魔法少女靖子~暁の水平線に平和と友情の絆を~ 作:ラフィーネ
榛名たちがいる鎮守府では、着任してから2か月たらずの二十歳代の女性提督がいた。
「今日も鎮守府海域は平穏だね。平和が一番!ってか。仕事終わったら一杯やっか!隼鷹と那智誘って。あはは」
彼女の名は郡津(こおづ)玉代(たまよ)、優秀な提督ではあったが、司令部からは小娘扱いされているが、彼女は気にしていない。新しい艦を考えたりするのが好きな提督で、すきな言葉は規格外、度外視である。お酒も好きで、時々那智と隼鷹と酒を飲むことがある。彼女は何気なく、紅茶のペットボトルに手を伸ばし、一口飲んだ。しかし、それは金剛の紅茶だった。そこへ金剛がきた。
「ヘイ提督、大変よ。・・・あー!それ私のイチゴ味の紅茶!」
提督は思わず金剛の顔に紅茶を吹いてしまった。
「何するのよ提督、私の顔に吹きかけないで」
と、金剛はハンカチで顔を拭いた。
「ごめんなさい、あとでコンビニ行って買ってくるわよ」
とわびた。
「絶対よ!約束は守ってくださーい!」
「約束は守るから。それでどうしたの、大変って。」
「あ、そうだ、忘れるところでした!榛名たちから応援要請来ました。戦艦ル級が現れたって連絡が!それに女の子も助けてほしいって!」
「な、なんですって!すぐに陸奥たちを向かわせなさい!」
「ok!」
鎮守府はあわただしくなった。教室では駆逐艦・吹雪たちが理論の授業を受けていた。先生は重巡洋艦の愛宕(あたご)である。そこには響(ひびき)、電(いなづま)、雷(いかづち)、暁、皐月(さつき)、長月(ながつき)、深雪、初雪とかもいた。深雪は吹雪に
「なあなあ、吹雪、あんた後輩ほしいんじゃないのそろそろ?」
と声をかけた。吹雪は
「そんなこと考えてないよ。」
と否定した。と、そこへ出動の要請が。
「榛名たちから応援要請がきました。陸奥、日向、龍驤(りゅうじょう)、利根、吹雪、皐月はただちに出撃の準備をしてください」
「おーし、いくぞ吹雪」
「はい!皐月ちゃん」
そして、港では、戦艦陸奥、日向、軽空母龍驤、重巡洋艦利根が待機していた。
「おい早くせぬか!早くせぬと手遅れになるぞ二人とも!」
「はい」
「よーし、行くぜ」
こうして、6人は、榛名たちのいる海域へ向かった。吹雪が利根に尋ねた。
「あの、どういう要請ですか?」
「なんでも戦艦ル級から女の子を助けてほしいという応援要請があったのでな」
「女の子?」
「詳しい話は後にしろ、急ぐぞ!」
と、日向は注意した。そのころ靖子は、善戦したものの、満身創痍だった。もう戦う力は残っていなかった。体中傷だらけだった。
「・・・・・」
「もうここまでだな、お前のその戦いぶりに敬意を表して、散っていった艦娘たちのいる天国へ送ってやろう」
と、連装砲で靖子を攻撃した。
「うわぁ!」
軽巡ヘ級も靖子に対し攻撃をした。
「食らえ!」
「いやぁ!助けてぇ!」
攻撃を受けた靖子は海面に落下した。それをみた榛名たちは
「まずいわ!早く助けないと手遅れになるわ!急いで!」
「もうすぐ陸奥たちが来るって」
「わかったわ、まずはあの子を助けないと」
「ok」
榛名たちは急いだ。そのころ靖子は海面に浮いていた。
「・・・もうここまでね。お兄ちゃん、お姉ちゃん、みんな、今までありがとう。あたしの分も幸せに・・・」
もうここまでかと、靖子は死を覚悟した。そして戦艦ル級は靖子に向かって大砲を向けた。
「かわいそうだけど、ここまでね。さあ、天国でお友達がまってるわよ」
そのとき榛名の連装砲が火をふき、一撃で軽巡ヘ級を撃沈させた。続いて隼鷹の飛行機が戦艦ル級を攻撃した。
「おのれ!誰だ邪魔しおって!」
「この子を殺すのは、この榛名が許しません!」
榛名たちが靖子を助けに来た。
「あ、あなたたちは・・・」
そこへ天龍が来て靖子を抱きあげた。
「もう大丈夫だ、ひどくやられたな」
「ありがとう」
そして、叢雲、那智の連装砲、神通の単装砲の攻撃により、駆逐ロ級2隻は撃沈した。さらに隼鷹、そこへかけつけた龍驤の飛行機の攻撃、日向の連装砲の攻撃により軽空母ヌ級も沈められた。
「おのれぇ!こうなったら皆殺しだ!」
残った戦艦ル級は攻撃をするが、
「お前は往生際が悪い!」
「ぐわぁ!」
日向の一撃で片方の大砲を破壊され、さらに陸奥の連装砲による攻撃で沈められた。
「どうやら、倒せたわね。早くこの子を鎮守府の病院に運ばないと。」
「皐月、吹雪、この子を鎮守府まで運ぶぞ」
「はい!」
靖子は鎮守府の病院に急いで搬送されることになった。
酸素呼吸器をつけた靖子は夜空を見上げた。
(ここはどこなんだろう?ひょっとしたら艦これの・・・?)
そこへ天龍がよってきて、靖子に話しかけてきた。
「安心しな、もう鎮守府がみえてきたよ、すぐ手当してやるからな」
それを聞いて靖子の疑問は確信に変わりつつあった。やはりここは艦これの世界だと。同時に、自分が助かったことに安心した。鎮守府では、靖子を収容すべく、すでに救護班がスタンバイしていた。衣笠、青葉が心配そうに彼女たちの帰りを待っていた。そして、ようやく到着、急いで靖子はストレッチャーに乗せられ、病院に運ばれた。
「あの子が助け出された・・・。」
「そうみたいね。助かるといいけど。無事を祈りましょう。」
「うん。」
そして、治療を終えたあと、集中治療室に運ばれた。靖子は、戦艦ル級たちに散々いたぶられ、全身に負傷していた。一方提督室では、靖子の治療が無事終わったと、金剛によって連絡が入った。
「今、あの子、集中治療室で寝てます。」
「そう、ドクターの診断は?」
「全身に傷を負っていますが、命に別状はないとのことです。ただ、今日一晩は万一のために集中治療室で一夜を明かすとのことです。」
「それはよかったわ。できたら、あの例の物を使うときが来るかもしれないわね。」
「例の?あの設計図の軽巡洋艦ですか?」
「そうよ。で、あの子の所持品は?」
金剛が靖子の所持品を調べたら、自分とは異世界の人間であることがわかった。一方、天龍と龍田、川内(せんだい)は、靖子のことが気になっていた。
「あいつ、助かるといいな。」
「きっと助かるわよ。ちゃんと意識もあったし。」
「そうよ大丈夫よ。」
そして翌日、一般病室に移された靖子は、呼吸器をつけたまま目覚めた。ちょうどそこへナースがやってきて、意識があるのを確認、靖子の呼吸器を外して、医療の機材を片づけた。靖子はナースにここはどこかと尋ねた。
「ここは、どこですか?」
「ここは鎮守府よ。」
「鎮守府?鎮守府って、あの・・・!?」
その言葉通り、ここは鎮守府だった。やはりここは艦これの世界だったんだと、確証をもった。
榛名たちに助けられ、治療のため鎮守府に運ばれた靖子。次回は吹雪さんとご対面です。