「うーむ、ここら辺かな……」
私は、霧の湖の上を延々と飛んでいた。
案の定、紅い館が見えてくる。
「えぇっと……」
私は、魔理沙から聞いたことを思い出す。確か門番は寝てるからスルーしていい、とかだっけ。
ホントにスルーしていいのかと迷うが、ふと門の前で安らかに眠っている門番を見つけスルーすることにする。
館内はぶきみなほどに赤く、誰もいなかった。
メイド長がいると聞いていたのだが、どこにいるのだろう。どうにも館が広すぎて分からない。
仕方なくどんどん先に進んでいく。怖くない、そう思えた。魔理沙たちに出会って下手すれば数時間だが、ふとした安心感が生まれていた。
「……えっ」
私は、硬直してしまう。目の前に迫る紅い槍。
(夢と、一緒だ……)
そう思い出すと、同時に足が動く。
私はカーペットを蹴って横に跳ぶ。そして……
誰かさんの石像に頭をぶつけた。
―――――――
「そうねぇ……ワイン煮でもいいかもねぇ……」
そんな気品ある女の子の声が聞こえ、私は飛び起きる。
「食べないでっっ!?」
「あら、お早う。それと、貴女の事じゃないわよ。」
涼しい顔で言う女の子は、紅いワンピースを着ていた。そして、何より……
「ホントに吸血鬼だ……」
魔理沙はてっきり私を驚かそうと言っていたのだと思っていた。吸血鬼は、ムッとして言った。
「そうよ、何か悪いかしら?」
「い、いえ。じゃあ、貴女が……レミリア、さん?」
紅魔館の主、吸血鬼のレミリア・スカーレット。
私が最初に挨拶回りに来た人物だ。
レミリアは満足げに頷く。ムッとしたり満足したり……忙しい人だ。人じゃないけど。
「そう……貴女が魅空羽、ね。」
「はい。」
名前を言い当てられたが、そこは驚かない。私はレミリアの能力も教えてもらっている。
「それも……"視た"んですか?」
「えぇ。」
そう言うと、レミリアはクスクスと笑った。私は首をかしげる。
「何がそんなに面白いんです?」
「くくく……石像に、ゴンッって……」
「なっ……!」
あの紅い槍を投げた張本人は、レミリアらしい。
それで、私の悲惨な一部始終を見ていた、というわけだ。能力で垣間見ていたのかもしれないが。
「咲夜!魅空羽が起きたわ。お茶を用意して頂戴。」
ドアに向かってレミリアがそう言うなり、メイド服のスラッとした女性がティーセットを持って現れた。
「お待たせいたしました。」
「ご苦労様、咲夜。そうだ、貴女も自己紹介しなさいよ。」
「えぇ、畏まりました。私は十六夜咲夜。ここのメイド長をしているわ。よろしくね、魅空羽。」
「は、はいっ。」
とても綺麗な人だった。咲夜さんは微笑むと、一礼して部屋から出ていった。
レミリアは紅茶を一口飲むと、私に言った。
「さぁ、少し語らうとしましょう。貴女の事について。」
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