久しぶりの大学だ。
あの後、自宅に帰り準備を終えてから、仮眠をとったが、少し眠たい。
そして夕方。
「うおおおぉ……!!」
「ヒデー!!久しぶり!!」
「おぉう……なんかテンションたけーな金木…。元気にしてたか?」
僕もそう思った。自分のことだが。ヒデの顔を見るとこう、嬉しくなって、そのテンションで言ってしまった。
少し引いた様子のヒデだったが、そのうち僕が休んでいた時の文句をいい始めた。時折入る軽口を聞いて改めて、本当に久しぶりだなぁと実感した。
休んでいた時、何をしていたかと聞かれて答え、そっちはどうだったか、などと話し合った。もちろん、グール関係については触れていない。
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西尾という先輩のところに向かっている。あの後、ヒデが学園祭の資料dvdを受け取りに行くように頼まれたからだ。僕はそれに、ついて行っている。
その途中
「おまえ、そういえば、ちゃんとメシは……食ってるみたいだな!!前よりこう、ガタイがよくなっているぜ」
「いや、普通だよ。あまり、外に出てなかったから太ったのかな」
そんな会話をした。
不安が過った。
もし、僕の正体がバレたら、こんな風に歩くこともできなくなるのではないかと。
■
「えっと、西尾さん、すんません」
「永近」
ノックをせずにドアを開けた結果こうなった。学内であんな ことをしていた西尾さんもどうかと思うが。
説教が長く、ボーとしていると、視線を感じた。
西尾さんが僕を見て、妙な顔をしていた。
「えっと、僕に何か」
「いや、ちょっとな。気のせいだった。スマン」
そのまま、簡単に自己紹介をした。
資料は結局なかった。
西尾さんの家にあるということで、取りに行くことになった。
もちろん僕もついて行くことにした。今日は退院祝いとして、ヒデに奢ってもらうつもりだったからだ。
そうヒデに言う。覚えてたのかと、ひきつらせながら財布の中身を確認していた。
■
道中、たいやきでも食おうかと、西尾さんから提案があった。
僕はカスタードでヒデは普通の粒あん。
少しもらうな。と、ヒデが少しではないくらい食べていったため、僕も同じくらい食べ返してやった。
うん。両方ともおいしいな。ヒデが文句を言っているが、知らない。
その様子を西尾さんは、じっと見ていた。
西尾さんについて行くと、しだいに人通りが少なそうな所まできた。ずいぶん奥のほうなんですねと、ヒデが言った。
あれ、行き止まりだ。
次の瞬間、ヒデが吹き飛んだ。
実際は何が起こったのか、ゆっくり、スローモーションで見えていたがとっさに身体が動かなかった。警戒していなかった。
壁にぶつかる直前になんとか身体を割り込ませて、激突を防いだ。確認すると、ヒデは気を失っていた。
ヒデを庇うように立った。西尾さんから。
ヒデを蹴り飛ばしたのは、西尾さんだった。
なぜ、と呆然としていると、向こうから話し始めた。
自分はグールであると。
僕のこともグールだと気づいていたと。どこか違和感はあるらしいが。
そして、ヒデをエサ扱いした。
もう、いいだろう。我慢の限界だった。
「おまえもそうなんだろう、なぁ……ゲホォオ!!!⁉」
腹に突き刺す、つもりが貫通して穴が空いた。
西尾さんの肩を掴んで持ち上げる。
いわゆる貫手、爪を尖らせ突き貫いた。
何度も 何度も 何度も
何か言っている。煩いな。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ(バキィッ)がぁっ」
目の端で何か動いた。ヒデだった。そうだ、ヒデを、こんなのより、ヒデが優先だ。
腕を払って手についた血を飛ばし、放り投げ、急いでヒデのところに向かう。
よく見て触って、怪我がないことを確かめる。蹴られた箇所も骨は折れていない。よかった。
僕の服も血で汚れていたため、自宅にと思い至り、ヒデを抱えてその場を後にした。
…ヒデが目を覚ました時、なんて言おう。
そういえば、と思い出した。
爪の切れ味あんなによかったっけ。
■
翌朝、無事にヒデが目を覚ました。
ヒデは記憶がはっきりしていなかった。
そこで、居眠り運転の事故に巻き込まれたということにしておいた。西尾さんは、救急車で運ばれ、入院しているとも。
正直、下手な嘘だと思ったが、ヒデはあっさりと信じた。
ありがとう、とお礼を言われた。
一応、病院に行くということでヒデは帰っていった。僕もついて行きたかったが、断られた。おまえは俺の保護者かと。
この金木くん。イギリス英語ですが、話せます。
……なぜか、病んでいるみたいになりました。