REBORN DIARIO   作:とうこ

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暗殺計画 2

 しばらく山本武との雑談で場を繋いだが、その後も班の奴らが来る様子がないので、山本武自らの提案で沢田綱吉達の班の偵察に赴くことにした。

 もともとタイミングを見て紫乃から切り出す予定だったが、この際どちらでもいい。

 

 沢田家のリビングに上がると、既にやらかした後のようで、色々収拾が大変そうであった。獄寺隼人は故障した10年バズーカの影響で幼児化しさらにタチが悪くなっていた。

 

 

「よお、宿題進んでっか?」

 

「山本! それに伊波さんまで~!?」

 

「同じの班の連中がなかなか来ねーからツナの班偵察しに来たんだよ。よろしくな」

 

 この上なくタイミングの悪い二人の訪問に沢田綱吉も顔が唖然としている。当たり前だ。最悪のタイミングを見計らって来たんだからな。

 

「今日は二階じゃねーの?」

 

「いや……ちょっと俺の部屋は立て込んでて……」

 

 こんな非常時にも物事を上手く収束するのはボスの大事な役目だぞ、と紫乃には所詮は他人事である。そんな風に山本武の背後に隠れて成り行きを見ていたのだった。

 

「そんな暇あんなら外の敵倒してこい!」

 

 どこから声がするんだ? と新喜劇ばりに部屋を見回す。そうして足元に10歳程見た目が若返った獄寺少年の姿があった。

 

「なんだ獄寺、来てたのか」

 

 山本武、違和感なし。

 

 紫乃はピクリとも表情の変化なしに一部始終を見ていたが、沢田綱吉の方は本来の性なのか、大きな衝撃を受けたようだ。この男の順応性もといざっくばらんな第六感を舐めたらいけないぞ。紫乃も散々振り回されてきたものだ。

 

 しかしそれでもこの態度のでかいちびっこが獄寺隼人だとピンと来ないヒロインに、慌てて沢田綱吉が調整を測っている。山本武に耳打ちで従兄弟だとかなんだとか上手く言っているんだろう。

 納得したようにチビ獄寺を軽々と持ち上げる。中身はあの獄寺隼人なので彼の手の中でバタバタと暴れているが、全く自分のリーチをわかっていない。

 

「ハハハッ、涼しーぞ」

 

 余裕で送風機扱いにされるチビ獄寺に同情を送る紫乃である。

 山本武もいつもチビ達にするようにチビ獄寺とのんきに戯れていると、沢田家のリビングに一番めんどくさいモジャモジャ頭のランボが現れた。既にやられる気満々である。

 

「付き合ってる暇はねー」

 

 秒殺である。光の速さで獄寺隼人に絞められ逃げ出すランボを見ているとさすがに不憫である。リアル五歳児にこんな仕打ちも酷い。

 

 

「大丈夫か」

 

 ギャラリーの視線が暴れているチビ獄寺に向けられている隙を見て、リビングの隅で親指を咥えているランボへと近づく。

 

「よしよし、大丈夫だ。ランボは立派なボヴィーノのボスになる男だろ。これくらい痛くないな」

 

 しゃがんでランボを宥める。初対面の紫乃に思っていたより警戒心もないようだ。ハンカチで涙諸々を拭いてやると、おもむろに紫乃の腕にしがみついた。

 

「ら、んぼ、さん……泣か、ない、もん、ね……」

 

「すごいな、君は。ところでランボ、あそこに何が見える?」

 

 この時紫乃は妙案を思いついた。年齢制限のある光学迷彩スーツを着た暗殺者の姿は、紫乃にも視認はできない。

 放置されていたランボに声をかけ、暗殺者の姿を確認させれば、紫乃には見えなくとも奴らが潜むポジションを把握できる。

 あの半人前の武器チューナーがバズーカを壊してくれたお陰で10年後を危惧する心配もない。

 

「大っきい蛙がいるもんね。ツナのとこ」

 

「蛙……やはりそうか」

 

 沢田綱吉にすぐそこまで接近しているようだ。獄寺隼人も既に気づいている。

 彼の唯一無二の右腕と言うなら知恵を絞って返り討ちにしてみせろ。お手並み拝見だ。

 

「果てろ!」

 

 獄寺隼人が沢田綱吉に向かって投げたダイナマイトが爆発する。

 すると中から鳩やらパーティーグッズの道具が飛び出した。

 そういえばそうだった、とこぼした紫乃だった。獄寺隼人も大体同じことを言っている。

 

 しかしそんなことを言ってても時間はない。注射針が沢田綱吉に近づいているのは確実だ。一刻の猶予もないぞ。右腕ならどう動くべきだ。

 

 

「……山本、その子も君達と遊びたいんだろう。キャッチボールでも教えてやれ」

 

 見ていられず紫乃が一言助け舟を出してやる。頷く山本武だが、獄寺隼人は今まで目立たずおとなしくしていたその眼鏡の女に目を見張る。

 まさか自分の意図を汲み取った……? しかし確かめている時間もない。

 

「ここだっ!」

 

 獄寺隼人のその合図とともに山本武の豪速球が放たれる。沢田綱吉に直撃するはずだったそれは、光学迷彩の男にヒットした。

 皆が見慣れぬスーツの男に驚いているが、刺客はもう一人いる。

 

 彼女の鋭く見開いた目が、もう一人の暗殺者の男を牽制する。宙を彷徨う暗殺者の姿は依然確認できない。しかし、まるでその視線に射竦められたように男は微動だにできない。

 

 そんなところに獄寺隼人は続けて山本武を誘導しそいつにボールを当てるよう仕向ける。

 

 いきなり自宅のリビングに現れた光学迷彩男達に「どちらさまーーー!?」とのんきに突っ込んでいる沢田綱吉だが、君はさっき生命の危機にさらされていたんだぞ。彼らの通常運転ぶりに、ランボを抱き抱えて苦笑していた紫乃だった。

 

 

 

 

 

 

 

【沢田綱吉暗殺は阻止、ヴェルデという緑のおしゃぶりのアルコバレーノの指示だと証言。オートマチックへと進化を遂げた死ぬ気弾で暗殺者を撃退。今回の暗殺阻止は、小さな少年の奮闘ぶりのお陰だろう。】

 

 

 

 

 

 

「お前も来てたんだな」

 

 一悶着が解決した後、あの赤ん坊が紫乃に話しかけた。

 

「君ものんきなものだな。仮に私が裏で手を引いてたとしたらどうしたんだ?」

 

「獄寺に助言してやったのを俺も見てたぞ。ツナを殺すならそんな芝居は打たねえだろ」

 

「……付き合ってられない」

 

 

 ランボをリビングに下ろし、そのまま沢田家のリビングをすぐに離れた。途中で思い出して付いてきた山本武を無視して、帰りの道中で紫乃は歯に衣着せぬ男に対する嫌悪感に眉を顰めた。

 

 

 


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