…それだけです、頑張ります!
私はまた夢を見た。
紅い館をただひたすらに歩き続ける夢。
こんなにも暗いのに、怖くはなかった。
皆がいてくれる、
そんな初めての感情に私は包まれていた。
だからだろうか。
私は、目の前に迫る紅い槍を避けきれずに―。
―――――――
「……い……おー……おーい!」
耳元で聞こえる声に、パッと目を開けるとすぐそこに魔理沙の顔があった。慌てて後ろに仰け反ろうとするが、自分が床に寝ているのに気づく。
魔理沙にぶつからないよう、ゆっくりと上半身を起こすとそこは縁側だった。
魔理沙たちは茶の間でくつろいでおり、霊夢がお茶のおかわりを取ってきた所だった。
「あら、もう目が覚めたのね。丈夫で良いことだわ。」
「ふふ、お帰りなさい♪」
意味ありげな紫の顔を見つめ、私は思い出そうとした。
今まで見ていた夢なのに、あんなにも細やかな描写も温もりも……全て消え失せていた。
「どうした?まだ霊夢の技の余韻でもあったか?」
おちょくるような魔理沙の声に、私はとりあえず、と茶の間に入れてもらった。
「さて……どうしてこうなったのよ?」
「何がかしら?」
霊夢が何の事を言っているのかは、一目瞭然。
突如始まり、そして私の敗北に終わった弾幕ごっこのことだ。
「あぁやって、受け止める準備もしてたってことは、魅空羽が負けて落ちてくるのも知ってたのか?」
「いいえ、知らなかったわ。それに、直前まで別の事をしていたし。」
「はぁ?!勝手にやらせといて見てなかったって言うの?!」
「そりゃないぜ紫!」
霊夢と魔理沙の勢いで倒れそうなちゃぶ台を、私は慌てて押さえる。
紫は涼しい顔をして、私に向き直った。
「さて、魅空羽……貴女は帰れないわ。」
突然の告白だった。しばし固まっていた脳内思考が動き出す時、私と魔理沙は同時に叫ぶ。
『えええええ!!?』
「五月蝿いわねぇ……でもどうしてよ?魅空羽は外来人でしょう?」
「そうだけど、そうじゃないのよ。」
「訳が分からないわ。」
霊夢の事務的な口調に、私も改まって聞く。
「どうして、なんですか?」
紫は、そうねぇ、と口元を隠してしばし黙る。
伴うように、茶の間は静かな雰囲気に包まれた。
「今言えるのは……霊夢。魅空羽は結界の緩みで来た外来人ではないわ。」
「……そう。まぁいいわ、どうせ詳しいこと聞いたって、私にはよく分からないし。」
「ふふっ。その潔さ、嫌いじゃないわ。」
魔理沙と顔を見合わせる私に、紫は穏和な笑みを浮かべて言った。
「少し、挨拶回りでもしてきなさいな。貴女は少なくともここに留まることになるのだから。」
「……それなら、紅魔館はどうだ?」
魔理沙も諦めたように提案してくれる。それが良いのだろうか。
半ば流されるように、私は紅魔館……とやらへの道を教えてもらった。
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