「だからね?いきなり吹っ飛ばしたらダメでしょ?」
「……はい」
私は呆れられつつ叱られていた。あの妖精との弾幕ごっこ、基私がいきなり妖精を吹っ飛ばした件について、だ。
妖精――チルノ、というらしいが、そいつは友達(妖精)に連れられて帰っていった。何か凄い色々言ってた気がするが、その辺は忘れた。
「ま、こんなこと言ってても仕方ないわね。さっさと行ってきなさい」
「今から出りゃあ日が暮れる前には着けるだろ」
「あぁ。じゃ」
私はもう一度、神社から飛び立った。
―――――――
何分飛んだだろうか。やっと霧のかかる湖に差し掛かった。私はスピードを上げて、周りの霧をかき分けながら進む。真っ直ぐ進んでいるのかは怪しいが、とにかく湖を抜ければ大丈夫なはずだ。
「ちょっと待ってよ~!燐乃亜ってばぁ~!」
「……」
私は仕方なくその場に留まり、後ろを向く。そして通り過ぎそうなウサギを片手で捕まえた。
「わあぁっ!って燐乃亜かぁ。良かった追い付いて」
「……いや何で着いてきた?」
「言わなかった?私は燐乃亜のサポート式神だよっ」
「……言わなかった。」
「ふぅん。まぁいっか!レッツゴー♪」
こうなっては仕方無い。私は大人しくウサギの後を追って、紅魔館への旅路を急いだ。日が暮れたら本当に迷子になりそうだ。
―――――
それからは十分もかからなかった。私は門の前に降り立つと、目の前に聳え立つ館を見上げる。
バカみたいに大きいし、何しろ紅い。紅すぎる。
私がそのまま入ろうとすると、顔の前にスラッとした脚が飛び出てきてそれを遮った。
その方向へ目を向けると、中国っぽい服装の女の人が立っていた。髪の紅いスラッとした女性だ。
「ちょちょちょ!勝手に入らないで下さい?」
「……紅美鈴か?」
「お、私の事知ってるんですね?じゃあ尚更じゃないですか。私の職業知ってるでしょ?」
「居眠り」
「違いますよ!っていうか、せめて門番付けて下さい!」
居眠り門番・美鈴はため息を着くと、構えをとった。そして指先を此方から彼方へ、つまり挑発だ。
私は乗ることにした。門番を倒さない事には、館には入れない。RPGの鉄則、というか鉄板だ。
「此方から行かせてもらいますよ!」
「やべっ……!」
慌てて空へ飛び上がる。そして、そのまま美鈴に突っ込む。やったね、リアルライダーキックじゃん。
そんなもの決まるわけ無く、足が石畳にくい込む。私はそれを石畳ごと燃やし尽くして、走ってきた美鈴の顎に蹴りを入れる。美鈴は後ろに避けて、そのまま二、三歩下がる。
とはいえ、私はこんな格闘技の経験は無い。体育は得意な方だが、それでもただの中2だ。
「あの~。自分で吹っ掛けといて何なんですけど、入っていいんですよ?」
「……は?」
「とりあえず用件聞いていいですか?あ、別に咲夜さん呼んでからでいいですよね。咲夜さ」
「ちょっと待てっ!どういうことだ?!」
美鈴はとりあえず見たこと無い人だったんで、倒しておこうと思ったらしい。はた迷惑な門番だ。というかただの戦闘狂じゃないか。
「えへへ……すみません」
「「はあぁ……」」
私の声に誰かのため息が重なる。不思議に思って顔を上げると、こめかみにナイフを突き付けられた美鈴が顔を真っ青にしていた。
ナイフを突き付けている女性は、美鈴が何とか弁明を試みているが動じない。ただ私に向かってにこりと微笑んでマニュアルのように言った。
「ようこそ紅魔館へ。話は聞いているわ、入って頂戴」
「どうも……ちなみに誰からですか」
「魔理沙よ」
「やっぱりか……」
門の中に入った所で、いきなり目の前の景色が反転した色になる。目眩のしそうないきなりの出来事、その全ては次の言葉を発した女性にあった。
「私は十六夜咲夜、此所のメイド長よ。」
にこりとさっきよりも柔らかく微笑む咲夜は、私の表情に気づいて苦笑を浮かべた。
「ごめんなさい。貴女も時間停止が効かないのね……」
「時間停止?」
「えぇ。私の能力にして最恐の武器よ」
「えげつないな……」
思わず呟いた本音に咲夜はクスリと笑った。そして、門前に戻るとナイフを自由自在に操って美鈴のこめかみに当てた。
私を連れて平然と中庭を進み、屋敷の戸を開ける前に右手に持っていた懐中時計を動かした。
「ようこそ、紅魔館へ。燐乃亜」
外の悲鳴に負けないように声を張り上げる咲夜。その目線の先には気品溢れる幼女がいた。
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