頑張りたいんだけどなぁ……
「「ぴゃああぁぁぁあああ!!!??」」
飛び込む寸前に羽を広げるのを忘れた私と、当然飛べない慧音は、一直線に縦穴を落ちていった。
「慧音っ!って?!」
「「「魅空羽ぁ!?」」」
ほぼ全員の呆れた声に、自我を取り戻した私は急いで羽を広げる。霊夢が先を行き、背面飛行しながら私に手短な説明を始める。
「今から行くのは地底。元地獄って言えば解るかしら?」
「地獄っ!?」
ホントに何でもアリなんだねぇ、と神妙に呟いていると魔理沙が霊夢に合わせるように箒に寝っ転がる。
「まぁでも人のいねぇ街って感じしかしねぇよな~」
「そりゃ旧都なんだから当たり前だろ」
慧音を抱き抱えた妹紅は、行ったことないけど、と付け加える。
とにかく身構えて行かないといけないかも、と私は覚悟を強くしたのだった。
―――――――
「さて、もうすぐ旧都よ」
「待ちな!」
霊夢の行く先、つまり背後に現れたのは、杯を持った……鬼だった。
私が呆気に取られていると、霊夢が心底面倒そうに話す。
「今ほんっとに闘ってる場合じゃないんだけど?」
「そうだぜ!急いでるんだ通せよ!」
「んなこと言ったって分かってるんだろう?」
鬼はニヤニヤしながら、先頭に立つ霊夢から私達を見回す。相手を見定めるようだ。
「鬼ってのは……闘う生き物なんだよ」
「はあぁ……仕方ないわねぇ、咲夜!」
「えぇ!」
瞬間、周りの世界が反転した。時が止まったのだ。
うわぁ、という小さな声に振り向くと、妹紅と慧音がキョロキョロしていた。
「すげぇな……時が止まってる、のか?」
「えぇ、そうよ。ようこそ時の狭間へ」
私達は、反転した世界を鬼の横をすり抜け(咲夜はもちろん頭上にナイフをセットしていた)旧都へ向かった。
――――――――
「さて……旧都に来たはいいのだけれど」
「ここまでは真っ直ぐだったからなぁ」
「ここからどうするか、だな」
実はここからの道が誰も分からないのだ。妹紅、慧音、咲夜、私の四人は、とりあえず道端に座る。
しばらく静かにしていると、慧音が言い出した。
「なぁ、何か聞こえないか?」
「そういえばそうだな、普通なのか?」
「「分からない」」
そりゃあそうだ。こればっかりは例え霊夢たちが来ても分からない。
はずだった。私は、口をついて出た言葉に自分自身で驚く事となる。
「この唄、聴いたことあるかも」
「「「えぇっ!!?」」」
「いや、その~何ていうか?」
弁解を試みるが思い浮かばない。諦めて、たった今思い出した事を言ってみる。
「ホントに……ただ、夢で見た人が唱ってただけで……っ!」
「夢、か」
「うーん……魅空羽の夢なら、一理あるんじゃない?」
うぅ、流石咲夜。よく分かってらっしゃる。
そうなのだ。私の夢は、普通の夢じゃない。
私は、しっかりと思い出しながら、道を歩み始める。
響く唄のそのまた奥へ、一人の少女を探しに。
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