の席の子からお願い」

僕がそういて立ち上がったのは猫耳の生えた女の子だ。

「初めまして。私は橙といいます。よろしくお願いします、静也先生」

橙が座って次に立ち上がったのはルーミアだった。

頭の上には僕が上げたおにぎり。

うん、次からは風呂敷か何かに包んでからあげよう。

「ルーミアだよ。よろしくね、静也」

次に立ち上がったのは青い服と髪の毛の女の子。その背中からは氷みたいな羽が生えている。

「あたいは最強の妖精のチルノだ!得意なことは弾幕ごっこ!」

元気のいい子だ。あの羽からすると、チルノは氷の妖精かな。

次に恐る恐るといったように立ち上がったのは、

緑色の髪と服を着て羽を生やしているおとなしそうな女の子。

「初めまして、私は大妖精といいます。みんなからは大ちゃんって呼ばれています。

 よろしくお願いします、静也先生」

次に立ち上がったのは、背中から鳥の羽のようなものを生やしている女の子。こっちは妖怪かな。

「初めまして、私はミスティア・ローレライ。好きなことは歌を歌うこと。よろしくね、静也」

「はじめまして、わたしは・・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

どうやら、いらぬ心配だったようだな。

一度は部屋に帰ったもの、やはり心配だったから様子を見に来たんだが、

なかなか上手くやっているじゃないか。

生徒たちには妖怪も多いから、暴れでもしたら大変だ。

静也は腰に刀を下げていたから多少は戦えるようだが、それがどこまでかは分からない。

もしもの時は私が止めなければと思っていたが、早速生徒たちの心を掴んだようだ。

やはり私の目に狂いはなかった。

静也を一目見た時から、彼からは不思議な魅力を感じた。

そしてルーミアと話す姿を見て私は確信した。こいつは本物だと。

元から教師には誘うつもりだったため、静也が職を探していると言った時は正直驚いた。

紅魔館の吸血鬼ではないが、まさに運命のように感じたのだ。

ん?どうやら自己紹介が終わったようだな。

あまり聞き耳を立てるのも悪いし、今度こそ部屋に戻るとしよう。

そうだ、今度妹紅にも紹介してやろう。あいつもきっと気に入るだろうしな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よし、今日の授業はここまでだ。みんな気を付けて帰るんだぞ」

「は~い」

昼を少し過ぎたところで寺子屋は終わった。

「静也先生、さようなら」

「さよなら」

いつも真や愛花の勉強は見てたけど、小さい子に勉強を教えるのは初めてだから不安だったけど、

何とか上手くいったみたいでよかった。

「静也!」

奥の部屋に慧音さんと戻ろうとしたら、後ろから呼び止められた。

振り返ってみると、そこにはチルノ、大妖精、ルーミア、ミスティアの4人がいた。

「どうしたのチルノ?」

「あたいと勝負だ!!」

「・・・・はい?」

あまりにも突然の宣戦布告に思わず気の抜けた声が出た。

勝負って言うと、やっぱりあれだよね?

「それはいいけど、何の勝負をするの?」

「もちろん弾幕ごっこだ!」

ですよねー。

一応聞いてみたけど、やっぱりそうか。

いくら妖精とはいえ、見た目小さい女の子のチルノに刀は振るいたくないんだけど、どうするかな?

「やってやれ静也。弾幕ごっこはここでは遊びみたいなものだ。変に心配する必要はない」

なるほど、遊びと同じか。

霊夢と魔理沙もよくやってるみたいだし、遊びの中なら多少の怪我は仕方ないってことか。

・・・・よし。

「いいよ。ただし迷惑にならないように里の外でやるよ」

「やった!あたいは先に行ってるから、静也も早く来てね!」

チルノは僕の返事も聞かずに飛んで行ってしまった。

「ごめんなさい静也先生。でも、チルノちゃんすごく楽しみにしてたから」

大妖精が申し訳なさそうに言って、ミスティアも同じような顔をする。

4人の仲を微笑ましく思いながら、2人の頭をいつも愛花にしていたようになでた。

その感触に驚いたのか、2人は一瞬羽を震わせて僕を見上げてきた。

「ここじゃ弾幕ごっこは遊びと同じなんでしょ?つまりみんなは僕を遊びに誘ってくれたわけだ。

 そう思うと僕は嬉しいよ。初めてでみんなに受け入れてもらってるか正直不安だったからね」

僕の言葉で2人は顔を見合わせてから笑顔を浮かべてくれた。

うん、やっぱり子供は笑顔が一番だ。

「ほら、そんなことよりも早く行かないとチルノに怒られちゃうよ」

「はい!」

「慧音さん、少し行ってきます」

「いや、遊び終わったらそのまま帰っていいぞ。明日も今日と同じ時間に来てくれ」

「分かりました。それではまた明日」

慧音さんに挨拶をして、3人に引っ張られるようにして歩く。

その途中でルーミアからも頭をなでるように催促されたのは、内緒だ。

 

 

 




静也は子供たちに受け入れてもらえた。
静也ははたしてどんな先生になるのだろうか。
次回を乞うご期待。

PS
この小説の寺子屋にはリグルは出てきません。
理由は私がリグルと静也のからみを思いつけないからです。
リグルファンの皆さん、申し訳ありません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。