東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

1 / 48
これから始まる新しい世界、その始まりの物語



第1章 幻想との出会い
第1話 誘われた者


「うっ・・・!」

目蓋の裏に強い光を感じて、僕は目を覚ました。

上半身を起こして辺りを見渡してみると、ここが森の中だということが分かった。そして僕は、最も重要なことに気づいた。

(僕は、誰だ?)

思い出せないのだ。

自分はどこに住んでいたのか、家族や友人はいたのか、どうしてここにいるのか、何一つ思い出せない。僕は自分の恰好を見下ろした。

黒色のズボンに白のカッターシャツ、それに黒色のブレザーと赤のネクタイを着ている。

何かないかと服を探ってみると、上着の内ポケットから生徒手帳がでてきた。

中は白紙だったけど、裏表紙に顔写真と名前が書いてあった。

龍導院 静也(りゅうどういん しずや)、それが僕の名前?」

他にも探したけど、結局見つかったのはこれだけだった。

まあ、自分の名前が分かっただけでも良しとするか。

「これからどうしよう?まあ、ここで考えていても始まらないし、ひとまず進んで見るか」

そう呟いて、僕は歩き始め。

 

 

私はいつものように神社の縁側に座ってお茶を飲んでいる。

いつもなら心休まる一時なんだけど、何故だか今日は胸騒ぎがする。

「おーい、霊夢!」

聞き慣れた声に顔を上げると、空から魔理沙が飛んできていた。

「よう霊夢、お茶しに来てやったぜ」

「はあ、たまにはあんたもお茶菓子のひとつでも持ってきたら?」

「それは無理だぜ!」

清々しいまでの笑顔でそう言う魔理沙。

そうしている間も、私の〝勘”は何かがあると囁きつずけている。

 

 

「うーん、すごい田舎だな」

体感だから正確には分からないけど、たぶん歩き始めて30分はたったと思う。

それなのに森は出られるどころか全く変わらない景色がつづいてる。

そのせいで方向感覚がおかしくなってしまいそうだ。

日が暮れるまでには町に出たいな。

交番にでもいけば僕の事も何か分かるかもしれないし。

正直野宿はしたくないんだけど、この様子だと覚悟はしておいた方がいいかも。

ガサッ

考え事をしながら歩いていると、不意に前の茂みが揺れた。

もしかしたら熊かもしれないと目を凝らしてみると、奥に見えたのは人影だった。

よかった、これで街の場所を聞けるし、運が良ければ連れて行ってくれるかもしれない。

その時の僕は記憶がない不安に加えて今まで一人だったせいでなんの警戒もなくその人影に近づいた。

「すみませーん。道に迷ってしまったんですが、街の場所を教えてくれませんか?」

それがいけなかった。

僕の声に反応して人影がこちらにやってくる。

その人影を見た瞬間、僕は息をのんだ。

「男か。本当は女が良かったんだが、まぁ良いだろう」

確かにそれは人の形をしていた。

けれどそれだけだ。

動物から毛をすべて取ったかのような肌に窪んだ瞳、そして鋭い爪。

それは化け物と呼ぶのに十分なものだった。

その化け物が僕に向かって一歩を踏み出す。

そこでようやく僕は体の硬直から抜け出した。

「う、うわぁぁぁ!!」

後ろに向かって全力で走る。

背後を見なくても、僕を追いかける足音が聞こえる。

「なに、なんなのあれ!?」

何も変わらないとは分かっていても、叫ばずにはいられない。

あんな物がいるなんて聞いてない!!

懸命に走るけど、足音はどんどん近づいてくる。

このままだと追いつかれる。

どうする、どうすえばいい!?この距離だと隠れることもできないし、戦うのなんてのは論外だ!!

焦りのせいでろくに足元が見えてなかった。

僕は地面から出ていた木の根に足を取られてころんでしまった。

すぐに立ち上がったけど、とうとう追いつかれてしまった。

「グワァァァ!!」

「くっっ!」

振り下ろされた右の爪を何とか躱したけど、続けて左の拳がとんできた。

これは避けられない!

腕を交差させてガードしたけど、凄まじい衝撃を受けて吹き飛ばされ、背中から木に叩きつけられた。

(こんな所で・・・死ぬ・・・のか)

薄れゆく意識の中で怪物の近づく気配を感じる。

記憶がないせいで後悔もできない。

「ん?なんだお前、どこから・・・!!?なんだ、この膨大な妖力は!まさかお前、賢者の!?」

「少しおいたが過ぎたようね。眠りなさい」

「やめろ、ぐぁぁぁ!!」

その声を最後に、僕の意識は途絶えた。

 




私の初めての作品、いかがだったでしょうか。どうかこれからもよろしくお願いいたします。
次回予告
妖怪に殺されかけたのをすんでのところで助けてもらった静也。
彼を助けたのは一体、そして記憶を失った静也はどうするのか。
次回第二話を乞うご期待

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。