【第二期完結】けものフレンズ ~セルリアンがちょっと多いジャパリパーク~   作:奥の手

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第十六話 「vs.セルリアン」

研究所から東の山の麓までかかる時間は、車なら半日、歩きなら二日ほどとキュルルは言っていました。

それがどうして、アライさんとフェネックは朝早くから出発したとはいえその日の夕方に到着しているのか。

 

それは簡単なことでした。

 

森のセルリアン騒動から逃れていたフレンズ達の中には、鳥のフレンズ、すなわち空を飛べる子たちも含まれていました。

空を飛べるので歩きより格段に早い移動が可能なフレンズたちは、山とは反対方向、ちょうど草原地帯の方角へ進んでいました。

 

そんな中。

周りのみんなは山から逃げるようにして進んでいるのに、二人だけ山の方角へ歩いているフレンズがいるではありませんか。

そんなフレンズを見たら、鳥のフレンズは話しかけずにはいられません。そっちは危ないよと。

 

そうして話しかけられたのがアライさんとフェネックでした。

二人は鳥のフレンズに聞きました。

 

腕が出ている黒い毛皮に、下は緑とか茶色とか黒とかの模様が散りばめられてる毛皮の、大きなフレンズは知らないかと。

あと頭の毛は栗色で肩くらいの長さで、ほっそりしていてとっても強そうなオーラを纏っていると。

 

聞かれた鳥のフレンズはちょっと考えて、そういえば山の方から逃げている途中にそんな感じのフレンズがいたことを思い出します。

 

アライさんは大絶叫。フェネックも嬉しそうに頷きます。

そのフレンズを探していて、そのフレンズのところに行きたいから連れて行ってくれないかと、アライさんとフェネックはお願いしました。

 

鳥のフレンズは初めこそちょっと悩みました。なんせセルリアンが大量発生している森に近づくことになります。

断ろうかと思いましたが、アライさんが、

 

「空から落としてくれるだけで構わないのだ! 危険な目には遭わせないから、お願いなのだ!」

 

と、泣きついてきたので鳥のフレンズはまぁそれならいいかと承諾したのでした。

 

とはいえ一人で二人を運べるほど力持ちではありません。どうしようかなと悩んでいた側に、ちょうど運良くもう一人、鳥系のフレンズが飛んでいました。

早速捕まえて事情を話して、アライさんとフェネックは無事、空を飛んで送ってもらえることとなったのです。

 

歩きで二日かかる行程をたった一日で来れたのはそういうわけでした。

 

そして。

 

降り立った先でアライさんたちが遭遇したのは、探し望んでいたレミアさんではなく、漆黒のヘリのセルリアンだったというわけです。

 

 

そうして現在。

夕刻の太陽がもう半分ほど地平線の先に沈み、空はオレンジ色から徐々に紫色のグラデーションを描いている、そんな夕暮れ時。

 

『バスに乗って! 早く!』

 

セッキーが切羽詰まった大声で指揮を飛ばします。

セッキーの声に呼応するように、全員が大急ぎでバスへと乗り込みます。

 

その間にも、容赦ないヘリのセルリアンからの攻撃が辺りに降り注いでいました。

絶え間なく降り注ぐスコールのような銃弾は、あたりの木を穿ち、木の葉をいぬき、地面を耕します。

 

ただ幸いなことに精度がそれほど良くないのか、それとも広い範囲をわざと攻撃しているのか、バスには二、三発当たるのみでそれほど大きな被害にはなっていません。

すぐさまバスの天井にセルリアンを配置したのもよかったのでしょう。

銃弾はセルリアンに阻まれ、結果としてバスを守る鉄壁として機能していました。

 

大急ぎで全員がバスへと乗ります。

そんな中、カバンさんがビーストを抱え上げようとしていました。

一番最後まで残っていたセッキーが、カバンさんのその様子に目を奪われます。そんなことをしている場合じゃないと叫ぼうとして、先刻、カバンさんがビーストの向けていた顔と、言葉を思い出します。

 

『…………仕方ない、リスキーだけど助けてやるか!』

 

すぐさまビーストとカバンさんの元へ行き、ビーストの腕を肩に回します。

カバンさんは反対側を支えています。そのまま息を合わせてよいしょと持ち上げ、バスの中へ連れ込みました。

 

『目が覚めて暴れ始めたら一大事だけど、その時はボクがバスから追い出す。とりあえず連れて行くよ!』

「お願いします! 置いて行くのはその……できなくて」

『わかってる。さぁ、カバンはバスを出して!』

 

セッキーの声に応えるよりも先にカバンさんはバスの運転席へ飛び乗りました。

すぐさまバスを起動し発進させます。

 

ヘリのセルリアンは、

 

「ついてきてるのだー!!!」

 

バスの後ろから、木々の葉っぱを挟んでピタリと上空についてきていました。どうやら逃してはくれないみたいです。

 

続け様に、セルリアンからバルカン砲の銃弾が降り注ぎます。辺りの土が次から次へと爆ぜ飛んでいます。

 

『カバン、この道を可能な限り飛ばして!』

「わかりました!」

 

ハンドルを必死の形相で握るカバンさんです。手首のボスもずっと緑色に光っていて、『あわわわわわわ』と言いながらもしっかりバスを動かしてくれています。

 

バスがギリギリ一台通れるくらいの細さの森の道です。土を踏み固めただけの道ゆえにでこぼこしているところもあり、時折バスが大きくはねて車体が揺れます。

 

ダンザブロウダヌキがフェネックとアライさんの方へ叫びました。

 

「なぜ追われているんですか? 心当たりは?」

「ないのだー!」

 

即答するアライさんでしたが、フェネックは少し考えて、

 

「もしかすると、リュックの中のサンドスターかもねー」

「サンドスター? あ、もしかして研究所から持ってきていますか!?」

「そうだねー。でもこれはレミアさんを見つけた時に使うから、ちょっと手放せないかなーって」

 

リュックから瓶に入ったサンドスターの結晶を取り出してダンザブロウダヌキに見せます。

ダンザブロウダヌキも困った表情でどうすればいいか考えましたが、

 

「このまま追いかけられていると、いずれはやられてしまいます。今それを手放せば、ひとまずの危機は脱せるのではないですか?」

「それはそうなんだけどさー、その、アライさんがいうにはレミアさんの匂いもこの近くにあるらしいんだよねー」

「そうなのだ! さっきからレミアさんの匂いが濃くなってる気がするのだ! もしいたら、その時にこれは使うから捨てられないのだぁ!」

 

降り注いでいたセルリアンからの攻撃が一旦止みます。

バスは速度を落とすことなく、森の中の道を走り抜けています。セルリアンも、こちらを諦めているというわけではなく、次の攻撃の準備をしているかのように、完全にマークしてすぐ上空を飛んでいます。

 

ダンザブロウダヌキは、このサンドスターを捨てるわけにはいかないということは理解しました。

捨てれば解決するという保証があるわけでもありません。別の方法でこのヘリのセルリアンの追跡を振り切らなければなりません。

 

しかし、セルリアンの飛ぶ速度は明らかにバスより速そうです。

窓から上空を見て、セルリアンの位置を確認した時、

 

「…………ッ! セルリアンが!」

 

ヘリのセルリアンは速度を上げ、バスの前方へと躍り出ました。

バスの速度は落ちていません。セルリアンが速度を上げています。

 

カバンさんが苦虫を潰したような苦悶の表情で上を見上げます。

ヘリのセルリアンはくるりと向きを変えて、こちらを見ました。

バルカン砲の銃口がバスに向きます。

 

フュイイイイイイイイイイイイイイイイイイ――――。

 

バルカン砲が回転し始めました。甲高い音が森の中に、バスの方に、全員の耳に届きます。

 

「伏せてください!!!」

 

カバンさんが叫びました。同時に、カバンさんの手首のボスがピピーンと音を立てると、バスにフルブレーキをかけました。

タイヤがロックして土の地面を削ります。

バス後部にいた全員が転がるように前に引っ張られる中、ヘリのセルリアンはバスの挙動が予測できなかったのか、バスの少し前に、

 

ブアァァァァァァァァァァァァァァッッッ――――。

 

弾丸の雨を降らせました。

立て続けに降り注ぐ弾丸が地面を容赦なく削ります。バスの幅と同じくらいの道が、無数の弾丸によって穿たれ、窪んでいきます。

 

「ラッキーさん!」

『わかってるよ』

 

カバンさんの叫びに、ボスは再び音を立てると、今度はバスがタイヤを空回りさせながら後退していきます。

先ほどまでバスの居た位置に、弾丸が降り注ぎます。後退するバスをとらえようと、ヘリのセルリアンのバルカン砲が上を向き、弾丸が縦筋状に地面を穿っていきます。

 

『させるか!』

 

バス後部でセッキーが腕を振ります。その動きに呼応して、バスの上に乗っていた数体のセルリアンが運転席の前へ躍り出ます。

四角く形を変形させ、縦と横に隊列を組みます。ガッチリと隙間なく壁を形成したセルリアンに、ヘリのセルリアンの銃弾が襲い掛かりました。

 

『堪えてくれよ…………』

 

セッキーの呟きに返事をするかのように、撃たれ続けているセルリアンからヒュルルルルオオオオと声が上がります。

弾丸はセルリアンを貫通することはないようです。セルリアンの石も、弾の当たらない後方に位置しているので、しっかりと防弾できている様子です。

 

ヘリのセルリアンが攻撃を止めました。

ヒュルルルル――――とバルカン砲が空回りして、やがて止まります。

 

一瞬だけ、辺りに静寂が訪れました。風がこの葉を揺らす音が聞こえてきます。

 

『カバン、出して!』

 

セッキーがセルリアンをバスの天井に乗せると同時に、カバンさんは今度はアクセルを全開に、バスを発進させます。

 

その時でした。

 

バスの前方に、人影が飛び出てきました。カバンさんはブレーキを目一杯踏み込んで、バスを停止させます。

すんでのところで止まったバスの前に立つ人物は、

 

「……………………」

 

じっと、バスのほうを睨んでいました。

 

その、飛び出した人物を見てカバンさんが息を飲みます。

バス後部にいた全員も、飛び出してきた人物を見て、口を開きました。

 

そこに立っていたのは、黒いタンクトップに迷彩柄のパンツ。ゴツい軍用ブーツを履いてすらりと背の高い、栗色の髪の毛を肩より少し長いくらいに伸ばした女性です。

腰にはたくさんのポーチがついていて、両腰にはホルスターに収まった旧式のリボルバーが二丁、収まっていました。背中には木製の、スラリと長いボルトアクションライフルが一丁提げられています。

 

灰色の瞳は切長で、まるでこれから狩りをする猛獣のように、冷たい視線をバスに向かって投げつけていました。

 

そこにいたのは、

 

「れ、レミアさんなのだぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

紛れもなく、アライさんとフェネックの探していた、レミアでした。

 

しかし、

 

「待ってください、様子が…………」

 

カバンさんが張り付いた喉から思わず声を出すほどに、レミアの様子は様変わりしていました。

 

冷たい目、気だるげな立ち方、そして何よりも右手に違和感を覚えます。

レミアの右肩には包帯が巻かれていました。その包帯の下、伸びている右腕が、もう、元の色がわからないほどにドス黒く変色しています。肩口から指先まで、まるで闇を纏ったかのように黒いそれは、ビーストが全身から漂わせていたように、黒い瘴気が立ち上っています。

 

黒い部分は右腕だけではありません。

よく見ると両腰につってあるリボルバーも、背中に背負っているボルトアクションライフルも、まるで闇に漬け込んだかのように真っ黒です。そして右腕と同じく黒い瘴気をまとっていました。

 

「………………」

 

バスをじっと見るレミア。微動だにせず、声も発しないレミアのその様子に、レミアを知っている全員が異様な空気を感じとります。

 

アライさんがそれに耐えかねたのか、大きな声でバスから呼びかけます。

 

「レミアさん! 早くバスの乗るのだ! そこにいたらセルリアンの攻撃をくらってしまうのだ! 危ないのだ! 早く乗――――」

 

アライさんが言い終わるよりも先に、レミアは右腰からリボルバーを抜いて()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ッ!!!』

 

突然のレミアの行動でしたが、反応できたセッキーの動きは早かったです。

天井に登っていたセルリアンのうち、一番前にいた一体を即座にレミアとカバンさんの間に滑り込ませました。

レミアがリボルバーを抜いたのと、セルリアンが間に入ったのが同時です。

 

レミアの、何の躊躇いもない銃弾は、セルリアンに阻まれました。カバンさんは何が起きたのか理解できない表情で、その場に座っています。

 

『カバンさん! バスを出して!』

 

セッキーが叫びます。しかしその言葉にカバンさんが反応するより早くに、レミアに動きがありました。

バスの右側へ走ったレミアが、そのまま、躊躇なくバスのタイヤをリボルバーで撃ち抜きます。

 

右側にあったすべてのタイヤに、吸い込まれるようにして弾丸があたります。なすすべなくタイヤは破裂、あるいは裂けて、空気が抜けます。

 

「え、え…………レミアさん? 何して…………」

 

カバンさんの言葉も虚しく、レミアはバスの右側に佇んだままぼうっと立っては、恐ろしく冷たい目でバスの後部に乗る一行を睨め付けます。

 

バスのタイヤが撃ち抜かれ使い物にならなくなりました。

こうなってはもう、バスに乗って逃げることは叶いません。その事態を飲み込めたセッキーとフェネック、そしてダンザブロウダヌキの次の動きは早かったです。

 

『バスから降りて!』

「走って逃げるよー」

「みなさん! 早く降りてください!」

 

言いながら次から次へと降りていきます。サーバルが、ヒクイドリが、アライさんが、フェネックが、ダンザブロウダヌキが、そしてセッキーが降りようとした時。

 

「ガァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」

 

耳を張り裂かんばかりの咆哮を上げて、ビーストがセッキーへと爪を振るってきました。

 

セッキーはすんでのところでしゃがみ爪を避けます。続け様にビーストは爪を振るってきました。狭い車内で縦に、横に、バスの座席を切り裂きながらセッキーへと迫ります。

 

『くッ…………んのッ!!!!』

 

ビーストの無茶苦茶とも言える攻撃を何とかいなし、受け流し、まともに食らわないよう避け続けたセッキーは、攻撃の間にバスの外へと躍り出ました。

 

ビーストが、バス後部の出入り口を大きく変形させるほどに爪で切り裂いたのち、バスから飛び降ります。

 

「グルルルルルルルルルルルルッッ――――」

 

ビーストが低く唸ります。左脇腹に集まっていたサンドスターは、いつの間にかなくなっていました。

それの意味するところはつまり、サンドスターが傷口を修復し終わってしまったということ。

 

完全に、ビーストの復活を意味していました。

 

レミアがセッキーたちを睨みます。

ビーストが、セッキーたちに唸ります。

バスの前方上空では、ヘリのセルリアンがホバリングして、セッキーたちにバルカン砲を向けています。

 

アライさんが、小さく、震える声で呟きます。

 

「これ…………ひょっとしなくてもまずいのだ…………」

 

拳を構えたままのセッキーが、ビーストを見て、レミアを見て、ヘリのセルリアンを見上げて苦しそうに声を漏らします。

 

『同時か…………すべて同時に来るか…………』

 

狂爪を振るうビースト。

正気を失ったレミア。

襲い掛かるセルリアン。

 

三つ、同時に、災厄がセッキーたちに降り掛かります。

 

どうすれば逃れられるのか。どうすればこの危機を脱出できるのか。

額に汗が一筋流れます。セッキーは考えて、考えて、考え抜きましたが。

 

どう考えても誰かは倒れる。犠牲者が出る。そのような未来しか見えませんでした。

 

ビーストの爪に引き裂かれるか。

レミアの銃弾に倒れるか。

ヘリのセルリアンのバルカン砲に射抜かれ、食われるか。

 

どうすればいい。

どうすれば切り抜けられる。

 

どうすれば――――どう、やっても。

これはもう、どうしようもないのではないか。

 

焦り、焦燥、後悔、諦め。

どう転んでも、ここから、この状況から犠牲なしで抜け出せる気がしない。

 

あるいは、自分を犠牲にすれば。

ビーストの攻撃とレミアの攻撃を自分に集め、残りのフレンズをヘリのセルリアンから守りながら逃げれば。

 

いや、それも、もうバスを失った今では叶わない。逃げ切れるわけがない。

そもそもバスより早い移動を可能にするヘリのセルリアンからどうやって逃げれるというのか。

 

じゃあ追い払うか。どうやって。

ビーストとレミアの攻撃を掻い潜りながらヘリのセルリアンを、レミアの銃を借りて撃退するか?

 

無理だ。そんなことができるほどボクは強くない。

当然、他のフレンズにもそれができるはずもない。

 

もう、どうにもならないのか。

 

セッキーは、どうしようもなく諦めてしまいそうな局面でしたが、最後まで考えて考えて考え抜きました。

 

考えて、考えて、どうすれば抜け出せるか、わずかな時間、わずかな硬直時間で考えましたが、事態はもうどう転ばせることもできなくなっていました。

 

ビーストが地面を鋭く蹴り込みます。狙う先はセッキーのようです。

 

レミアが右手と左手それぞれにリボルバーを抜きます。両手に構えて狙いを定めました。狙う先はカバンさんとサーバルのようです。

 

ヘリのセルリアンがバルカン砲を回し始めました。狙うは辺り一面、全員を蜂の巣にするつもりのようです。

 

同時でした。

災厄は同時に、無慈悲に、容赦無く、セッキーたちへと降り掛かりました。

 

(終わった、のかな)

 

ビーストの攻撃に合わせるように構えながらも、セッキーは内心で泣きそうになる自分を否定できませんでした。

 

ビーストの攻撃を止めても、レミアの攻撃もヘリのセルリアンの攻撃も止められない。なすすべがない。

 

セッキーは何とはなしに、もうすがれる自分も他人もいないと判断し、残るは一つ、神にのみ祈りました。

 

願わくば、もしいるのなら、助けてくださいと。

この状況を打開できるのなら、どうか手を、お力を貸してください、と。

 

そんなことを願いました。そして。

 

「――――いいよん。助けてあげる」

 

どこからともなくそんな声がしたと同時に。

辺りに無数の葉っぱが舞い散りました。空間を埋め尽くさんばかりに、大小様々な葉っぱが狂ったように舞っています。

 

その葉が、ビーストの体を押しとどめました。

レミアの銃弾を止めました。

ヘリのセルリアンのバルカン砲を動かなくしました。

 

何が起きたのか、セッキーも、他の誰も、わからず、思い付かず、あたりをただただ見渡します。

 

そして、ひと回り大きな葉っぱの渦が出来上がったかと思うと、中から一人のフレンズが現れました。

 

焦茶色のセーラー服、裾や端は擦り切れてボロボロになっています。

首の後ろにはこれまた年季の入った笠が一つ、ぶら下がっています。

右の手には白い大きな徳利が一つ、縄で吊られています。808と書かれた文字がよく目立っています。

 

現れたフレンズは、不思議に光り輝くブルーの瞳を気だるげに細めながら、小さく微笑むと口を開きました。

 

「二つまでならどうにかできても、三つになると途端にダメになる。両手に抱えられるのは二つまでだからね。そうなると神に祈り出す。助けてくださいと。…………ふふ、いいよ、そのために私がいるからね。助けてあげよう――――イヌガミギョウブ、ただいま推参」




次回「かみさまのふれんず」

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