REBORN DIARIO   作:とうこ

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雪合戦

 休日の朝からリボーンに呼び出され並盛中学校の校庭まで子供達と来た沢田綱吉。二月に入ったこの頃は雪も積もる寒さだ。こんな日に外に呼び出されさらに子供達の相手をさせられまるで日曜日のパパ状態だと嘆く沢田綱吉だが、グラウンドで見た仲間達の面々に安堵していた。

 

 しかしそれも束の間、雪合戦から雪上の合戦となるドタバタ劇を繰り返していた。

 

 いつも通りの光景だ。

 

 

 休日の学校にノコノコやって来たボンゴレファミリーのメンツを、校舎三階の応接室で見守る紫乃は、毎回よくやるなと常々沢田綱吉の苦労を労わるのだった。

 

 第三勢力まで増えて、カオスとしか言いようのない雪上のレオン争奪戦が続いている。

 紫乃は高みの見物をしながら、純白のグラウンドで巻き起こる三大勢力のよくわからなくなりつつある戦いをぼんやりと見守っていた。

 

 雲雀恭弥は校内巡回と言いつつ、憂さ晴らしに行っているので、今ここには紫乃しかいない。あの男もグラウンドに降り積もる雪を見て高揚感が昂っていたところ、まだまだ餓鬼臭さが残る。

 

 それを言えばあの大人達もそうだろう。たかが雪遊びに本気を出し過ぎな気もする。まあ獄寺隼人のように雪をどこにも使わないのも問題だが……。

 紫乃はグラウンドで中坊相手に実弾入り雪玉をぶっ放している金髪のイタリア人男性の容姿を銀縁の眼鏡のレンズに映す。

 以前よりイキイキしているように見える男の顔を、紫乃は自身も無意識に追いかけた。紫乃がいた頃よりも凛々しく頼もしい顔立ちになっていた。

 

 

 ……あれなら、もう自分のことは忘れてしまっているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオンTURBOを追いかけ非常階段を駆け上がるディーノは、後方から来る沢田綱吉側勢力の山本武を振り払うためさらに加速していた。向こうは現役野球部のホープだと聞くが、ディーノもマフィアの次世代を担う端くれなら瞬発力にはまだまだ自信がある。

 こんな遊びでも中坊に譲ってたまるかと気合を入れてレオンまで目指した。

 

 三階まで一気に駆け上がろうとした頃か、彼が非常階段を登ると並盛中の校舎の外観も近づいた。

 自身もマフィアの育成学校に通わされていたが、その頃の思い出を噛み潰しながら、ディーノはふと白い校舎の一角に見た黒髪の陶器の肌の少女の容貌に、心臓の鼓動が高鳴った。

 

 ディーノの視界が少女に釘付けになる。すると彼女もこちらの視線に気づく。

 

 ほんの数秒間見つめ合う。

 

 あまりに突然のことで、ディーノはしばらく彼女のその容姿に気を取られた。

 

 

「っ……しまっ!」

 

 非常階段にもまだ溶けきらない雪が積もっていた。それに足を掬われ、ディーノの視界は一瞬で地上にまで転げ落ちた。

 

 ディーノの巻き添えとなる形で脱落した山本武は、平常運転でおおらかに笑い飛ばしていたが、雪に埋もれるディーノはどこか神妙な顔つきだった。

 そして彼は白い並盛中の校舎を見上げ、どこか悩ましげにするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

【二月に入り、沢田綱吉は相変わらずだ。

 

 雪が積もるグラウンドでも仲間達と楽しそうであった。思い出は大切にしてほしい。彼がこれから先背負うボンゴレの宿命を憂うと、そう強く願うのだ。

 

 私のようにはなるな。君の思い出だけはどうか枯らさないでくれ。】

 

 

 


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