幻想郷は夢を見る。   作:咏夢

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番外編の短編を書くにあたって、とりあえず予告を。

短編にするので、もう少し遅くなる予定です(T-T)
一区切りつく感じ、ですかね。


八雲藍は夢を見る。―まだ見ぬ星を見上げて

 夢の迷い人に、選考基準は無い。

そもそも選ぶのは誰でもないのだから、当たり前だ。

 

 

 だが――

 いや、だからこそ、この一年間は凄まじいモノだった。

 

 夏のとある朝。

 彼女は、妖怪の山に降り立った。それに気づいた妖怪が、霊夢と魔理沙を山へ向かわせたのだ。その時、彼女に魔理沙が気づき、予想通りに、博麗神社へと連れてきた。

 

 それからの彼女の行動も、ある意味異例だったといえる。

 いきなり紅魔館にて、スカーレット姉妹と戦闘。その後は、至って親しげな様子が見受けられたが、そもそも生きていたのが驚きだ。

 次に向かったのが、これまた驚きの冥界である。紅魔からの付き添いもあったが、終始危なっかしかったので、何度も声をあげそうになった。

 もうその先は色々あった、としか言い様がない。

 次代の迷い人が現れるというのは、かなり異例だったし、異変の元凶になるなど……まぁそれは割かし私の仕業なのだが。

 

 

 その点で言うと、冬に訪れた彼女もなかなかのモノだった。

 いきなり無縁塚に現れた時はハラハラしたが、すぐに捜索が完了。恒例(?)の挨拶回りに送り出して、後は個人的に色々あったらしい。年を越す頃には、前代の迷い人を捜したいと言っていた、すぐ傍に居るのに。

 その後、フランドールが暴走したという話が流れてきた。彼女は魔理沙とすぐさま紅魔館へと向かい、その惨状に深く感じ、前代の迷い人と共に解決してみせた。

 これは彼女達の知らない話だが、あれから幻想郷全体でも、夢の迷い人が深く認知されるようになった。ただ、幻想郷に居られる時間は区々なので、次代の迷い人は一日限りで帰ってしまった。まぁ、妖怪に喰い殺される寸前だったというので、幸運だったかもしれない。一夜限りの悪夢では、相手方も何ら変わりなかっただろうし。

 

「……藍?」

 

 思考が脱線に脱線を繰り返していた。すみません、と一言謝る。紫様は頷くと、話を続けた。内容から察するに、さほど聞き逃してはいないようだ。

 

「紫様。予兆があるのは解りましたが……どうするのですか?」

「……どうしようも無い、かしらね。」

「と、いいますと?」

「こう言うも何も、元々やることなんて無いわよ。例え相手が、どんな状況であっても……ね。」

 

 紫様は、とても苦しげな笑みを浮かべた。それは手に取るように分かるのに、その奥にある情報が読み取れない。私は、彼女の式なのだ。しっかりしなくては。

 

「紫様。何でも、お申し付け下さい。八雲藍、この身が朽ち果てようと、成し遂げてみせますから。」

「式が朽ち果てたら、どうなるのかしらね?」

 

 優雅な仕草で、くすくすと笑う。子供らしくて、どこか儚い。そんな主のために、今日も私は動くのだ。

 

「……乾杯しましょう。次代の夢の迷い人に。」

「はい、紫様。」

 

 けれど、もしこの場に彼女達が居たら、なんて考える私は、式として少しおかしいのかもしれない。

 けれど、今は素直に、あの星の輝きが恋しかった。

 

「彼女達は、来てくれるでしょうか?」

「さぁ、分からないわ。彼女にどれだけ時間があるのか……」

 

 

 




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