幻想郷は夢を見る。   作:咏夢

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短いッ!
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彼女、決意、黒蝶

瞬間、その場の空気が凍りついた。いや、ただ沈黙が訪れただけかもしれないが、私はそう感じた。

ただ一人微笑みを絶やさない幽々子は、私に手を伸ばした。そして頬をゆっくりとなぞる。

 

「ふふっ……そう、そうなのね……ねぇ?」

「……ッ!」

 

今度こそ空気が凍りついた。妖夢や早苗、あの霊夢までもが、同じ恐怖を感じていた。幽々子は私に目線を合わせてこう問った。

 

「貴女は……この世界で、どうして生きるの?」

「え……」

「貴女の生きる理由を、教えて?」

 

そう言われて、私は咄嗟に思考を巡らせる。

 

冬休みの思い出作り?いや、違う。そんな理由で生きられたら、今までの私がバカみたいだ。

では、何だ?

考える。この世界でしたいこと。この世界でしか出来ないこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

――"彼女"を、見つける事?

 

 

 

「そうか……」

 

そうだ。私は"彼女"を見つける、その為に生きるのだ。

この際言っておくが、リア充になりたい訳ではない。

 

あの瞳を、笑顔を、今もう一度見たい。

 

「その様子だと、見つかったみたいね♪」

「……あぁ。」

「え、えっと……」

「ふふ、じゃあ……」

「?」

「その覚悟、見せて?」

 

 

 

何故か視界が霞む。ピントが合わないカメラの様に、人影が滲む。先に言っておこう、泣いている訳では無い。

 

 

私は立っている。

くっきりとした輪郭が見える。

目で追う。

そこには蝶が舞っている。

黒い魅惑の蝶。

手を伸ばす。

ゆっくりと、逃げてしまわぬように。

 

――死なないで、お願い

 

誰かの声が聞こえる。

 

――友達、だから……!

 

手が止まる。

止められる、見知らぬ誰かの声に。

 

見知らぬ誰か?

 

違う。

少し高くなっているけれど、これは……

 

――そう、"彼女"の声だ。

 

 

 

 

「――あ……り―あッ!燐乃亜!」

「……!」

「わあぁ!燐乃亜~!」

 

私の傍らからウサギが飛びついてきた。いつの間に中庭に転げていて、体の節々が軽く痛む。

いまいち醒めきらない頭を振って、ついでに周りを見渡す。

幽々子にお祓い棒を突きつける霊夢と、

それを見て反射的に剣を抜いた様子の妖夢と、

その手を必死に押さえる早苗。

何とも一触即発な空気に、息が詰まりそうになる。

そしてその空気をぶち破る馬鹿者が一人。いや一匹。

 

「……ねぇ、」

 

「はぁぁあああッ!!!」

「!?よくもッ」

「きゃああああ!!!ストップっ!妖夢ちゃん落ち着」

「離せッ!お前から掻き斬るぞ!」

「ッ!この夜桜亡霊が……ッ!」

「……ッ」

 

もう色々カオス。仕方ないので、私はそれなりの行動に出る事にした。

 

「"獄炎彗星―コマンドサテライト"ッ!頭冷やしとけェェェ!!!」

「「「!!?」」」

 

こうして、白玉楼でのちょっとした大騒動は幕を閉じた。

勿論、この後霊夢にキレられ、早苗に泣かれてと二次災害が起きたのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 




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