REBORN DIARIO   作:とうこ

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過ぎる暗雲

 スクアーロを部屋に残し古城内を一人彷徨う紫乃は、少しばかり言いすぎたかと置き去りにした彼のことを気に病んでいた。

 

 

 

 彼女は、死のうが構わなかった。

 

 ここに戻ってくるからには彼女も覚悟していた。二年間音沙汰なく日本に滞在していた彼女を、敵側に寝返ったと彼らが憶測してもおかしくはない。彼らが一流の暗殺部隊であるなら尚更だ。

 それでも彼女がこうしたのは、一番に沢田綱吉達の修業のためだった。

 あの時、スクアーロに見つかり、自分の居場所が日本の並盛だとバレてしまったのは非常にまずかった。彼女は二年間失踪している身だ。スクアーロはこの話を持ち帰りXANXUSに報告する。

 ボンゴレの地位を狙うだけでなく、自分の生い立ち全てを清算しようと企むあの男なら、忌々しい血縁のある者を一番に消しておきたいはずだ。

 彼女を抹消するため、彼らが予定より早く並盛にやって来る事態は避けたかった。

 

 リングが偽物だとバレるまで、彼女もいつ殺されるかわからない。

 

 

 彼女が殺される可能性はXANXUSだけではなかった。スクアーロにもバレかけている。相手がスクアーロであったからあの切り口で躱すことができた。少しナイーブな性格が難だが、容赦はしない男だ。

 

 ここまで来たら殺されることも厭わないが、しかし彼女にはまだ不安材料がある。

 ゴーラ・モスカの中に閉じ込められた九代目だ。

 XANXUSの隣に常にぴったりとくっついている。助け出せる隙がなく、彼女にはその資格もない。

 XANXUSの策略で重症を負う彼が助かる筋道を開くためには、彼らの修業が完成するのを待つ時間はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が遠い地で暗躍する他方で、並盛の廃墟病院の一角では例のリングの話が、リボーンとディーノを筆頭に進んでいた。

 見事に山本武達をその気にさせてしまった沢田綱吉は酷く落ち込んでいるようだったが、今の彼には落ち込んでいる暇もない。10日後に修業を完成させなければ、彼も仲間も全滅するのだ。

 すぐさま沢田綱吉の修業も進行することになったが、リボーンには他にも心配事がある。数日前に失踪した伊波紫乃だ。

 

 まさかあの男が八年の眠りから醒めることは彼も想定していなかった。

 

 

 この緊急事態と伊波紫乃の失踪が重なったのは偶然なのか。

 リボーンは彼女が残した言葉に殺し屋の勘が引っ掛かり、彼女と別れた直後に九代目の安否を確認し非常事態に備えていたが、彼のもとに情報は降りてこなかった。ここ数日間は、安息の日常を過ごしていた。まるで嵐の前の静けさだ。沢田家光達がボンゴレリングの話を持ち込んでくるまでは。

 

 もしかしたらあの女は、ある程度こうなることを見越していたのかもしれないと、リボーンは思った。まだ根拠はないが、彼女の言動にはその要素が十分にあった。

 

 

 

 ボンゴレの時代を象徴するリングが動き出した以上、生徒達もいつかは通らねばならない試練だ。

 

 大丈夫、彼らにはまだまだ伸びしろがある。リボーンは前向きにこの戦いに挑んだ。

 

 

 

 それぞれの家庭教師を見つけた守護者達の修業が始まった。

 

 

 


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