コスプレして酒を飲んでいたら大変な事になりました。   作:マイケル

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※オリ主についていろいろと思う所があると思いますが、私は私の書きたいものを書きたいので、読むに値しないなどの思う所のある読者様はプラザバックをお進め致します。



4話

帝国の王と王妃が亡くなり、幼い皇子が帝位を継いだ。

これにより、ギリギリ保っていた帝都はゆっくりと、しかし確実に崩壊の道を歩み始め、その影響は俺達市民に直撃した。

貴族の悪い噂はどんどん増えていき、月に一人二人の死刑囚が二十人を超えるようになった。

俺の喫茶店はまだ、金を持っている軍人さん達やロドニーがエスデスに貢いでいる金で生活できているが、ご近所さんはかなり酷い状態になっている。

 

「頼むジョニー!金を貸してくれ!!」

 

「俺を雇ってくれよ、ジョニー。

生活が苦しいんだ」

 

などなど、金を貸して欲しいとか自分を雇って欲しいという人間が後を絶たない。

おそらくこの不景気に定期的に材料の仕入れする俺の店を見て、金があると思ったのだろう。

おかげで駆け込み寺の様になっている。

 

しかし、俺の店も景気がさらに傾いた事で馴染みの客が減って収入がロドニーだよりになっているし、マインとエスデスという二人の店員を雇っている。

これ以上は雇う事が出来ないし、金も少量なら近所のよしみで貸してあげる事が出来るがそれも限界を迎えようとしていた。

 

そこで……。

 

「店をロドニーに預けてクロノスの本拠地に引っ越そうと思う」

 

「私は構わんぞ。

店長にどこまでもついて行くだけだ」

 

「私もいいわよ。正直近接戦闘以外の訓練もしたかったし」

 

彼女たちと相談して一時的に引っ越すことにした。

ロドニーから送られてくる情報が半分でも本当ならクロノス本拠地とやらは、かなりの規模になっているらしい。

貧しい村の村人や帝国の圧政に苦しむ人々が集まり、本拠地の周りは村となって街へと成長した。

食料は村々の周辺にあった食料となる植物や畑にまく予定の種などを利用して上手にやりくりしているらしい。

ここ最近だと少数だった家畜も増え始めて、乳製品や肉料理も出せるレベルにまでなったようだ。

 

もはや小さな国である。

しかし、皇帝夫妻が亡くなり完全に大臣の支配下に置かれた帝国の圧政により、これから増えると想像される市民達の事を考えると不安でありまだまだ油断できないと、書き記されていた。

 

クロノスでやっていくのは少し不安があるが、引っ越さなければ何をされるか分からない帝都に居るよりはましだと判断した俺はスラムの人たちを雇って、夜遅くに引っ越した。

 

「じゃあ、お願いしますね」

 

「おう!前金とハンバーガーって奴も貰ったし、キッチリ運んでやるよ!!」

 

夜遅くに店の前にやって来たスラムの男達に前金とハンバーガーをご馳走した俺は荷物を荷馬車にまとめて進み始めた。

さらば、帝国。

 

生まれ育った国に心の中で別れを告げて、進もうとした時……。

 

「待ってぇ~~!!私もバイトさせてぇ~~!!」

 

「ば、バカ!静かにしろよレオーネ!夜逃げがバレちまうだろ!!」

 

「お前もうるせぇよ!!」

 

一人の女性によって馬が止まった。

どうやら、引っ越しのアルバイトに来てくれた人らしい。

年齢はエスデスと同じくらいか?

胸部装甲はエスデスよりも優秀のようだが……。

 

「君は力には自信があるのか?」

 

「アンタが雇い主?勿論さ!力はスラム最強と言ってもいいよ……変身!」

 

正直雇ってあげたいが可愛い女の子がケガをしたら嫌だったので、力の有無を聞いたのだが……。

彼女は変身ヒーローのようなポージングを取って変身をした。

 

彼女のベルトが黄金に輝くと彼女の頭に獣耳と腰には獣の尻尾が生える。

俺はそれを見て……。

 

「採用!うちで雇われない?報酬はそれなりに出すよ」

 

「ほんとっ!?」

 

彼女をスカウトしました。

だって金髪でケモミミで巨乳だよ?男なら仕方ないだろう。

彼女なら喫茶店をクロノスで経営する時や帝都の店が復活した時に即戦力になるだろう。

制服もメイド服にするかな?

 

☆マリオ視点☆

 

俺の名はマリオ。

スラムの雑用髭と呼ばれる男だ。

 

何でも屋をやっており、雑用からマッサージなど様々な仕事をしている。

故にスラムの連中からは雑用髭と呼ばれる。

今日は喫茶店の店長に頼まれて、複数の仕事仲間達と引っ越しの手伝いだ。

 

最近の帝都は危ないせいか、店長の様に夜逃げ同然の引っ越しをする者が多い。

逃げる本人達は最悪だろうが、第三者である俺としては稼ぎになるからありがたいんだ。

 

マッサージの弟子であるレオーネも誘ってやったんだが遅刻しやがって……。

まあ、いい。

 

なんやかんやで帝国を出る事が出来たし、レオーネも店長に気に入られて職に就けた。

弟子がちゃんとした社会人の一歩を踏み出せたようで俺は嬉しいよ。

 

ある程度、帝国から離れた俺達は南の森で店長の指示でテントを張って野営することになった。

 

「ここの周辺は危険種が出る事がある。

交代で見張るぞ」

 

地図を広げた店員の女性…エスデスさんの指示に従って、見張りの順番を決める。

彼女は狩猟民族のようで、こういうのは得意中の得意らしい。

店長以外の男である俺と他の奴らは全員戦力外通告を受けた。

 

…君たち喫茶店の店員だよね?なんでそんなに武闘派なの?

 

「へぇ~店長も見張りするんだ。エスデスだっけ?

店長って、そんなに強いの?」

 

「……レオーネと言ったな。これからは同僚になるのだから先輩として教えてやる。

店長は私たちの中で一番強いぞ」

 

喫茶店に所属する人間たちの戦闘能力に怪しさを感じている俺。

エスデスさんたちの強さはスラム育ちの俺達にはなんとなく分かる。

スラムで生きていくには強い敵に遭遇したら逃げる技術が必要とされるから、その辺は敏感だ。

 

その勘では店長は身体的能力は優れていても殺しや戦いには向いていない弱い部類に入ると俺は思う。

レオーネもそう感じているんだろう。

 

はっきり言って店長は覇気や殺気といった物とは無縁な気がする。

 

「ふーん……」

 

「おいおい、雇い主が大丈夫ならいいじゃねぇか。

店長一人じゃあ寂しいだろうし、俺も店長と一緒に見張りをやりますよ」

 

怪しい感じで店長を見るレオーネを遮って、話題を逸らす俺。

正直店長一人で見張らせるよりかは俺が一緒の方がマシだと判断したからだ。

 

………。

 

店長が用意してくれた男用のテントから出てきた俺は店長と共にマイン嬢ちゃんと見張りを交代する。

テントの近くで燃えている焚火を囲みながら辺りを見渡す俺と店長。

 

「……」

 

「……」

 

か、会話がない。

お互い何も喋らないので空気が微妙だ……。

あれか?黒いコートを褒めればいいのだろうか?

それとも星が綺麗ですねと切り出せばいいのだろうか?

 

他には何か……。

話題を探す為に辺りを見渡したりするがどれもピンとこず、自分の鞄を漁る。

すると……一本の酒が出てきた。

男同士、色々と語り合うにはこれが一番だな。

 

「いい酒があるんですが飲みませんか?」

 

「頂こう」

 

酒を回し飲みして、語り合った。

初めはハンバーガーを作ったり、ポテトフライという新商品の研究など、日常的な話だったのだが、飲んでいる途中から、政治や帝国の批判になった。

スラム育ちの俺達は元から底辺だから、良く分からないが店長は色々と思うところがあるらしい。

 

しかし、周りに人が居なくて良かったよ。

もし、帝国軍人や警備隊の人間に聞かれたら連行されて処刑コースだ。

最近だと身内も巻き添えで処刑されるらしいが……かなりの重罪だ。

 

「今の帝国は根本まで腐り切っている。

直すには根本を排除しなくてはならない。

たとえ…幼い皇帝であったとしても……」

 

「おいおい、えらい過激な発言だな……。

ただの喫茶店の店長がする発言じゃないぜ?」

 

「そうだな」

 

俺の言葉に同意すると右手を懐に入れて一丁の銃を抜いた。

突然の行動に度肝を抜かれた俺だったが、事情を聞いてみる事にした。

俺はまだ、死にたくないんだ。

 

「お、おい、そんなモン出してどうしたんだよ店長。

お、怒ったか?俺のただの喫茶店の店長って言葉に怒ったか?」

 

「店長じゃない。革命を願う薄汚い殺し屋だ」

 

「ひぃ!!」

 

恐怖しながらもスラムで鍛えた根性で店長と会話をするも店長には届かなかったようで、引き金に触れていた店長の指が絞られる。

俺に向けられダァン!と放たれる一発の銃弾。

その弾丸は恐怖してのけぞる俺に当たることなく……。

 

「ぐぁあ!?」

 

複数のガサっという音と共に倒れて姿を現す国境警備隊の服を着た男達。

こいつら、一体いつから……。

つうか、一発しか撃ってないよね?

なんで複数の人間が倒れているんだ?

 

「ほう、ようやくお出ましか…と思ったら六人ともやられて全滅か……。

店長、私の分も残してくれてもいいのではないか?

新技を試したかったのだぞ」

 

「げ、六人だったの?私は四人だと思ってた」

 

「マインは気配察知が苦手なんだな。

私は初めから気づいていたぞ?

にしても店長殺し屋だったの?

なるほど、だから殺す時以外はその凄みがなかったのか……。

ケンカを売らなくてよかったぁ」

 

俺が倒れる男達に疑問を抱いていると店員二人とレオーネが女性用テントから姿を現す。

って、最初から後をつけられていたのか!?

 

店長の殺し屋発言や、女性陣の会話で頭が混乱する俺。

 

「うぅう……セリュー。

アマンダ……」

 

「ほう、一人だけ残していたのか……。

では、さっそく情報を聞き出そう」

 

そして、一人の男を嬉々として茂みの奥へと連れて行くエスデスさん。

それから、男の悲鳴とうめき声が森に響いて静かになった。

な、何してんだよ…こ、こえぇ。

 

そして、恐怖に慄く俺と男子テントから出てきて事情をレオーネから聞いたバイト達。

ようやく出てきやがったか、こんちきしょう!!

さっさと出てこいよ!!普通の人間が俺一人の状況は滅茶苦茶恐ろしかったんだぞぉ!!

 

そんな事を思い、男達と身を寄せ合っていると、エスデスさんが茂みからひょっこりと姿を現した。

 

「こいつらは、ここ一カ月ほど帝国から離れる人間を襲っていたらしい。

なんでも、生活費と上司への賄賂を集める為にやっていたそうだ。

実にくだらん。

命乞いも娘と妻の為にやったとか、上司には逆らえないんだとか、つまらない物ばかりだった」

 

「どんな理由があってもやっている事はゴミだし、掃除してスッキリだね。

私は喫茶店の仕事よりもそっちの方がいいな」

 

「だったら暗殺の特殊訓練を受けなさい。

ナンバーズになるにしても構成員になるにしても、訓練は必須条件よ」

 

「へーい」

 

「ちなみに教官は私だ。死なない程度に叩き込んでやる」

 

「あ、アンタが教官かぁ……。やっぱり、喫茶店の方がいいかな?」

 

「先輩として言っておくわ。エスデスの特訓も厳しくて地獄、店長のハンバーガーを作る特訓は優しいけど地獄よ。

自分で作った失敗作を自分で処理し続ける。

あれはまさに地獄だったわ」

 

三人娘は何事もなかったかの様に和気藹々と女子テントへと帰って行った。

え!?終わり!?

 

「マリオ。引き続き、見張りをするぞ」

 

「え?いや、ちょっと……お前ら、交代してくれない?」

 

人が死んでいるのにあっさりと話を切り上げて戻った女子達を見届けたら、店長に声を掛けられた。

俺は、殺し屋と二人っきりで見張りをするチャレンジャーではなかったので、仲間達に交代をお願いするのだったが……。

 

「すまん!髭!」

 

「成仏しろよ!!」

 

それだけ言って、早々と男子テントへと帰って行った。

ちくしょう!!

 

この後、不安で胃を痛めながら、誤魔化すように交代まで無言で酒を煽った俺だった。

 

 




元々が短編でそこまで深く考えずに書いていた二次創作がランキング上位に居た時は正直驚きました。

この作品を応援していただき、本当にありがとうございます。

皆さんの評価と感想を励みに、これからも頑張っていきたいと思います。



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