マジに泣きそうな咏夢です、それではどうぞ!
探索なう。
一言でこの状況を表すなら、間違いなくこうだろう。
今、私は紅魔館を出て湖を越え、人里を歩いていた。朝市が終わって子供は寺子屋へ、少し静かになった商店街もそろそろ終わりが近づいていた。
「次は……太陽の畑、だったっけか?」
ここに来る前に、魔法の森は少し覗いてきた。博麗神社と無縁塚、ここは経験済みなので置いておく。
とはいえ、地図は出発前にチラリと見てきただけなので、道があまり分からない。
「ま、とりあえず歩いてりゃ大丈夫だよな。うん。」
そして私は、道成らぬ道をゆったり歩き出した。
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(ヤバい……よな、これ)
絶体絶命。
今の私にはこれしか無いだろう。慌てて周りを確認するが、見渡す限りの竹竹竹竹竹……。助けは愚か、武器になりそうな物さえない。
状況を整理しよう。私と対峙している、もとい私を喰らおうとしている狼に似た化け物。全長約何メートルなど、詳しい情報を目分量で測れるほど私は器用では無いが、捕まれば最後一飲みで逝ってしまうと思う。
どうしてこうなったかと言えば、道に迷ったのがいけなかったのだと思う。豪勢な向日葵畑に着くはずだったのに、本当にどうしてこうなった。
そうこうしている内に、化け物は目に見えて威嚇体勢をとる。対抗手段が無いわけでは無いが、チルノの時にように竹藪ごと吹っ飛ばしてしまっても困る……よし。この間、わずか1秒。イメージを膨らませ、掌に神経を集中させる。次第に大きくなる炎は、パチパチと音を発てている。規模の調節も眼中に入れておこう、とそのくらいの理性を持ちつつ放とう……としたその時だった。
「……は?」
「大丈夫か?」
消し炭になった化け物を見つめて、一人佇む女性。その引き締まった横顔を、私は呆然と見つめていた。
行き場の無くなった炎をとりあえず握りつぶして、元化け物に近づく。もはや完全に燃え尽きている。
好奇心に勝るものは無く、顔を上げて女性に話しかける。
「おい」
「……何だ?ここから出たいなら此方なんだが」
「いや……まぁそうだな。とりあえず礼だけ言っておく」
「あぁ、気にするな……」
結局上手く会話は続かずに、黙々と竹の中を歩いていく。先日も言ったように、沈黙は苦手だ。いつもならその場から立ち去るのだが、そんな訳にもいかない。
少し此方から話を振ってみる事にした。
「お前、名前は?」
「……妹紅、藤原妹紅だ」
「へぇ……」
ダメだ。このままではQ&A+αで終わってしまう。焦って続ける。
「私は燐乃亜だ。さっきも言ったがありがとうな」
「いや、最近目撃者がけっこういたからさ。探してたんだよ。それにしても……燐乃亜、か」
「……そうだ、お前の知ってる燐乃亜だ」
「……そうか」
少しは会話が続いたし、考える事案も出来た。そういえば、他には誰が"前の私"を知っているのだろう。
これだけ遠くに来て、知っている奴がいるとなると、かなり大人数だったのだろう。その多くは私の事を理解してくれているが、少し気を付けた方が良いのかもしれない。
竹林から出ると、そこは山の麓だった。妹紅によると、この上が博麗神社らしい。確かに山の中腹だったが、ここだとは知らなかった。私はもう一度礼を言うと、小さな羽を広げて山沿いに上へと飛んだ。
ありがとうございました!
感想等お願いいたします!
ぶっちゃけ展開が見えないので、しばらくは挨拶回りしまーす(殴