アニメ観ました。シラズーー!ってなりました。
wifi使えないので、iPhone投稿です。
肌を焦がすような、ギラギラと照りつく太陽に、雲一つない青い空、キラキラと輝く青い海。そして、サラサラの砂浜が広がっていた。
そこに、砂で巨大な山を作って、戯れる影が二つ。一人は海パン、もう一人は海パンにパーカーと言った適した出で立ちだが、二人とも片手をギプスに覆われているのだから、何とも奇妙な光景である。
「什造くん…どう?」
「うーん…あ!ハイセ!」
「やったねっ。繋がった!」
「やりました〜」
ハイタッチして、喜びを身体で表現する男二人。繋がったトンネルに手を入れて、その出来を確かめる双子の姉妹。
それを、砂浜にレジャーシートを敷いて、パラソルの下で眺めている三人がいた。
「おい、伊丙…あいつら幾つだ?」
「えっとぉ…ハイセと鈴屋さんは二十いってますね。全く、子どもで困りますね…」
「まあ、伊丙も人のことは言えんがな」
一緒にしないでくれ、とハイルは暁に非難めいた視線を向けた。
自分は、キチンと準備しているのだ。前回の捜査でついた傷の跡が目立つのは仕方ない。塞がっているし、気にしない。ギプスだって、もう自分は外れている。左耳が半分になったからって、キャップを被れば分からない。
日焼け止めは塗ったし、シュノーケルに足ヒレ、浮き輪だってある。準備体操も今終えた。あと、エッチなビキニなんか着てるアキラさんとは違って、機能性重視のちゃんとした水着を着ている。あとは、泳ぐだけなのだ。
因みに、佐々木と鈴屋の二人はギプスが取れていないため、泳ぐことはできない。
「はしゃぐのもいいが、怪我を悪化させる…なんて、間抜けなことはしてくれるなよ?泳ぐなよ。その可愛らしい浮き輪で浮かぶだけだからな伊丙《一等》」
「ほろりと涙を一滴流すルフィの顔は、オレンジ色の朝日で彩られている。はーい…真戸《一等》。ところで、亜門上・等?」
「…なんだ」
「どうですか?塗り心地は…」
亜門が黙って何をしているかというと、暁の背にサンオイルを塗っているだけである。知り合いからプライベートビーチを借りているため、人目を気にする必要もない。
亜門は、ハイルの問いにぴしりと固まっていた。
「こらこら、伊丙。これも、円滑な人間関係を持続、発展するために必要なコミュニケーションの一つなんだ。亜門上等、私は心地よいですよ。手を止めないで続けて下さい。背の次は足の方もお願いします」
「…なぁ、暁。足は自分で…背中も伊丙に頼めばどうだ。私は男だしそのほうが…」
「何か問題でも?ないよな、伊丙」
「…まあ、背中くらいは。私もハイセに洗って貰ってますし、別に…」
ハイルの言葉に、今度は暁と亜門の二人がぴしりと固まった。ハイルは、ぼーっと海を眺めている。ハイセ達四人は、更に大きな砂山を作り始めていた。
「…ん?お前達、そういう仲なのか?そうは見えなかったが」
我に返った様子で、暁が気にしてない風に尋ねる。内心はそうでもない。
「違いますよ…アパートの部屋が隣なので、背中擦ってもらったり、ご飯作ってもらったり、洗濯してもらったり、お掃除してもらったり、それだけしょ…です」
それ、もはや佐々木は主夫じゃないのかと、暁と亜門は思った。そして、生活風景を想像して佐々木に同情した。家政婦もしくは、とんだ亭主関白である。
「そうか。まあ、色々あるのだな。…亜門上等、良ければ今晩、我々も温泉でーー」
「泳いできまーす…」
助けを求める様な視線を振り切って、ハイルは海へと駆け出した。
◇
ひゅるるるどーん。
真っ暗な夜空に花火が打ち上がった。
「おおー」
「いい場所取れたね、よく見える」
「うわぁ…」
ズラリと並ぶ様々な屋台に、むわりと湿気が立ち上るほどの大勢の人の波。
鈴屋、佐々木、ハイルの三人は、レジャーシートを広げた上に腰を降ろして、それぞれの思いを抱き、空を見上げていた。
亜門と暁、黒白姉妹に関しては、流石に考慮して祭りには来ていない。それでも、近くの宿でこの花火を眺めていることだろう。
あと亜門さんどんまい、とハイルは合掌した。りんご飴をぺろりと舐めながら。
「ハイセ、おなか空いた」
「あーうん、そうだね。何買ってくる?」
「何があるのかよくわかんないから、おいしいのがいいしょ」
「文句言わないでね。什造くんは、何がいい?」
「そうですねぇ。僕もおまかせです」
「了解。じゃあ、いってきます」
ハイルは、器用に人混みを避けていく佐々木を見送る。佐々木の姿が見えなくなった頃、花火に視線を戻した。
鈴屋と二人、何か会話するでもなく花火を観賞して一分ほど経った時、ハイルは花火に目を向けたまま、ポツリと口を開いた。
「あの、鈴屋さん」
「何です?」
鈴屋が反応して、ハイルの方を向く。
ハイルは変わらず、花火に目を向けていた。
「ハイセの…ハイセの頭どう思いますか?」
「おいしそうで、おしゃれです」
「あ、それは同感です…胡麻プリンで、見てると食べたくなる…」
「それと、今の方がハイセらしいと思うです。白と、黒の割合が絶妙なバランスです、ハイセを表してるみたいで」
ハイルは、時が止まったように感じた。
唐突すぎる。
「…あの時、聞いてたんですか」
何とは言わない。
「もーろーとしてましたケド、僕、耳いいですから」
ハイルは言葉に行き詰まった。
花火の音が聞こえない。自分の心臓の音だけが、大きく聞こえている。
落ち着け。
「ハイセは何かを隠してる。ハイルも隠していることあるです?」
「…」
ハイルは、虚を突かれて、再度言葉に詰まった。失礼だとは思うが、鈴屋が色々考えているようには見えなかったのだ。
「入院している時に考えました。いえ、考えようとしました。でも、考える前に気づいたんです。別に、どうでもいいって」
「それは…」
どう云う意味だろう。続く言葉を待つ。
鈴屋は、「あ、今の花火おっきいです」と一言漏らして、今度はもう、こっちを見なかった。
二人で、無言のまま花火を眺める。さっきよりも時間が長く感じる。
「篠原さんに言われたです。友達は、一生の宝だって。篠原さんの言うことは分からないことが多いですけど、これは僕もわかりました。
僕は、例えばハイセが
「…」
「僕は、今がとても楽しいです。ご飯食べたり、遊びに行ったり、お泊まりしたり、一緒にお仕事したりーーずっとこうがいいです。だから、ハイセがどうかなんて…それに、僕もイロイロ変わってますし」
「そう…ですか」
「ハイ。…えへへ、こんなに誰かに話したのは初めてです。今日だって奈白に玲は変わりすぎだって言われちゃいましたし」
「…話できて、良かったです。ありがとう鈴屋さん」
ハイルは、ぺこりと頭を下げた。
心は依然として晴れない。モヤモヤは存在する。でも、ちょっとだけだけど、胸が軽くなった気がした。
その後すぐに、佐々木は戻ってきた。頭に変なお面を着けて、片手に沢山のビニール袋を携えて。
ハイルと鈴屋が一番に手に取ったのは、綿菓子だった。
◇
かっ、かっ、ポーン
「あ''〜あ''〜」
「ハイル、声、声」
「あ''、あ''、ぁあ〜」
「僕もアレ後でやりたいです」
佐々木と鈴屋は温泉上がりに卓球を、ハイルは順番待ちでマッサージチェアに沈んでいた。ちなみに全員がギプス装着中。少し前まで、従業員から心配した目を向けられていた。
「ぅあ''あ''あ''〜」
浴衣から覗く肌は紅く色づいている。湯上がりだから、という訳ではなく、完全に日焼けのせいだ。温泉に浸かる時のヒリヒリに大変苦労したハイルである。折角の貸し切り温泉は、泣く泣くカラスの行水だった。
今はその鬱憤を晴らすようにとろけている。
「ハイルー、代わって下さい〜。卓球、ハイルの番です」
「も、う、ちょっとぉぉ''」
「あと五分ですからね。そしたら交代です」
「は〜あぃ」
「ハイセ、もうひと勝負です」
「うん、あはは…」
五分後。
「これい、い、でぇ、すよ」
ウィーンと大き目の稼働音。ハイルは鈴屋とマッサージチェアを交代して、佐々木とラリーをしていた。
「さっきメールが来たんだけどさ、よっと!来週僕達が行くの、ホッと!第七アカデミージュニアだって、あっ…幾つもあったんだね。知らなかった」
「下手くそ」
「いや、今のハイルのミスだよ。ハイルは知ってた?」
「知らんけど…」
ハイルは、チラリと鈴屋に目を向ける。
鈴屋は、アカデミージュニア出身だったはずだ。前の調査の時に、有馬から情報を聞かされていたのだ。
「僕は第二でしたよ。途中で追い出されましたけど。そして篠原さんに」
「だそうですよ、ハイセ」
「だそうですよって…什造くんグレてたんだね」
「アハハ、そうです。グレてましたです。更生できましたかね?」
「してるしてる」
ハイルは、佐々木の能天気さを本気で尊敬している。本当にすごいと思う。困った時のハイセである。
「明日も楽しみですねぇ」
「絶対、絶叫系は制覇するんよ」
「亜門さん達は、昼頃には帰っちゃうんだよね。何だかわるいなあ」
旅行は、あと三日残っている。特別休暇として一週間貰った…ではなく、実際は入院期間中を利用しただけだ。一応許可は出たので何の問題はないが。亜門達四人に関しては、普通に休みが続いたので一緒に来ただけ、旅館だって別だ。一足先に、明日帰ることになっている。つまり、アトラクションにも乗れないのだ。
そう思うとわるい気もするなと、ハイルも少しだけ思った。
「来週は…ハイルは同年代の子もいるだろうし、友達出来たらいいね」
「おー、そうなんです?」
「別に…」
友達はいないけど、別に欲しいとも思わない。
ちょっと癪だが、ハイルはさっきの鈴屋と同じ気持ちだった。今は、この時間が楽しい。
ずっと続けばいいのに。
原作金木確保より二ヶ月ほど先に、
白黒姉妹が確保されてるので、つまり…