前世はバンパイア?   作:おんぐ

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 二話目です


 実写映画今日からですね
 観るの楽しみです


29 無知

 

 

 

 「遅いね、お姉ちゃん…」

 

 

 「そうね、バイト長引いているのかも」

 

 

 ぐぅと可愛らしい音が鳴った。

 

 

 

 今日は、トーカちゃんが家に泊まる日だが、彼女はバイトが入っていたため、夕食の時間はいつもより遅めに設定していた。彼女は先に食べてていいと言ったけど、やっぱり一緒に食べたいし…。

 予定の時間はもう結構過ぎてしまっている。片付けに時間がかかっているのだろうか。携帯電話は忘れていっているし、連絡もとれない。…少し、心配だ。かといってあんていくに電話するのもなあ…。お節介みたいで少し気が引ける。

 

 「ちょっと、迎えに行ってくるね」

 

 

 

 「あ、うん。いってらっしゃい」

 

 「気を付けてね」

 

 「はーい」

 

 

 さっきのお腹の音はどっちのなんだろう。二人とも顔を赤らめていたから分からなかった。

 玄関で二人に見送られながら家を出た。

 

 

 

 

 

 「……寒い」

 

 

 普段は使わない近道から、あんていくに向かっている途中。さっきチラッと見えた表の通りは、クリスマス一色だった。

 今年のクリスマスイブは、自宅で過ごす予定だ。月山さんに、それとなく誘われたが断った。家に呼ぶことも出来たが、まだ自宅を教える気にはなれなかったし…。

 今年は、僕だけではない。いや、いつもはヒデとクリスマスを迎えていたから、一人というわけではなかったけども。今年は、リョーコさん、ヒナミちゃん、トーカちゃんと、両手に花どころではない贅沢さだ。いや、そんなつもりはないけども。

 リョーコさんとヒナミちゃんにはまだ話していないが、イルミネーションを見に行けたらとトーカちゃんと話している。流石に、母娘を一緒にするわけにはいかないので、二組に別れて行くつもりだ。多分、僕の組合せは、リョーコさんとの二人になる。まだ先のことなのに、想像すると、緊張してしまう。だって、あれだ。人生初のクリスマスデートといえるんじゃないだろうか、これ。うん、仕方ないよな、凄く楽しみだ。

 ヒデには、裏切り者呼ばわりされたっけ。トーカちゃんと交際していると言ったときよりも酷かった。散々ぐちを聞かされたが、なんかもう、全て受け入れられた。勝者の余裕というものかもしれない。

 ……いやいや、浮かれすぎていたかもしれない。少し自制しようと思う。…ごめん、ヒデ。

 

 

 

 

 「…あれ、トーカちゃん?」

 

 

 早足で進んでいると、覚えのある匂い。……おかしい。匂い消しの香水を付けているのだから、こんなにハッキリとした匂いはしないなずなのに。…いや、ちょっと違うような。フード被っているし、今日の彼女の服装とも違う。

 

 

 「…トーカちゃん?」

 

 「…あ?」

 

 

 やはり、違った。男の声だった。

 

 

 「すみません、人違いでした」

 

 「……」

 

 

 なんだか凄く機嫌が悪そうだ。フードの人物はこちらを向くことなく足を進めた。

 

 

 「あ」

 

 

 ふと、思い出した。芳村さんから、トーカちゃんには弟がいると、前に聞いていたんだ。トーカちゃんからは、そういう話を聞いておらず、勝手に知るのは悪いと思ったので、芳村さんからも詳しくは聞かなかったが。

 

 

 「あの、弟のアヤト君かな」

 

 

 彼は、此方を人にらみして、直ぐに背を向けた。そして、僕を無視したまま、歩き出した。僕もそれに続く。

 

 

 「おい、ついて来んな」

 

 「ごめん、僕もこっちに用があるんだ」

 

 「…ちっ」

 

 

 舌打ちされても、どうしようもない。だが、何となく気まずくなったので、少し距離を空けた。…ヒナミちゃんと同じくらいの年かな?

 

 

 

 

 

 

 

 血の匂いがする。

 あんていくまであと半分という距離まで来たとき、アヤト君がピタリと足を止めた。

 前を見ると、道の端に一人の男が横になっていた。その周りには三人の人物がいる。雰囲気からして、何やら戸惑っているみたいだ。アヤト君の知り合いか。

 すると、倒れていた男が起き上がった。いや、飛び上がったというのが正しいな。そして、こちらに向き直ったかと思うと、もうスピードで向かってきた。

 

 

 「リゼさぁぁあん!‼」

 

 「えっ」

 

 

 その言葉に、思わず後ろを振り向く。しかし、そこには誰もいなかった。気を落として前に向き直ると、筋肉質な大男が掴みかかろうとしていた。僕に。

 

 

 「ちょ」

 

 

 思わず、投げ飛ばした。相手の力を利用たので、ポーンと音が聞こえてくるかのように、大男は宙を舞い、コンクリートの壁に激突した。

 

 

 「あげぇ」

 

 あ…どうしよう。起き上がってこない。どうすればいいか、迷っていると、一緒にいた三人が駆け寄っていった。

 

 

 「バンジョーさん‼無事で良かった‼」

 

 

 いや、やった僕が言うのもあれだが、無事には見えないけど。衝撃で気絶したみたいだし。しかし、周りにいた三人は喜びあっている。いったい、なんなんだ。あ、正当防衛だったし、投げ飛ばしたことは、ゆるしてほしいな。

 

 




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