幻想郷は夢を見る。   作:咏夢

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何か残念な感じになってます……待たせたあげくにすみません(土下座

他の作者さんのを読み漁ってたとかそういうんじゃないんですっ!ははっ!

春休み突入したんで、投稿ペース戻していきます


色々と杞憂に終わって

「美鈴……さん……?」

「あ、あぁ……!」

 

フランは嗚咽を隠すこと無く泣いた。その他の人員も顔を伏せていたが、私だけはどうする事も出来ずに視線をさ迷わせていた。

 

「妹様」

「さ、くやぁ……め、めーりんが……うぅ……」

「……ご心配なく」

 

咲夜はにこりと笑った。一体何があるというのか、主も分からない様子だ。咲夜はフランの手を引いて、美鈴の傍らへ歩いた。

そして、美鈴の手から何かを取った。それをこちらにちらつかせる彼女は徒に笑った。

 

「そして時は動き出す……解除」

「まさか……!」

 

パチュリーが何か勘づいたように咲夜を見た。咲夜はウインクすると、美鈴に手を差し伸べた。

 

「ほら、さっさと起きろ。」

「さっきまでに死んでた人に言う台詞じゃないですよ~」

「体内時計が止まっただけって言ったでしょう?あと返り血拭いて」

「う~……あ、妹様!ご心配おかけしました。もう大丈夫ですよ~っとぉ!?」

 

ガッツポーズしてみせた美鈴にフランが飛び付く。かなりの勢いだったらしく、美鈴は仰向けに戻ってしまった。

フランは何も構わずに、美鈴の名を呼び続けた。丁寧に一回ずつ返事をしていく彼女もとても楽しそうで、私達は1度現実を忘れかけた。

 

「……と、そろそろぶちのめしましょうか」

「……うんっ、そだね」

 

美鈴とフランはお互い顔を見合わせると、サッと立ち上がった。

今までの状況を見ると、男は私達を待っていたように見える。そして、燐乃亜……あ。

 

「……忘れてた」

「アホ」

 

この展開で忘れてた、なんて本当にただの阿呆である。しかし当の燐乃亜は、男を敵視して空中に浮かんでいた。無意識なのだろうが、地面が燃えている。めっちゃ熱いし暑い。

 

「燐乃亜、っていうんだっけ?あっついわよ~」

「はぁ!?」

「いやだーかーらっ!これじゃただの熱帯夜でしょっての!」

「……あ、あぁ~。はいはい、すみませんねっ」

「……ムカつくわねアイツ。」

 

分からなくはない、ないのだけれど。少々暢気すぎやしませんかね、この人たち。

空気を察したか察しないのか、霊夢が続けて口を開く。

 

「さて、もういいんじゃない?アンタ」

「……何のことだろうね?お嬢ちゃ」

「お嬢ちゃんじゃないし。身ぐるみ剥いであげましょうか?」

 

結構本気で肉の塊にしそうな霊夢に、レミリアが小声で話しかけた。目線は美鈴に向いているので、まだ先程の現象が信じられないのだろう。

 

「ねぇ、さっきから随分と余裕こいてるけど。もしかしてアイツの正体が分かってるとか?」

「えぇ、そうよ」

「はん?……え、今何て」

「知ってるわよ?ばらしてあげましょうか?」

「えぇ……」

 

さっきまでの殺伐としたシリアスな展開を返せ。いや返さなくて良いけど。

霊夢が言い出す前に魔理沙がその口を塞いだ。ものすごく悪戯な表情で、静かに、とジェスチャーを一回り送る。続けて上を指すので、私達は音もなく大空を見上げる。

 

唄が聴こえる。とても綺麗で、どこか哀しい。聞き覚えのある旋律は、男を包み込んだ。そして次の瞬間、辺りは光に包まれた。

 

――――――

 

『なぁ、聞こえるか?』

「うん。聞こえるよ……燐乃亜?」

『もうじき朝が来るんだとよ……殺生な』

「あはは……楽しんでくれたって事?」

『あれの何処を楽しめって?』

「分かんないけど」

『そ。別に悪くは無かったけど』

 

沈黙の中で周りの世界が、光だけが揺れる。私は気づく。燐乃亜はもう片や光と化していた。

そっと羽を動かして、燐乃亜に近づく。表情も分からないけれど、この際都合がいい。もしかしたら此方も見えていないかもしれない。

 

『……暑苦しい』

「そこは暖かいって言ってほしかったなぁ……悪くは?」

『……無いよ。』

 

また沈黙に呑まれる前に、私は燐乃亜を抱きしめたまま呟く。伝えておきたかった、ただの自己満足にならないように。

 

「……死なないでね」

『……善処する』

「……」

 

前の私ならこれで妥協していただろう。でも違う。此処に来て、学んだ暑苦しい程の"愛"。それこそ一瞬にも満たない時間だったけれど。

 

「死なないで、お願い」

『……分かった。約束する』

「……あははっ、良かったぁ。……」

『……何で泣くんだよ』

「だって……っ。友達……だから」

『!……そっか。なぁ』

「?」

『きっと、忘れるけど。でも、最後に顔見せてよ』

「……うん」

 

私から燐乃亜の瞳は見えていない。けれど分かる。

きっと輝いているはずだ。たとえ夢から覚めて、忘れてしまっても。

燐乃亜は最後に何か言っていた。しかし聞き取れなくてそれだけが心残りだったけれど、私は目を瞑った。

 

―――――――

 

「……は!魅空羽!」

「ん……」

「あら、起きたわね。良かった」

「さ、煮るなり焼くなりしちまおうぜ~」

「咲夜、貴女狐捌けるかしら?」

「えぇ、やってみましょうか?」

「わぁっ!きつねのシチューが出来るね♪」

「丸焼きも捨てがたいのよね……」

 

いきなりぶっ飛んだ世界観に付いていけず、皆を見渡す。みんな目が笑っていない、則ち怖い。皆の話題は狐という言葉がちらついていた。

 

「狐って……どこ?」

「物騒な事については言及なし、賢明な判断ね……あ、狐なら彼処よ」

 

咲夜の指差す先には、上海人形に(物理的)金縛りに遭っている九尾がいた。狐……多分女は、抵抗する事もなくただ顔を伏せていた。諦めのような、仲間を待っているような雰囲気に、私はそっと近づく。

危険性について確かめようと、霊夢の方を振り向くと……とりあえずカオスな場景になっていた。

 

「れ、霊夢?何で紫さん縛ってるの……魔理沙はどうしてアリスに襲われてるの?そしてその横で茶会になってるのは……何?これ見世物なの?!」

 

次第に混乱して、半ば悲痛な叫びになっていく私を、慧音がバッサリ切り捨てた。

 

「日常茶飯事、だ」

「アッハイ」

 

「……紫、アンタどういうつもりよ」

「やだぁ、何のことかしらぁ」

「辞世の句はそれでいいのかしらね」

「ちょ、ごめん。ごめんなさい、ね?ね?許してってばぁ~ぁあだだだだ痛い痛い痛い!」

 

「だからっ!この魔導書は危険だって何回も何回も!」

「分かった分かった。悪かったってば~」

「分かってないわ!良い?!これはね……!」

 

「咲夜、紅茶のお代わりを頂戴」

「はい、ただいま!」

「ねね、めーりんそのクッキー取って~!」

「はい、どうぞ~♪あ、咲夜さん私にも紅茶を……おぶあっ!?」

 

ティーポットを顔面に投げつけられた美鈴から目をそらして、私も妹紅や慧音と異変解決を祝うことにした。所謂現実逃避、または便乗というやつだ。

 

結局、チルノがやって来ていきなり見境なく吹雪を降らせるまで、このカオスな情景に変わりは無かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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