とある無力の幻想郷~紅魔館の佐天さん~   作:王・オブ・王

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12,超能力<天才>

 朝っぱら、私は外に出ていた。休みにもかかわらず私が朝から外に出ていた。

 理由は簡単で昨晩家に来ていた上条さんが財布を忘れていったから届けるから、それとどこかの誰かのせいで私は死ぬほど暑い思いをしてしまったからの二つ。

 まともに信号も動いていないせいで風紀委員(ジャッジメント)は駆り出されてる。

 学園都市の電気系統をほとんど不能にさせてしまったのはおそらく、私の友達で若干申し訳思いながらも私は昨日連絡して確かめた上条さんの住んでいるマンションの上条さんの部屋の前へとやってきていた。

 とりあえず一度ノックをする。

 

 ―――イヤァァァッ!

 

 突然叫び声が聞こえて、私は思わずドアを開けて入ってしまう。

 鍵かけてないなんて無用心だなと思うけど、そんなことに構っている暇はない。

 なんて思いながら上条さん宅に入ると、そこには……。

 

「ぜ、全裸の外人ロリに、か、上条さんが全裸で……」

 

「さ、佐天さん!? いやこれは違うんですよ、上条さんは―――ってギャァァァァッ!」

 

 全裸のロリが、上条さんに噛み付いた。

 

 これが私と禁書目録(インデックス)との出会いで、同時に魔術というものとの出会いでもあった。

 

 

 

 大体の話を上条さんから聞いて理解できた。

 そもそもあのロリっ子ことインデックスが上条さんのベッドの上で布団をかぶっているのは、あの子の着ていた『歩く教会』という霊装を上条さんがその右手で破壊してしまったらしい。

 霊装というものが紅魔館の書物で読んだそれと同じかはわからないけれど、とりあえず上条さんの右手で破壊できるということはその“魔術”というものは本物ということが証明された。

 パチュリーさんの使う魔法とはまた別のもの、と考えて正解なのかな?

 

「できた!」

 

 そんな声が聞こえてそちらを見れば、そこには布団から出て腕を腰に当てているインデックス。

 ドヤ顔で破けた服を安全ピンにて修復したようだけれど、なんか危なっかしい気もする。

 ていうかデカ過ぎでしょ安全ピン。

 

「なんだそのアイアンメイデン……」

 

「ごもっとも」

 

 私の同意に、インデックスは落ち込んで膝をつく。

 そうこうしていると上条さんが携帯を見て驚いて声を上げる。

 補習があるようで、ってさっき話を聞いたけどどうするんだろう。インデックス……。

 そう思っていると上条さんがインデックスの方を見た。

 

「俺これから学校行かなきゃなんないんだけど、お前どうすんの? ここに残るなら鍵渡すけど」

 

 おぉ、優しいね上条さん。モッテモテだね!

 だけどどこかさみしそうな顔をしたインデックス。

 

「いい、出てく。いつまでもいると連中ここまで来そうだし」

 

 連中というと魔術結社ってやつだよね? ていうか本物? いやでも幻想郷まで行っておいて私が今更そういうことを信じないというのも微妙な気がする。

 ということでこれは信じてもいいと思うけど私が絡むことで厄介なことになっても不味い。

 それに何かがあっても無能力者(レベル0)でなんの才能もない私が役にたつとも思えないし……。

 

「君だって部屋ごと爆破されたくはないよね?」

 

「ちょっと待って、私の電話番号教えとくから、困ったら電話して? 隠れ家ぐらいなら用意できるから……」

 

 とりあえず上条さんの使ってなさそうな紙に電話番号と住所を書いて渡す。

 この子が悪用するとも思えないし構わない。

 頷いたインデックスは『ありがとう』と言って玄関の方に走る。

 

「おい、ちょっと待てって!」

 

 上条さんがインデックスを追いかけるけど、途中でこけそうになって携帯を落とす。

 挙句に携帯電話を踏んでしまい……粉砕!

 相変わらず不幸だなぁ、私の1,5倍は不幸だと思う。

 

「君の右手、幸運とか神のご加護とか、そういうものをまとめて消しちゃってるんだと思うよ?」

 

 それは不味いというかなんというか……。

 上条さんはわかっていない。

 

「その右手が空気に触れてるだけで、バンバン不幸になっていくってわけだね」

 

 頭を抱えながら、上条さんがうなだれた。

 そりゃそうだよねぇ。その右手があるだけでもう不幸決定だもん。

 私の自前の右手がそれじゃなくて良かったよほんと、これ以上不幸になったらさすがに死ぬし。

 インデックスはもう『生まれてきた不幸』とか言っちゃうし。

 

「お前、ここを出て行く宛でもあるのかよ!」

 

 上条さんが突然インデックスにそう聞いた。

 やっぱり困ってる人を放っていられないたちらしい。

 

「ここにいると、敵がくるから」

 

「敵?」

 

 私の問いに、インデックスが頷く。

 

「この服は魔力で動いているからね、それを元にサーチかけてるみたいなんだよ。でも大丈夫、教会まで逃げ切れば匿ってもらえるから」

 

「ちょっと待てよ、それがわかってて放りだせるかよ」

 

 そんな上条さんの言葉に、少し嬉しそうに、さみしそうに笑うインデックス。

 私の頭の中にも色々と言葉が生まれては消える。

 あの日、フランと戦ったあの日にチルノが言った言葉が頭の中をループしては消えた。

 

「じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」

 

 私と上条さんは声を出すことができないでいる。

 まるで『ついてくるな』というようなその問いに、二人して黙っていることしかできない。

 少しだけ微笑んで、身を翻すインデックス。

 

「それじゃっ」

 

 ドアが締まると上条さんと私が同時にドアを開けて去っていくインデックスの背に声をかける。

 

「困ったことがあったらまた来ていいからな!」

「困ったことがあったらウチ来ていいからね!」

 

 お互いが同じようなことを声に出すと、インデックスは笑いながら手を振ってきた。

 

「うん! お腹減ったら頼りに―――ひゃぁっ! なにこれ!?」

 

 掃除ロボに追われて去っていくインデックスを見送ると、顔を見合わせて笑う。

 直後、上条さんの表情が変わった。

 補修を忘れてたんだと思う、急いで家の中に入る上条さんを追って私は家に入ると靴を履く。

 とりあえずは私も初春との待ち合わせ場所に行くとしましょうか!

 

 

 

 上条さんと別れた後に私は初春との待ち合わせ場所に向かう。

 少しばかり遅れたので暇そうに携帯電話とにらめっこしている初春の背後から気配を消して近寄ると、私は思い切りそのスカートをめくりあげた。

 

「今日は青のストライプかぁ!」

 

 初春が真っ赤な顔をして殴ってくる。

 まったく可愛いなぁ……チルノ相手だったら私弾幕ぶち込まれてるとこだもんね。

 しかも回避すれば大惨事になるしねぇ。

 さてさて、とりあえず出かけますか、白井さんは色々忙しいみたいだけど……。

 

「なんだか佐天さんと遊ぶのずいぶん久しぶりな気がします。そんなことないけど」

 

 私にとっては初春と二人で遊ぶのって久しぶりなんだけどねぇ……。

 前は御坂さんと白井さんの二人もいたし。

 とりあえず出かけますか!

 私と初春はとりあえずショッピングでも楽しもうと、歩き出すことにした。

 

 

 

 初春と二人で一通り遊んで、お昼をどこで食べようかという話になった私と初春。

 とりあえずいつ何があっても良いように昨日と同じく私服の上から“例のジャケット”は着てる。まぁ初春と二人でいてなにかあるとも思えないけど……。

 辺りを見回して昨晩の“謎の停電”のせいで閉まっている店の中から、空いている店を見つけるがそれといって良い場所も見つからない。

 

「中々お昼食べれそうな場所ないですねー」

 

 初春の言葉に、頷く私。

 確かに言いたいことはわかる。というよりごもっともって感じだよねぇ。

 でもこういう時風力発電様々で、電力をそこまで使わない店なら空いてる。

 さてさて、どうしよっか……ん、電話?

 携帯端末の画面を見ると、そこには木山先生という表示。

 

「電話ですか?」

 

「うん、少し待ってね初春……もしもし?」

 

 通話ボタンを押してから端末を耳元に当てると、向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『佐天くん』

 

「ん、どうしました?」

 

『隣りの女は誰なんだ?』

 

 こわっ! なんだなんだよなんですかぁの三段活用!

 てかどこよ、どこから見てるのよ!

 ていうか!

 

「貴女は私の彼女かなんかですか!?」

 

 このツッコミは正解だと思う。

 

『か、彼女だなんて、私は異性はもちろん同棲とも付き合ったことは―――』

 

「んなことはどうでもいいですから! どこですかァっ!」

 

 おっとついつい変な喋り方に、紅魔館でのことを思い出すんだ私。

 そう、落ち着いて優雅に……それといってあっちでも落ち着いてなかった気がするけど。

 まぁともかく落ち着く。

 隣りの初春も驚いてるし。

 

「で、どこにいるんですか?」

 

『左を見たまへ』

 

 そう言われて私は左を見る。

 そこには飲食店、そしてガラス張りのそこには、木山先生がいた。

 しかも向かいの席には御坂さんと白井さんというおまけ付きだ。

 やっべぇですよこれは、佐天さんも今回ばかりは白井さんから逃げきれる気が……。

 

「ごきげんよう初春……それと、佐天さぁん?」

 

 これはこれは白井さん、突然隣りに現れ―――あっ、いつの間にか店の中に、白井さんと初春に挟まれてるし。

 てか狭い! 御坂さんと白井さんと私と初春の四人は辛い!

 白井さんは私を掴まないでぇっ!

 

「君たち、そちらに四人は辛いだろう」

 

「そうですよね! ということで私はそちらに!」

 

 軽く白井さんの手を払ってからテーブルの下をくぐって木山先生の隣りに座る。

 すっごい白井さん私のこと見てるし、ほらほら御坂さんが隣りにいるのにほかの女にうつつを抜かして良いんですか? てか初春まで不思議そうにしてますし。

 あぁもう、面倒なことになりませんように……って遅いか。

 とりあえず店員さんを呼んで昼ごはんを頼む。

 そして口を開いたのは御坂さんだった。

 

「ところで佐天さんと木山先生は知り合いだったの?」

 

「まぁなんというか」

 

「前に脱がされ」

 

「誤解をうむ!」

 

 うっわぁ~って目で見てきてる御坂さんに、白井さんには深く頷かれる。貴女にだけはそんな顔されたくなかった。

 てかなんで初春は若干腑に落ちないような顔してんのさ、木山先生もしてやったりな顔だけはしないでよ!

 なんだこれ! くっそ~!

 思わず机を叩いてしまう私、飲み物が倒れて木山先生のストッキングに掛かってしまった。

 終わったぁ……。

 

「ご、ごめんなさい木山先生!」

 

 だからお願い。絶対に脱がないで!

 

「気にしなくていい、かかったのはストッキングだけだから脱いでしまえば」

 

 じゃあスカートは脱がないでくださいよ! いやどっちもダメだけど!

 イエス、ストップ! ノー、ストリップぅぅぅ~。

 瞬間、白井さんが雷を落とした。御坂さんじゃなくて白井さんであってる。

 

「だからぁ~! 人前で脱いじゃダメだと言ってますでしょうがぁぁぁっ!」 

 

 さすが一部を除けば常識人な白井さん、信じてましたよ!

 カンカンの白井さんと真っ赤な顔をしている御坂さんと初春、うぶよのぉ。

 まぁ私も女の人の裸なんて、あぁ美鈴さんとお風呂に行ったとき……へっ、久しぶりだったよ、あんな敗北感は……。

 

「しかし、起伏に乏しい私の体を見て劣情を催す男性がいるとは……」

 

「趣味思考は人それぞれですの! それに殿方じゃなくても、歪んだ情欲を抱く同性もいますのよ! ねぇ!?」

 

 白井さんは常識的な人だなぁ~まぁ、ブーメランのごとく言葉の数々は白井さんを的中だけどね。

 ていうか木山先生なに私のこと見てるんですか?

 ストッキング弁償は勘弁してください……お金はないんですよ、レベル0なので奨学金もなしで。

 

「佐天くんは私の起伏の乏しいからだをどう思う?」

 

 なん……だと……? ていうかなんで私に聞くんですか。

 

「綺麗だと思います。野外で脱いじゃダメです」

 

 少し考えるような素振りそ見せた後、木山先生は頷いて座った。

 ん、なんで私に聞いたんだろ? まったくわからない……。とりあえず木山先生が脱ぐ手を止めてスカートを履いたので良しとしましょう。

 落ち着いた状況でようやく私と初春の昼ごはんが運ばれてきたのでそれを食べながら話を聞くことにした。

 とりあえず木山先生のことを初春に紹介。

 

「へぇ、脳学者の方なんですか……やはり白井さんの脳に異常が?」

 

幻想御手(レベルアッパー)の件で相談しましたの」

 

 さすが初春、毒舌。というより科学者って私には言わなかったっけ? まぁいいか。

 私はここで幻想御手(レベルアッパー)を出すべき、かな?

 いやまだ早いよね……いや、これはどうするべきなんだろ。

 無能力で悩んでいる人がスキルアウトになることも減るかもしれないこの機械を、渡す?

 

「黒子が言うには、幻想御手(レベルアッパー)の所有者を保護するんだって」

 

「どうしてですか?」

 

「まだ調査中ですのではっきりしたことは言えませんが、使用者に副作用が出る可能性がありますの……それに、容易に犯罪に走る傾向が見受けられまして」

 

 その気持ちがわからないわけじゃない。

 今まで無能力者、低能力者で虐げられていた側からすれば高位の能力者に反撃したい気持ちは芽生えると思うし……。

 私がどうするべきなのかを考える。

 紅魔館で教わったのは『自分の信じた道を進め』ということ……。

 なら今すぐ渡すのは早計だと思うし、これが本物の幻想御手(レベルアッパー)だという確証もない。

 あと一人からでもレベルアッパーについて聞ければ……重福さんを頼るか……。

 

 

 

 あれ? いつもメールを打ったら1分以内にメールが来るはずなんだけど。

 すでに夕日が登っている外に出て、私たちと木山先生は分かれることになった。

 白井さんが一礼。

 

「今日は、お忙しい中色々教えていただき、ありがとうございました。いや、こちらこそ教鞭を振るっていた頃を思い出して、楽しかったな」

 

 教師やってたんだ。だから先生って呼ばれたがって……ん、なんで私にあんな先生って呼んで欲しかったんだろ?

 別に白井さんや初春でも変わんないと思うんだけどなぁ。

 微笑んでから軽く一礼する白井さんと初春。

 

「教師をなさってたんですか」

 

「昔ね……」

 

 相変わらずの雰囲気をまとったまま片手を上げて去っていく木山先生。

 私も手を振り返した。なんだか前と違う感じがするのはなんでだろ、さみしそうな雰囲気……ていうかクマのこと言うの忘れてた。

 せっかく可愛いのにもったいないじゃないですか。

 さて、私はさっさとここから離れよっと幻想御手(レベルアッパー)のことバレたら面倒だし。

 私は踵を返してから少し早歩きでその場を去った。

 

 

 

 やっぱり渡した方が正解なのかな?

 副作用、それがどういうものか聞けば正解だったのかもしれない。

 でもこれが本物の幻想御手(レベルアッパー)という保証もないし、なにより私がこれをどこで手に入れたか聞かれれば答えに困る。

 白井さんからの質問はすべて受け流したけど、今度ばかりは御坂さんも聞いてくるはずだ。

 どうすればいいのかなぁ。

 

「佐天さん」

 

 噂をすればなんとやら。

 

「御坂さん、どうして?」

 

「だって急にいなくなるんだもん、心配するでしょ?」

 

 ハハっ、なんか変なところで感が良いなぁ。

 素直に嬉しい。刺がある考え方かもしれないけどレベル5の超電磁砲(レールガン)に“友達”として心配してもらえるのは……。

 それでも私は紅魔館で教えられた“仮面をつける”ということをやる。本当は戦闘のときとかに良いんだけどね。昨日の姉御さんとの戦いも仮面をつけるということで余裕に見せてたし、でもまさか普通にしてて役にたつとは思わなかった。

 私はその仮面をつけて、いつも通りの笑顔で笑ってみせる。

 

「だって固法先輩に頼まれたからって事件とか関係無いじゃないですか私、ただの無能力者の女子中学生ですし」

 

 あくまでも刺が立たないようにつつがなく言う。

 私はポケットの中でお守りを握り締める。

 友達相手に“演技”をするっていうのは意外と精神的にダメージが大きくて、罪悪感が膨れ上がっていく。

 心が痛い。

 学園都市に来るのを反対してたけど、最後は許してくれたお母さんのくれたお守り、それを握りしめて私は御坂さん(友達)相手に自分を偽る。

 

「そんなこと言わないで? 私や黒子を含めて、初春さんはいつか佐天さんが能力者になれるって信じてるから……」

 

「わかってます。けれどその期待が重いときもあるんですよ。いつまでたってもレベル0ですし」

 

 少しづつ、偽りの佐天涙子が剥がれていく感じが私にはわかった。

 ダメ―――<今日だって能力があればインデックスを助ける気になったかもしれない>―――考えちゃダメ―――。

 

「レベルなんてどうでもいいことじゃない?」

 

 笑っていう御坂さんに、私は笑い返せなかった。

 踵を返して御坂さんに背中を向ける。

 ハッ『レベルなんてどうでもいいこと』なんて、努力して、必死で努力してレベル5になった人の言葉とは思えない。

 イヤ、何考えてんのあたし、御坂さんは私に気を使って言ってくれたんじゃん……。

 

「佐天さんだって頑張れば“レベル5”になれるわよ。ううん、誰だってなれる。努力すれば才能なんて―――」

 

「ちょっと黙れ」

 

 つい、口にだしてしまった。私らしくない言葉。

 御坂さんの『え?』という一言が聞こえてきて、私は走ってその場を去る。

 走りながら私は唇を噛む。

 ―――最低だあたしって! なんで、私を慰めるためにあそこまで言ってくれて、追ってきてくれた御坂さんにあんなことっ! あぁもう、私ってなんにも成長してないじゃん!

 悔しさで涙すら出てきそうになるけど、絶対に泣かないっ……私は泣くわけにはいかない。だって紅魔館の誇り高いメイドなんだから人前で泣くなんて……

 

 

 

 10分ほど走り続けたかな、私は引っ込んだ涙を自覚してから頷く。

 さて……どっか行こうかな。なんか、まだ帰る気分じゃないし。

 ―――はぁ、最低だ。

 

「お~い佐天さん!」

 

 聞こえてきた声は、昨日今日で聞き慣れた声だった。

 振り向けば背後からぜぇぜぇ言いながら走ってくる上条さんが見える。

 どうしたんだろ?

 

「なんか走ってたから心配になってさ」

 

 まったく気が利く人というかなんというか、ほんと御坂さんが惚れるに値する人だと思う。

 レベル0でもこの人ぐらい爽やかな生き方をしてると同じれべる0としてなんだか嬉しい。

 ともかく、私は上条さんに軽く挨拶。

 さっきのことは一旦忘れることにしよう。

 

「そうだ、俺の住んでる寮近くだから晩御飯でも食べてってくれよ」

 

 昨日とは真逆の上条さんからの提案に、私は頷くことにした。

 上条さんとは初春とはまた違った親友になれそうな気がする。

 日常、とは違うんだろうけど……恋愛対象でもなさそうだけど、なんだろう。妙に安心するのは同じレベル0だから、かな?

 

 二人で一緒にマンションのエレベーターに乗って上がる。

 今日二回目のこのマンション。そしてエレベーターから下りると、私たちは上条さんの部屋の前を見て笑う。

 まったくもう、また行き倒れて……てか清掃ロボにたかられてるし。

 

「なんていうか、不幸だ」

 

 嬉しそうに言う上条さん、なんか他人とは思えない言葉。

 

「おいインデックス、こんなとこでなにやってんだよ」

 

「電話して良いって言ったのに」

 

 私たちはインデックスのそばに行く。

 インデックスの体を揺らす上条さんだが、中々起きない。

 ん……この匂い……。

 

「こんなとこで寝て……」

 

「上条さん、これって」

 

 インデックスの背中には真っ赤な液体がこびりついていた。

 同じく、上条さんの手にも真っ赤な血がついている。たぶんインデックスの体を揺すったからで……。

 唖然とする上条さんと、同じく言葉を出せない私。

 腕を破壊され、左目を破壊された私だけど今だに大量の血っていうのは慣れない。

 インデックスの意識を覚まさせるために大きな声で名を呼ぶ上条さん。

 

「どこのどいつにやられたんだ!?」

 

 そして、背後から足音が聞こえて私と上条さんは同時に振返る。

 そこに立っているのは、黒いローブを着た赤い髪の男の人、身長が上条さんより全然高くて、耳にいくつもピアスをしていてタバコまで吸ってる。目の下にバーコードをつけていて、なにかのファッションなのかなんなのか知らないけど、私は即座に動けるようにした。

 

「はぁ? 僕たち、魔術師だけど?」

 

 インデックスを襲ったのは目の前の魔術師と名乗った青年だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 こうして私と上条さんは魔術と出会う。

 こうして私たちを取り巻く世界は変わっていく。

 そして、科学と魔術が交差した―――。

 

 

 

 




あとがき

はっきり御坂に反論してしまったでござるな。いや、反論にすらなっていないでござるが(汗
とりあえずこれで色々と御坂と佐天さんの現状がこじれた状態に候。
そして出てきた“すているさんじゅうよんさい”に佐天さんはどう動くのか!?
まぁ、次回でござるな次回!

では、お楽しみにしていただければまさに僥倖ォッ!

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