彼の背中には、まさに「鉄塊」があった
背丈程もある6本のチェーンソー、飛び出たパイプ、むき出しのフレーム
確かにそれは、対警備組織規格外六連超振動突撃剣
────グラインドブレード────
「なんだよ雅!お前すごいじゃんか!!くぅ〜、カッコイイ!」
「あ、あたしも驚きだわ……まさかここまで…」
恐らくその時一番動揺していたのは彼だろう
彼が背負っているものは「創作物」に過ぎないのだから
あれから数日が経った
あの後霊夢さんと魔理沙さんに手伝って貰いながら自分の能力のことを調べた
俺は全てのOWを使うことが出来た。実際に攻撃手段としても…
が、特に人を殺せる程のものではなく弾幕ごっこなんかで使える威力のものだそうだ
勘のいい霊夢さんとあの魔理沙さんが言うのだから信用していいだろう
だが使用後は体力が使用時間に比例して消耗されるというのも分かった。長時間の使用は厳禁ということ
そして使用時には視界がACVのように戦闘モードの画面みたくなるというのも分かった
スキャンモードでは人をスキャンすることは出来なかったが、数十メートルとしか言いようがないがどこに人がいるのかが障害物越しにも分かった
それでもって、最後にブースターだ
これまた度肝を抜かれた。イメージをすると身体の周りに赤い魔法陣が現れて、そこから火が吹くなんてものだったのだから
仕様に関してはゲームとほとんど一緒だった
吹けば体力は減るし脚をついてなきゃグラブも出来ない
ただ違ったのはどの方向でもグラブは切れないということくらいだった
本当に…なんでこんな力を持っているのか、俺には分からない
あの時死んだはずなのに今生きているのも……
今はこの幻想郷に留まる事にし、人里で仕事と家が見つかるまでアルバイトのような事をしている
能力のおかげで妖怪の出る危険な場所にも行くことが出来るから金の払いも良い
今はここ、博麗神社に居候をさせてもらっている
俺が稼いでいることもあって霊夢もご飯を人並みに食べられている
「雅ー!朝ご飯出来たわよ!」
「分かりましたー!」
縁側で飲んでいたお茶を片付け、居間に向かうとちゃぶ台の上にはいっぱいに盛られたご飯や味噌汁、大きな焼き魚や野菜が置かれていた
(2,3日まえからご飯も普通の量を食べれるようになって、飯時の霊夢さんもご機嫌な様子でホントに良かった…。居候の話が出たときには霊夢の鋭い目つきで殺されるかと思ってたからなぁ)
「さあさ、どうぞお召し上がりくださいな!雅さま!」
「あ、はぁ…」
(ただまぁ、こうやって茶化してくるようになったのは少し困るが…)
「いやぁ、ホント一時はどうなるかと思ったけど、もう最高ね!」
にっこりと眩しい笑顔を浮かべながら霊夢は、まさに年相応の少女という感じだった
朝食を終え、食器を洗っていると
「あ、そうだ。今日アンタの服とか色々買いに行くから」
「え、そんな急に言われても困るんですけど…」
「ま、いいじゃないの!仕事の方は休んで。どうせ人里にも行くんだし」
「…」
「そうそう、魔理沙も一緒に行く予定だから。もう少ししたら来ると思うわ」
(雇い主には申し訳がないが、仕方ないな…)
皿洗いが終わると外から元気な声が聞こえた
「おーい!霊夢ー!迎えにきたぞー」