幻想郷は夢を見る。   作:咏夢

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今回は前後編に分かれました(--;)
展開遅くてすんません

追記:見直していたら、アリスが初見でない事に気づき急ぎ修正しました!当時は気づかないものですね(笑)


大晦日、巫女、宴会①

「ほらっ!これ、脇に置いといて!」

「ちょっ!そんな一気に持てるわけ……」

「い、い、か、ら!さっさと運ぶ!」

「ぐはっ……」

 

翌朝、博麗神社に降り立つとマフラーを付けた霊夢と魔理沙が、何やら忙しそうにしていた。小さな机やら蓙やらを古い倉庫から運び出している。

すると、霊夢がこちらに気づいてすぐさま声をかけてきた。

 

「燐乃亜!いいところに来たわね、手伝いなさい」

「……はい。」

 

札をちらつかせる霊夢の命令は不可抗力だ。魔理沙と良いようにこき使われてこき使って、気づけば太陽が真上に来ようとしていた。

 

「ふぃー……ちょっと、きゅーけーしよーぜ……」

 

重そうな段ボールを足元に下ろし、魔理沙が空を仰ぐ。そこでようやく霊夢が今の時間帯を自覚した。私と魔理沙を中に招き入れると、茶を淹れに行った。

 

「……にしても、今回はいつにも増して豪勢になりそうだなぁ」

「何がだ?」

「……お前、何も知らずに準備してたのかよ?」

「おう。」

「……ふ、あはははは!!!」

「笑うなっ!」

 

魔理沙を軽く睨み、話を強制的に戻す。

 

「で、何の準備なんだ?」

「宴会だぜ。ほら、年越しの」

「あーそうか。もうそんな時期か……ん?宴会?」

「外界は確か、二十歳まで禁酒とかいう法律があるんだってな。パチュリーの所で読んだぜ」

「お、おう……ってことは、みんな呑めるんだな此処は」

「あぁ。ま、弱いかどうかは人次第だがな。変なのに絡まれんなよ~」

 

そこまで言うと魔理沙は、縁側を立って居間に駆け込んだ。まだ少し早い炬燵に足を滑り込ませて、湯飲みを手で包み、幸せそうな顔をしている。そんな魔理沙を見て、霊夢が微笑ましそうだったのは内緒の話だ。

 

――――――

 

「こんにちは、霊夢。久しぶりね」

「あら、咲夜じゃない。早いわね」

「お嬢様が起きる前にと思ってね、迷惑だったかしら?」

「いいえ。あ、お茶飲む?」

「頂くわ」

 

あっという間にやってきた大晦日の朝、咲夜が来たのは午前8時頃だった。霊夢と会場の掃除をしていた私は、彼女の持ったバスケットの中身を聞いた。

 

「ワインよ。お嬢様に出すことは出すのだけれど、在庫が有り余ってるのよね。だから宴会には毎回持ってきているの。」

「ほぉ~……」

 

相変わらず裕福な豪邸だ。高級そうなボトルを数本持ち上げてみせる咲夜に、霊夢が満足そうに頷いて湯飲みを差し出した。咲夜はそれを飲み干すと、ありがとう、と言って消えた。言っておくが、何の比喩表現でもないし、多分時を止めて帰ったのだろう。

 

「さて……ま、後は待つだけだな。」

「あー、私は紫の所に行ってくるわ。」

「ん?何かあんのか?」

「……まぁね。」

 

やけに不満そうな顔の霊夢を見て、魔理沙があっと小さく声を上げて察したように話題を変えた。勿論何の事だか私にはさっぱりだが。

 

「私はアリスん所に行ってくるぜ。どうせ料理運ぶの手伝わないとだしなぁ」

「そうか……」

「燐乃亜はどうするんだ?此所にいて何か来ても面倒だし……あ。そうだ、魔法の森には来たことあるか?」

 

出てきた地名には聞き覚えは無かった。

 

「……いや、無いな。で?」

「着いてこいよ!人手は多い方がいい。」

「だと思った。……乗せてってくれるよな?」

「しょうがねーな。ほらっ」

 

魔理沙の箒に飛び乗ると、数秒。人生二度目の高速……いや、光速移動が始まった。

 

――――――

 

魔理沙の後を追って、魔法の森を抜けていく。当の魔理沙はというと、暢気に鼻歌を歌いながら障壁を張っているが、道らしき道は見えない。

が、突如少し拓けた所にいかにも洋風な家が建っていた。魔理沙は着いた、と安堵の呟きを漏らして戸を叩いた。

 

「アーリスー!来たぜー!開けろーっ!」

「はぁい!全く、ちょっとは待ちなさいよ……」

「へへっ、すまんすまん。ほれ、燐乃亜」

 

そう言って手を取られたので、私が魔理沙の隣に並ぶと、そこにはこの前の少女・アリスが立っていた。

 

「あぁ。貴女はこの前の……」

「おう。手伝いに来てもらったぜ!」

 

二人が話している間に、二体の人形がバスケットをいくつか持って現れた。

そのうちの三つほどからは香ばしい香りがしており、美味な料理を連想させる。

 

「?やけに少ないな……どうしたんだよ?」

「なぁに言ってるの。ほら、魔理沙の分はこっちよ」

「ちょ、多っ」

 

私の数倍はあるであろうバスケットを、器用に人形達が一枚の布に包む。そして、魔理沙の箒にくくりつけると、観念したように魔理沙は飛び立っていった。

私もバスケットを慌てて持ち上げ、アリスに一礼して羽を広げた。序でに言うと、何の種族だ、と背後から聞こえたがスルーすることにした。

 

――――――――

 

「霊夢さんこんにちは~……あっ、燐乃亜ちゃんも来てたんですね!」

「あ、早苗。と……」

「神奈子様と諏訪子様です♪」

「よろしくね~」

 

小さいカエル少女と体つきのがっしりした女性が、早苗の両脇に立っていた。巫女の早苗が様付けしているから、多分神とかなんだと思う。一応挨拶をして、霊夢のいる方へ声をかける。

 

「早苗の所来たぞ~」

「分かった!あと早苗、こっち来て手伝いなさい!」

「は、はい!」

 

霊夢はどうやら食事を作っているようで、奥から木の杓文字を持って顔を覗かせた。早苗が急いで向かうと、何やら指示をして台所に戻っていった。

 

魔理沙は人形と共に会場作りを進めていて、アリスさんが近くの縁側で指を滑らかに動かしていた。しばらくそれに見入っていると、後ろから微笑が聞こえた。

 

「アリスの人形が気になるの?」

「ん、フランか。まぁ、そんなところ。」

「……アリスの能力って便利だよね~」

「……そうなのか。」

 

私とは違って、と言い出しそうなフランに、一瞬反応が遅れてしまう。フランは日傘を小さな手でしっかりと持っており、そういえばまだ昼間だったなと気づく。冬とはいえ陽射しは暖かく、私はフランの手を引いて木陰に入った。

 

「ありがとー。あっ、おーい!こっちだよー!」

「妹様!よかったー見つけたー……どうも!」

「あ、美鈴。」

 

鳥居を潜ってきた美鈴にフランが声をかけると、慌てて走ってきた。大方咲夜に探すように言われたのだろうが、安心したように私にも笑顔を見せた。

 

霊夢の声がして、宴会料理を運ぶように言われた。目線を向けると、早苗がよろけながら盆を持って歩いていて、あまりに不憫過ぎるので席を立つことにした。

 

――――――――

 

「えーと……ま、話すことは無いか。例年通り楽しんでいきなさいな。以上よ」

 

締まらないがある意味彼女らしい巫女からの挨拶がある。

 

「よーし。んじゃ、かんぱーい!」

 

魔理沙の声にそれぞれが盃やグラスを上げて、15時頃に宴会は始まった。

宴会で酒が呑めない以上、特にすることは無いかと思っていたが、

 

「おーい!こっち来て話しましょー!」

「美鈴、あんたねぇ……」

「くく、良いじゃないの。大晦日くらい」

「ですが、私達の仕事はあくまで従者で」

「堅苦しい事言わないのよ、咲夜?」

「~……はい、畏まりました。」

「そーですよー……あだっ!?」

「なーんであんたまでそういう事を言うのかしら?」

「ぎゃああああ!!!り、燐乃亜さんたふけてーっ」

 

そうでは無いみたいだ。

幸い、年越しまでは後9時間程ある。私は騒がしく新しい空気の中へ踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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