東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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少年は人里で出会う。
その新たな出会いとは。


第12話 人里での出会い

「それじゃあ行ってくるね、霊夢」

「心配いらないとは思うけど、気を付けるのよ。

 昼でも妖怪は出るんだから」

「うん」

霊夢に見送られて向かうのは人間の里。

霊夢は気にしなくていいって言ってたけど、

居候させてもらっているのに料理と掃除だけってのも居心地が悪いから、

人里で仕事を探すことにした。

霖之助さんのツケもあるしね。

服装は昨日とは別の黒い着物に通学鞄。

なんだかすごい違和感だけど、鞄はこれしかないし、

人里で制服は目立つだろうからこうなった。

人里までもう少しのところで、道の真ん中で倒れてる黒い人影を見つけた。

デジャヴを感じる。

というか、確実にあの子だよね?

だって金髪と赤いリボンが見えるもん。

「また行き倒れかい、ルーミア」

声をかけると、ルーミアはうっすらと目を開けて僕を見た。

「静也~、ごはん~」

「はぁ、仕方ないな」

鞄の中からラップに包んだおにぎりを取り出してルーミアに手渡す。

ちなみにラップは能力で作った。

そのおにぎりをルーミアは大きく口を開けて数口で食べてしまった。

「おいしかった!ありがとう静也!」

「どういたしまして。ほら、服に土がついてるよ」

手の届かないだろう背中の所だけ払って、

残りはルーミアに自分にでやってもらう。

体の前側を触るのはさすがにアウトだろうからね。

「ところで、静也はどこに行くの?」

「僕は今から人里に行くんだよ」

「本当!?じゃあ一緒に行こう!」

「ルーミアも人里に行くの?」

「うん、寺子屋に行くの」

「寺子屋か・・・」

一昔前の文化なのは気づいてたけど、寺子屋と来たか。

時代的には江戸時代辺りなのかな?

「ほら、早く行こう!」

「ちょっ、待ってルーミア、引っ張らないで!」

ルーミアに手を引かれて走り出す。

ルーミアの足は思いのほか速かった。

やっぱりこういう所は、妖怪なんだな。

~少年移動中~

「着いたよ!」

「へぇ~、ここが寺子屋か」

ルーミアに案内されたそこは、一階建ての日本家屋だった。

「おや?ルーミアじゃないか。今日はずいぶんと早いな」

僕たちの声が聞こえたのか、中から白髪の女の人が出てきた。

「ん?君は初めて見るな。里のものではないだろう?」

「初めまして、僕は龍導院 静也といいます。

訳あって博麗神社で居候をしている外来人です。

「なるほど、外来人か。私は上白沢 慧音。

 この寺子屋の教師をしている。こちらこそよろしく」

「静也はご飯をくれたし、お世話もしてくれたんだよ!」

「そうか、良かったなルーミア。だったらきちんとお礼を言うんだぞ」

「うん!ありがとう静也、楽しかった」

目の前で笑顔を浮かべるルーミア。

こうして見ると、本当に人間みたいだ。

僕はしゃがんでルーミアと目線を合わせて、

鞄の中からもう一つのおにぎりを取り出してルーミアに手渡す。

「お昼に友達と一緒に食べていいよ」

「わは~!ありがとう!」

ルーミアは

一瞬驚いた表情をした後、頭の上におにぎりを乗せて中に入っていった。

まさかあのまま授業を受けるつもりじゃないよね?

「君は変わった人間だな」

「そうですか?」

「妖怪が人間に懐くなんてそうそうあることじゃない。

 私が知っている限り、そんなのは霊夢と魔理沙ぐらいなもんだ」

「あの二人ならそうでしょうね」

「ルーミアがずいぶんと世話になったようだし、

 何かお礼をしたいんだが、何かないか?」

「そうですね。それでしたら、このあたりにどこか働き口を知りませんか?」

「働き口?仕事を探しているのか?」

「はい。住まわせてもらってるのに家事だけというのも霊夢に悪いですし、

 ちょっとしたツケもあるので」

「律儀な男だな君も。働ぎ口か、そうだな・・・」

慧音さんはしばらく考えた後、ちらりと僕の方を見た。

できれば力仕事は避けたいけど、贅沢は言えないな。

「見たところ、君には学がありそうだが、どうなんだ?」

「学ですか?確かに学校、

 外の世界での寺子屋ではそれなりに成績は良かったですけど」

僕がそう答えると、慧音さんは笑顔を浮かべた。

僕、なんか嬉しくなるようなこと言ったっけ?

「そうか!なら私と一緒にここの教師をしてくれないか?」

「教師ですか?」

「あぁ。前々からもう一人欲しいと思っていたんだが、

 なかなか見合う人物がいなくてね。

 君は妖怪にも好かれやすいようだし、ぴったりだと思うんだが、どうだ?」

「そう言うってことは、ここにはルーミアのほかにも妖怪が?」

「うちの寺子屋には人間、妖怪、さらには妖精もいるぞ」

それを聞いて、僕に断る理由はない。

人と妖怪が一緒に学ぶ寺子屋、なんとも幻想郷らしくて素晴らしいじゃないか。

「分かりました。非才の身ではありますが、よろしくお願いします」

「そうかやってくれるか!それなら中で詳しい話をしよう」

こうして、僕の仕事は見つかった。

 




寺子屋で働くことになった静也。
彼は個性的な生徒たちを教えることが出来るのだろうか?
次回を乞うご期待。

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