NARUTO-空-   作:Teru-Teru boy

1 / 12
オリジナル主人公、オリジナル技、オリジナル設定
オリジナル要素はちょくちょく出てきます


ソラとイルカ

「先生、さようならー」

「おお、さようなら」

 

 海野イルカは自分の生徒に別れの挨拶をする。にこやかに笑顔で生徒を見送った後、瞬時に顔つきを鬼の形相に切り替える。

 

「先生、じゃあな」

「お先」

「ひゃっはー」

「おやつ♪おやつ♪」

「さらば」

「お前らは居残りじゃボケェ!!!!」

 

 先の生徒に便乗してそそくさと逃げ出そうとする問題児5匹に怒りの形相で逃げ道を封鎖する。かの問題児は、上からうずまきナルト、奈良シカマル、犬塚キバ、秋道チョウジ、天野ツカイである。

 

「ナルト!!今日お前は何をした!?」

「ええ、なんだってばよ」

「授業を抜け出した挙句火影様の顔岩への落書き!忘れたとは言わせんぞ!!!」

「記憶にないってば」

 

 ゴツ___

 

 鈍い音がナルトの頭から鳴り響く。イルカの渾身の一撃を喰らったナルトは四肢を投げ出して横たわる。頭の周辺には星がいくつも漂っている様だ。

 

「シカマル!」

「寝てました」

「そうだ!今日一日ずっと授業も聞かずに寝てたと報告が来てる!!ちっとは真面目に授業を受けんか!!」

「なんでわかる授業聞かなきゃいけねえんだよ」

「態度に問題だらけだ、忍たるもの規律を守れんでどうする!!」

「はあっ、かったりぃ」

 

 ゴツ___

 

 今度はシカマルの頭から鳴り響き、横たわる人間が一人増えた。

 

「キバ!」

「授業」

 

 ゴツ___

 

「り、りふじん…」

「授業を抜け出して校庭で遊んでいるのが先生方全員に目撃されているぞ、このバカ!!!」

 

 そしてイルカは次なる標的へと視線を向ける。

 

「ヒィ!?僕何も悪いことしてないよね!?ツカイ?」

「授業中にお菓子ぼりぼり食ってるやつが何を今更」

 

 ゴツ___

 

 ツカイに助けを求めたチョウジだったが、ツカイの言葉はイルカの主張そのもので、即座に屍体は4つに増えた。

 

「俺、何か問題起こしたっけ?」

「教室の窓を溶かしておいて何もしてないはずがないだろ!!!」

「先生はわかってないな、この俺、天野ツカイが自分の能力を高める修行をしているのだ。木の葉にとっては窓ひとつ失うよりはるかに有益ではないか」

「授業中に修行をするな!!!」

 

 ゴツ___

 

 結局のところ5人ともゲンコツをもらうのである。

 

「先生、通ってもいい?」

「何だ!?」

 

 ヒートアップしていたイルカは話しかけてきた人物を見て怒りの形相を解く。

 

「ソラか、まだ残っていたのか」

「先生が教室の出口封鎖するから出られなかった」

「ああ、すまん気がつかな…」

「私、先生の視界に入ってたと思うけど?」

「あ、ああ、勘違いだった。すまないな。こいつらが逃げ出すのを防ごうとしていたんだ。ソラには少し時間とってしまって悪かったな」

「いいよ別に、じゃあね」

「あ、ああ、また明日…」

 

 イルカは蒼井ソラが苦手であった。人物像が嫌いとかではなく、ソラの特性が教鞭を振るう際にかなりの厄介なものと化すのだ。蒼井一族に伝わる血継限界のせいで、ソラは空気に溶け込むのが非常にうまい。無意識に溶け込んでいるようなもので、注視しなければソラを見つけることができない。そのせいか、授業中にソラが解答などで当てられる回数は他の生徒に比べても非常に少ない。先生が意識してソラを指名しなければならないからだ。その場で生徒たちを見ながら指名するとソラはまず当てられない。忍として最高の忍ぶ極意を持った一族である。

 

 つまり、イルカはソラに気づくことなくソラの帰宅を妨げたということ。イルカはソラに気付くことができなかったことを教師という誇りから少しだけ恥じているのだ。その少しだけ後ろめたい気持ちを持っているイルカにソラは何も気にせずに帰る。ソラは自分の特性という理由から、イルカがソラを構うことができないこと理解しているのだから。

 

「問題児じゃないんだけどなあ、ソラの気遁は…」

 

 授業においてもソラだけ省いているような感覚がイルカの教師としての誇りに突き刺さる。仕方ないとしてももう少しソラのことを理解できないかと思案する。そして違和感に気付いた。

 

「ああ!?あいつらどこいった!?」

 

 ソラを気遣うよりも問題児5人の方がイルカにとっては重要な案件である。

 

 

 

 ソラが帰宅をして家に着くまでソラは話しかけられることはあまりない。

 

「ソラちゃん!」

 

 あまりないだけで例外はある。それがうずまきナルトであった。

 

「ナルトくん、どうしたの?」

「いや、ソラちゃんのお陰でイルカ先生から逃げられたからな、ありがとな」

「どういたしまして、でも、イルカ先生はナルトくんのためを思って叱ってるんだよ?」

「う、それは…」

「ナルトくんにいいこと教えてあげる」

 

 ソラは稀に起きるナルトとの遭遇が結構好きだった。普段空気の自分に注目して話してくれる存在は貴重だからだ。

 

「いいこと?」

「今からイルカ先生に謝りに行って火影様の顔岩掃除したら一楽のラーメン奢ってもらえるはず」

「それ本当か!?」

「ちゃんと謝ってね」

「わかった!ありがとなソラちゃん!じゃあな!」

 

 騒々しく去っていくナルトの後ろ姿を見届けてからソラは帰宅する。ソラは気には敏感であるからこそ、人の本質に触れ続けるとその人の行動がわかってくる。担任のイルカのこととなれば、それはもう簡単に、ゆえにナルトが反省し掃除をすれば一楽のラーメンをおごるというイルカの行動が読めるということ。

 

「イルカ先生には悪いことしたかな?」

 

 ソラは一言呟いたが、それを感知できた人間は周囲にはいなかった。

 

 

 

 ナルトは一楽のラーメンをすすっている。

 

「なあ、ナルトどうして今日は反省したんだ?何かあったのか?」

 

 5人に逃げられたイルカは説教ができなくなった代わりに明日の教鞭の準備に取り掛かっていたが、そこに反省したナルトが帰ってきて、火影の顔岩を掃除すると言ってきて感動したのだが、ナルトの行動としては不自然だったため、それを今になってから聞いている。ナルトの掃除中は明日の準備をしていたから今になってようやく質問ができた。さらにいえば、イルカはナルトが監視していなくても火影の顔岩を掃除を終えたのを見て感動を募らせていた。

 

「うん?ああ、そのことならソラちゃんに教えてもらったんだってばよ」

「ソラ?ソラがどうかしたのか?」

「イルカ先生から逃げられたお礼を言ったら、ちゃんと謝って掃除すればイルカ先生が一楽のラーメン奢ってくれるって言ってたってば」

 

 イルカは頭を抱えた。

 

 自分より余程ナルトの扱いに慣れている。

 

 そして何より教え子に完璧に行動を読まれた挙句、問題児に甘い蜜を吸わせてしまっていた。

 

 イルカはナルトへの怒りと同時にやるせない虚脱感に襲われた。

 

 いろいろな意味でイルカにとってはソラは厄介な教え子であった。

 

「ああ、そういうこと…」

 

 完全に意気消沈したイルカを見て一楽の店主と店員であるテウチとアヤメは苦笑いである。二人もソラのことは知っているが、同時にナルト以上に特殊な存在として認識していた。ラーメンを食べに来るときは絶対にナルトが誘ったときだけであり、直接見て話したら優等生だが、一人歩きした噂が問題児のような扱いをされている少女だからだ。子どもらしからぬ、されど子どもの特異な存在はやはり特別な見方しかできないものである。テウチは問題ないが、アヤメも何か見透かされているような感覚をした体験もあるため少し苦手な存在である。

 

「ごちそうさま!おっちゃん!また一楽のラーメンおいしくなってるってば!」

「おお、そうか!ダシを少し改良したが常連のナルトにはすぐわかっちまったか!」

 

 テウチはナルトの素直な反応が嬉しく、ナルトとダシについて話し込む。

 

「はあ」

 

 その横でため息を漏らすイルカ。考えていることはソラである。ソラの気遁の性質は木の葉の忍なら大抵のことは知っている。気というものに敏感であり、感知タイプであり、気に紛れることがうまい。ただそれだけだが、気に敏感であることと気に紛れることが悩みの種である。空気を読めるといえば聞こえはいいが、まるで教えることが何もないように感じでしまう。絶対にソラにも悩みの種であったり何かあるものだ。だが、自分はソラの役に立つのが難しい。わかりやすい問題児と違ってイルカはソラに対する距離感に困っていた。そしてその距離感に拍車をかけるのが気に紛れる能力である。探さないと見つからない問題児とは、なるほど面倒な存在だ。実質的には問題児ではないのだが、それもまた距離感がある。イルカは教え子には平等であるべきだと考えているが、ナルトとソラに対する平等性は天と地の差ほど開いている。これではナルトをえこひいきしているとソラに指摘されたらイルカは微塵も言い返せない。そしてソラはそれをしないからこそイルカは困るということだ。

 

「もんだいじさんじょう」

 

 そして空気を読まない空気を読む人物が一楽を訪れた。

 

「ソラ!?」

「先生が私を気にするなんてことあるのかな、って来てみたんだけど」

 

 抑揚の少ない声で流れるようにナルトとは反対の席に着くソラである。

 

 ソラの読みはイルカの想像を越えている。

 

「私はあまり気にしてませんよ」

 

 気を読むことが特異な少女はイルカへの解答を用意している。

 

「う…」

 

 予期せぬ来客に予期せぬ自分の悩みの解答に困り果てるイルカ。

 

「先生がきちんとした教師たることを私は知っています。尊敬しています。本当ですよ。私のことで悩む先生はイルカ先生が初めてですから」

「そ、そうか。俺はソラの先生できてるか…」

「はい、私は自分の能力をオフにできますが、それをしていません」

「え?」

「つまり先生が私に気付けないのは私がそうしているからです」

 

 前言撤回することになるかもしれない。イルカはもう確信していた。

 

「気遁に慣れるために常時展開しているんですよね。お陰で授業中寝てても怒られませんし」

「やっぱり問題児じゃねーか!!!」

 

 急にうるさくなったイルカにテウチとナルトが驚いていた。




さっそくオリジナル主人公と少しだけオリキャラ1名登場。
原作に沿いながら一部外伝風になるかと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。