あと投稿ペースが戻ると言ったな?あれは嘘だ。
……すみまっせーん(泣)(土下座)
「ふ、来たか。燐乃亜」
「あぁ。こんなに遅くなるつもりは無かったんだがな」
「くくく……」
何が可笑しいんだ、と聞いたらきっと負けだ。私はあえて何も言わずに、ただその幼女を見つめていた。すると幼女は首をかしげて言った。今度は普通の話し方で。
「どうしたのかしら?私の事、誰かに聞いてないわけ?」
「まぁ聞いてないな」
魔理沙からは紅魔館の位置、霊夢からは弾幕ごっこについて話を聞いた。が、紅魔館にいる住人については門番の名前くらいしか聞いていないのだ。強いて言うなら……
「ヤバイやつ?」
「咲夜。魔理沙を刺してきて」
「畏まりました」
「……」
本当に私が(マトモな)情報を持っていない事を知った幼女は、私を食堂に連れていった。夕食前なのか、長いローブを着た女が座っており、私を見ると特にどうすることもせずに読書を続けた。
幼女はその態度にむすっとして、その女に声をかけた。
「パチェ、燐乃亜よ」
「そう……」
「……そう、じゃないでしょ?何とか言いなさいよ!」
「何とか」
「あ"?」
ついに苛立ちを顕にして何処からか槍を取り出す幼女に、ようやく女が顔をあげた。
「……はぁ。パチュリー・ノーレッジよ、宜しく」
「あ、あぁ。宜しく頼む」
賢明そう、というのが第一印象だった。変な風に気取っているこの幼女より、完璧に知識も豊富そうだ。
何かあったら頼れるようにと、私は何回かその名前を暗唱した。
その間に、咲夜が美鈴を抱えて……いや、引きずって現れた。そしてもう一度消えると、次の瞬間には美鈴が席に、豪勢な料理がテーブルに並んだ。
幼女は席に着くと、誰かを待つように半開きの扉を見つめながら名乗った。
「レミリア・スカーレット、この館の主よ。宜しく」
「あぁ。……他に誰がいるんだ?」
至極単純な問いに一瞬迷いを見せ、そしてレミリアが答えようとした時、扉が勢いよく開いた。
いつの間にか移動した咲夜が慌てて扉を押さえて、蝶番の外れるのを阻止した。
「あーお腹空いたー……って、お姉さまその人……っ!」
「落ち着きなさいフラン。夕食が終わってからよ」
「……うん。」
レミリアよりほんの少し背の低い幼女は、フラン、フランドールというらしい。フランは羽をピョコピョコさせながら席に着くと、テーブルの上を眺めた。
「よーし、それじゃあ」
『いただきまーす!』
フランと美鈴が元気よく声をあげる。咲夜はレミリアのカップに紅茶を注ぎながら、何か話している。ニコニコしているレミリア達を横目に、料理を楽しんでいると、頬をつつかれた。
フォークを置いて振り返ると、ウサギが手を振って……消えた。
「~!……」
「あら、式神の方は帰ったのね」
「そのようですね」
私は特に気にする事もなく、食事を終えた。
――――――――
特に大変なこともなく、私は客間に通された。しばらくして窓がノックされた、魔理沙だ。
魔理沙は器用に窓から入ると、箒を壁に立て掛けながら色々と聞いてきた。
「初めての晩餐はどうだった?殺されなかったか?」
「まぁな。……やっぱり、あいつらも関わってくるのか?」
「あぁ。あいつらは特に親密だったしな」
私たちが話しているのは、私が前に起こした騒動の事だ。先程の様子を見るからに、フランは少なからず私に敵意を持っている。美鈴が襲ってきたのも、もしかしたら関係あるのかもしれない。
話は変わるが、私はその戦闘に関しての記憶が無い。
覚えているのは、ただ一人。私を受け入れてくれた蒼い瞳の持ち主だけ。その女の名前すら分からないのだから、ほとんど何も覚えていないといっても過言ではないだろう。
短い沈黙の後、魔理沙は大図書館に行く、と言って私を誘ったが断っておいた。その代わりに、私はもう一度食堂に行った。しばらく其所で立ち止まっていると、背後に気配が現れた。
「その地図を見ても、お嬢様の部屋は分からないわよ?」
咲夜だった。しかも現れて早々、私の図星を突いてくる。私は降参の印に両手を掲げて、咲夜の澄んだ瞳を見つめた。
「……」
「……はぁ」
今度は咲夜が折れる番だ。着いてきて、と言った彼女は大階段へと歩き出した。
――――――――
着いたのは、見たところ普通の扉の前だった。これじゃ例え片っ端から開けていっても、一日かかるだろう。
「お嬢様、燐乃亜を連れてきました」
「そう……分かったわ。入りなさい」
「失礼します」
私が咲夜に続いて部屋に入ると、レミリアは深紅のワンピースを着てベッドに腰かけていた。咲夜が何も言わずに一礼して出ていくと、レミリアは自分の隣を私に勧めた。私が座ると、ベッドは少し軋みレミリアは上下に揺れた。
「さて……私はあまり気にしないことにするわ」
「!……そうか、そのつもりで関わって良いんだな?」
「私とは、ね。フランはまだ貴女の事を、良くは思っていない」
「あぁ……そうみたいだな。……」
はっきり言って、私はこの気まずい沈黙というのが苦手だ。ベッドから立ち上がって、レミリアに背を向ける。ベッドの軋む音とレミリアの声が重なる。そこに引き留める意思は無く、ただ、気を付けてね、と静かに言った。私はそれに軽く手を振って、異様な雰囲気の地下室へと向かった。
――――――――
「……フラン。」
「誰?」
幼い声に背筋が凍る。まだ顔も合わせていない内にこうなるなんて、私は道に迷わなかった事を後悔した。かと言って、声をかけた挙げ句に立ち去る訳にもいかない。
「入って、いいか?」
「……いいよ、ちょっと待ってて」
プラスチックなどの触れあう音がして、数秒。扉が開いた。フランはにこりと笑って、扉を大きく開けると部屋の奥へ小走りした。かと思うと、次の瞬間には私のすぐ目の前にいて、一本の杖を差し出した。
「みく……じゃなかった、みぃに渡してあげて!」
「みぃ……あー、あのウサギな。分かった」
「ありがとー♪」
無邪気な笑みを浮かべるフラン、その奥に隠された私への思い。単純に知りたい、そう思った。
私はフランに声をかけようとした。が、その前にフランが口を開いた。背を向けているが、抱えたテディベアが小刻みに震えていた。
「フランね。燐乃亜の事、やっぱり信じていいのか分かんないの。あんなに人里が大変な事になってるの、見たこと無かったから……」
「……」
「……ううん、違うな。フラン、正直人里がどうなっても、あんまり可哀想だなーとか思わないよ。フランが、フランが嫌だったのはね……」
「もしかして……あの女の子の話か?」
「!……知ってるの?」
「あぁ。少しだけど顔も覚えてる」
「そっかぁ……」
そこでフランは少し此方を振り向いて、微かに笑った。とてもただの女の子とは思えない。無論、ただの女の子ではないのだが、失う哀しみを知っている笑みだ。この笑みを私は知っていた。
「あのね、その子ってね……!」
「うん……」
その後、30分程した後咲夜が様子を見に来たらしいが、勿論私達は覚えていない。咲夜によれば、二人揃ってベッドに寄りかかり眠っていたと言う。
夢の中、私はあの笑みをもう一度見た。そして決めた。
この少女を、必ず見つけてみせると。
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