「ちょっとー!お昼出来たわよ!」
彼が思案しながら箒で掃いている所に巫女服の声が響いた
「あ、はーい!」
最後に2,3回掃いてから彼女の元へと足早に向かった
ちゃぶ台があった部屋に戻ると、机の上には日本食と湯呑が置いてあった
ご飯に味噌汁、それと焼き魚というメニューだ
(正直言って腹が膨れるような量じゃないな…)
そう、ご飯も味噌汁も茶碗の半分あるかどうかという感じで、魚に至っては箸の3分の2程の大きさのが一匹しかない
(普段からひもじい生活なのだろうか)
そんな事を考えていると
「なに?文句でもあるわけ?そんな所に突っ立って」
「あぁ、いえ…そういうわけでは無くて…」
彼女の言葉にドッキリとしながらも、座布団の上に腰をおろし箸を握った
彼女は一口で魚を頬張ると、凄い勢いでご飯と味噌汁をかきこんだ
(は、はやぁ…)
雅がゆっくり味噌汁を流し込みながらご飯を食べていると、目の前の彼女は箸の先をガジガジと齧りながら、ただ一点!雅の焼き魚をジーっと見つめていた
「あ、あの!これ、どうぞ。そんなにお腹が空いてる訳でもないので…!」
雅はその様子に気づき愛想笑いを浮かべながら彼女の皿の上に手つかずの魚を置いた
「あらー!気が利くじゃない!!」
彼女はにっこりと笑い、これまた一口で平らげてしまった
彼は茶碗一杯あるかどうかの昼飯を食べ終わると、口を開いた
「あの、助けていただいてありがとうございます!」
「あぁ、別に良いのよ。仕事だし」
「えと…あなたのお名前は?」
『私は博麗霊夢。楽園の素敵な巫女よ』
「博麗…、楽園…」
「ここは幻想郷。」
「幻想郷って、そんなまさか!…」
「信じられないのも分かるけど、事実よ。ここは外の世界と隔絶された場所。アンタはたまたまこちらの世界に迷い込んだって所ね」
「迷い込んだって…」
雅は霊夢の説明された事に対して困惑していた
確かにもしかしたら、なんていうことは彼も考えていたがここまでキッパリ言われてしまったのだ
何しろ幻想郷なんてのは創作物なのだから
存在なんてするはずが無い
そんな例外が…
「だいぶ困惑してるみたいだけど、まあ安心しなさいな。ちゃんと外の世界に返してあげるから」
雅は震える手を見ながら言い放った
「そ、そうだ…俺……」
「外の世界で!!!!…し、死んだはずなんです!身体から出た血の事も!痛みも!!」
「し、知らないわよ!そんな事言われても…」
霊夢はむすっとした感じになってしまい、そんな彼女に雅はそれ以上追求することが出来なかった
「あ!じゃあ魔理沙さんが自分をここに運んできた時に何か背負っていませんでした?」
「え?ここに運び込まれてきた時には特に何も無かったけど、何か持ってたの?鞄とか」
「実はその…こっちの世界に来た時に化け物に襲われて、その時いきなり背中に武器が現れて……」
「んで、それで追い払ったって事ね。にしてもあの怪我はその時出来たものだったのね。私はてっきり胞子にやられて、なんかあったのかと思ってたわ」
「胞子?っていったい…」
「アンタが倒れてたのは魔法の森って言って、普通の人間にとっちゃヤバイきのこがあるのよ。まぁ、妖怪にあったのは不運だったわね。けど…そのアンタの背中に現れた『武器』っていうのは?」
「その、なんか、巨大なブレ…剣が現れて」
「剣?ふむ、もしかしたらアナタ…能力者かもしれないわね」
「能力って…」
「私にもあるわ、『空を飛ぶ程度の能力』が。ねぇちょっと見せ…」
「なんの話してるんだ?霊夢」
突然霊夢と雅の会話の中に少し男っぽい女の子の声が出てきた
その声の主は黒い帽子に白いリボン、黒い服に白いエプロン…まさにいかにも、という感じだった
「あら、魔理沙じゃないの。来てたのね」
「魔理沙、さん…」
「おう!霧雨魔理沙、魔法つかいだぜ!えーと…」
「自分は坂本雅と言います。森で倒れてた時は本当にありがとうございました!!」
「あはは!!なぁに、いいってことよ。よろしくな」
「それより、あんた…能力があるんだってな!見せてくれよ!外来人で能力持ちなんて珍しいんだ!な!いいだろ?!」
「そうね、私もアンタの能力に興味があるわ」
魔理沙の言葉に霊夢も同じ気持ちのようだ
魔理沙に関しては相当興味があるようで顔を少し赤らめていた
「あ、いや…自分もどうやってやるのか分からなくて…」
「う〜ん、そうだなぁ。強くイメージすればいいんだぜ」
「そうね、一度出せたんでしょ?その時見たのをイメージすれば良いのよ」
霊夢と魔理沙の言葉に若干の戸惑いを感じながらも、座布団から立ち、目を瞑ってあの時だした『グラインドブレード』の事を強くイメージした
しばらくすると突然背中がグッと重くなり、同時にプシューという音と冷気を感じた
「「「これは…!」」」
その背中には鉄塊が背負われていた