REBORN DIARIO   作:とうこ

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週末 2

 シャワーを浴びて出ると、のんびりと並盛の景色を眺めて待っていたので飽きもせずよくやるなと内心呆れつつ、言ってしまったのは仕方ないのでお茶くらいは用意してやる。

 

 コトリと部屋の中央に起き直したテーブルの上に湯呑みを置く。市販のティーパックで煎れたそれを雲雀恭弥が一口啜る。

 

「……うん。不味い。煎れ方がなっていないな。草壁に一から煎れ方を教わらないとね」

 

 図々しいにも程があるとこの不法侵入の男に言いたいが、朝から騒ぎ立てても仕方ないので忍耐をつけることにした。こうでもしなければ、この世界を見届ける役割なんて到底務まらないと。

 

 

「まだそのことなのか。風紀委員会には入らないと言っている。気に入らないなら咬み殺せばいい」

 

「気に入ったよ」

 

 不味いという茶を啜りながら、平然とそんなことを言う。紫乃はとてもこの男が気に入らないと思う。朝から土足で上がり込んで人の寝顔を覗いているようなこの男が嫌いだ。

 

 

「君のこと、気に入った。だから咬み殺すのは後回しでいいな。先に君を手に入れる」

 

「……お前のような人の話を聞かない男が、私は嫌いだ。風紀委員会には入らないと言ってるだろ。迷惑なんだ」

 

 もう堪忍袋が耐えるにも耐えかねて、紫乃は並盛を牛耳る風紀委員長相手でも構わず直球だった。湿り気が残る前髪の下から、彼女の血よりも濃厚な赤い目が睨みつけている。

 欲情にも似た興奮を、静かにその内側に募らせる雲雀恭弥は、まるで小動物が吠えるかのように愛おしく見えて仕方ない。

 

 

「ああ……そういえばこんなものが落ちてたけど、これ君の?」

 

「――っ!」

 

 雲雀恭弥の手に収まる厚みがある物に、紫乃の顔つきが強張る。

 

「返してッ!!」

 

「ふうん。これが君の弱点か」

 

 紫乃の腕を容易にかわして仕込みトンファーを彼女の首筋にそっとあてがう雲雀恭弥は実に愉快そうであった。紫乃の目には、狂気の沙汰に映っていた。

 

 赤茶の表紙に、小さな南京錠の鍵をぶら下げたそれをじっと見つめた後、雲雀恭弥がポツリと呟く。

 

「日記かな?」

 

「……中を見たのか?」

 

「いいや、まだ見ていない。まだだけどね」

 

 脇腹を突いて念を押されると、彼女に残された選択は限られる。それも屈辱の選択しか残されていない。紫乃は歯を食いしばる。

 

 

 

「……わかった。誘いは受けよう。ただし、二度とそれに触れるな」

 

 

 怒りの衝動を抑え、紫乃は渋々と了承する。

 その返事でも、今の彼には十分満足だったようで、クスリと紫乃に不快な笑みを見せつけてその窓から立ち去った。

 

 

「またあとで来るよ、紫乃」

 

 

 

 そんな去り際の言葉を残して、紫乃は窓枠に黄昏るように残された日記を手に取り、その表紙をそっと撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【咬み殺されようが構わない。

 

 私の存在は罪深い。

 死を前にして、その罪深さを知った。

 

 

 全て私の過ちだ。】

 

 

 


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