【第二期完結】けものフレンズ ~セルリアンがちょっと多いジャパリパーク~   作:奥の手

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第十五話 「vs.ビースト」

『そう易々とやられると思わないでね』

 

真正面から間合いを詰めてきたビーストに対して、セッキーは腰を落として上段への回し蹴りを放ちました。

 

「ガァッ!」

 

ビーストはそれを直前で止まり回避、続け様にセッキーの頭部目掛けて爪を振るいます。

左右から繰り出される瞬息の間の攻撃を、セッキーはその場にしゃがむことで回避しました。

しゃがんだ姿勢そのままに、今度はセッキーが足払いを仕掛けます。

 

ビーストの重心の乗った右足を払います。流石のビーストもこれは避けられず、セッキーの右足によって体勢が崩されますが、ビーストはそのまま上体柔らかく地面に手をつき、二転三転と転がってセッキーとの間合いを開きました。

 

「グアァァァ!」

 

空気を震わせてビーストが吠え散らかします。

セッキーの上段への攻撃を見切り、足払いをくらいながらも柔軟に身を捩って体勢を立て直すその様に、セッキーは、

 

(かなり強い。戦い慣れてるし、体も柔らかくて、おまけにタフだ。どう考えてもレミアより厄介だぞ)

 

ありし日、レミアと本気で戦った時のことを思い出します。

ビーストは銃こそ使ってきませんが、体術のみでも計り知れないほどの強さを持っているとセッキーは内心でほぞを噛みました。

 

ビーストが何を考えているのか。

何を基準にしてフレンズを襲っているのか。

これから何を目的に動くのか。

 

そして、いつまでこうして足止めを食らっていてくれるのか。

 

セッキーは読めませんでした。ただもうしばらくはこうしてここに止まってくれと、せめてカバンさんたちが逃げ切れるまでここにいてくれと願います。

自分がどうやって離脱するかはこの際考えていませんでした。

ただ時間を稼ぐ。その一点のみです。

 

「グルルルルッッ…………」

 

初手の奇襲攻撃に続き、突進からの上段への爪での攻撃も避けられたことにまがりなりにも警戒しているのか、それとも本能で慎重になっているのか、ビーストはしばらくセッキーと睨み合っています。

 

(もうすぐだ…………来た!)

 

膠着状態の中、先に動いたのはセッキーでした。

ビースト目掛けて一気に間合いを詰めつつ、右手を折ります。その瞬間。

 

ビーストの左側面に、赤色のセルリアンが突撃しました。

セルリアン本体による体当たり攻撃。

前からはセッキーが、左からはセルリアンが迫っている状況で、ビーストがとった行動は、

 

「ガアアアァァァァッッ!!!」

 

吠えながらセルリアンを()()()()()()()()()()()()()

石のある位置まで、本体を切り裂いて石を粉砕しました。

 

(なんだとッ!)

 

セッキーは間合いを詰める足を止めずに、しかし驚愕の表情は隠せません。

ビーストは今、左を向いています。隙が生まれました。この機会を逃すほどセッキーは弱くありませんでした。

 

思いっきりビーストの横腹めがけて拳を捻り込みます。体幹を固定して身を捩りながら繰り出した突きは瞬きの間にビーストの横腹を捉えて、めり込み、ビーストの体を浮かせました。

 

(取ったッッ!!)

 

確かな手応え。

ビーストの横腹にある内臓に確かにダメージを与えた感触と共に、ビーストがよろめきながら二歩三歩と後退します。

 

『はぁぁぁぁぁッッッ!!!』

 

セッキーはその隙を逃しませんでした。攻撃が一度通ったのならば、二度目、三度目と連攻撃を叩き込む姿勢です。

ましてビーストほどのタフネスをもつ敵を、一撃で沈められるなどとは思っていません。

 

連撃を叩き込む。ここで畳み掛ける。

確かなダメージを負わせたと確信したセッキーは、よろめくビーストの頭部目掛けて刈り取るように上段蹴りを放ちます。

 

しかし。

 

ビーストはその蹴りを左手で止めました。頭部に当たる寸前で受け止め、セッキーの細い足を掴みます。

 

(まずッ――)

 

すぐさまセッキーは対処行動。軸足である左足を思いっきり地面に突き立て、止められた右足を力で捻り込みます。

しかしびくともしません。完全に、がっしりと掴まれた右足は抜くことも振り切ることもできません。

 

『くッ……!』

 

次の瞬間。

ビーストはセッキーの喉を右手で掴み、持ち上げ、180°体を回転させると後ろにあった木へ叩きつけました。

 

右手は喉を掴んだままです。メリメリと木に押し付けられながら、宙へと持ち上げられてしまいます。

 

叩きつけられたことで肺の空気が一気に無くなったセッキーは、呼吸することもままならぬまま喉を締め上げられ、吊り上げられてしまいました。

 

「が…………こ、の…………」

 

目の前がチカチカと瞬きました。酸素が頭に届かず、手足の末端が痺れ始めます。

足を上げてビーストの顔を蹴り飛ばしますが、全くダメージになっていないのか、ビーストの右手が弱まる気配はありません。

 

(まずい…………意識が…………)

 

途絶えそうになる意識をなんとか繋いで、セッキーは、

 

(い、け、セルリアン!)

 

集まりつつあったセルリアンをけしかけます。ビーストの背後から触手を持ったセルリアンに、首へ巻き付くよう指令。

すぐさま、水色の触手を持ったセルリアンがビーストの首へ巻き付きました。

 

「グッッ!」

 

ビーストが短く吠えます。

首へと絡みついた触手が後ろへ引っ張るように締め上げ、ビーストの上体をそらします。

流石のビーストもこのままでは耐えられないと察したのか、セッキーから右手を離し、上体を悶えさせながら振り向きます。

そして振り向き様に首へと絡みついていたセルリアンの石を叩き割りました。石へ直接攻撃したのではなく、本体を爪で切り裂きながら石を攻撃しています。

 

(レミアの銃でも貫けないセルリアンの体をああも易々と…………ビーストの爪の攻撃は、レミアの銃よりも威力があるということ。あれに当たったら耐えられない)

 

酸欠で意識が飛びそうになる頭を必死に振って元に戻したセッキーは、ビーストの爪に警戒心を抱きます。

 

ビーストは少しの間合いを開けてセッキーの方を見ます。周囲にはセルリアンが集まっています。

そのセルリアンへ注意を示し、目が忙しなく動いています。

 

対してセッキーは締め上げられた喉を手でさすりながら、ふらふらと立ち上がって地面を踏み締め、ビーストと対峙します。

 

夕刻の暖かな風が、二人の間を吹き荒びました。衝突と衝突の間のわずかな時間。

安堵からは程遠い警戒の間。お互いがお互いの隙を見つけてはそこへ滑り込むようにして攻撃を繰り出す、一瞬の油断もままならない死闘の間。

 

静止していた時間が動き出したのはビーストの方でした。

セッキーから目を離した次の瞬間には、周囲を囲っていたセルリアンのうちの一体に襲い掛かり、瞬時に砕いたかと思うと、

 

『まずいッ!』

 

ビーストは走り出しました。カバンさんたちの逃げた方角へ。

ビーストの腕力はさることながら脚力もそこらのフレンズの比ではありません。

峡谷で見せられた瞬足が、この森でも発揮されてしまいます。

 

セッキーは歯を食いしばって後を追いますが、まず追いつけそうもありません。

カバンさんたちが逃げ切れるだけの時間が作れたでしょうか。

 

いいえ。まだそれほどの時間が経っているとも思えません。

 

であれば、待ち受けているのは最悪の事態。

カバンさんたちが危険です。願わくば、ヒクイドリとサーバルが連携し、互角に持ち込んで時間を稼いでほしい。

 

どんどんと遠くなっていくビーストの背中を必死に追いかけながら、セッキーは祈りました。

 

 

カバンさん、サーバル、ヒクイドリ、ダンザブロウダヌキの四人はバスの方角へと駆けていました。

森の中にできた細い道を全力で駆け抜けます。落ち葉が舞い、土が捲れ、木の枝が蹴り飛ばされます。

 

「カバンちゃん! もうすぐだよ! 頑張って!」

「う、うん…………ハァ…………ハァ……大丈夫、このまま走って!」

「頑張ってくださいカバンさん!」

 

ダンザブロウダヌキは再びハクトワシの姿になって、地面スレスレを飛んでいます。

カバンさんの息が上がっています。乱れた呼吸をなんとか整えようと、走りながらも息を意識的に大きく吸い、大きく吐き出します。

その間にも足は止めません。目線は先頭を行くヒクイドリの背中を追いかけています。

 

ヒクイドリはもともと足が丈夫なのか、そしてセルリアンハンターとしての活動から体力が豊富にあるのか、息切れひとつしていません。ちらちらとサーバルとカバンさんの方を振り返っては、ちゃんとついてきていることを確認しつつ速力を落とすことなく走り続けます。

 

「――――! 見えたぞ!!」

 

ヒクイドリが鋭く叫びます。

森の中の開けた場所。木々の生えず、お日様の光が直に差し込み照らし出されているその場所に、陽の光を浴びるバスが停められています。

 

四人は無事、バスの元へと走ってこられました。カバンさんは息も絶え絶えで、汗が玉のように額から流れ落ちています。

膝に手をつき、はあはあと荒い呼吸を繰り返しながら、バスの横に止まりました。

 

「カバンちゃん! この後はどうするの? セッキーはまだ戦っているんでしょ?」

 

サーバルの息は上がっていないようです。バスの後部入り口に手をかけながら、呼吸を整えようとしているカバンさんに振り返ります。

 

カバンさんは何度か唾を飲み込んで無理やり息を整えると、

 

「セッキーさんは、逃げろって言ってた。どこまでかはわからないけど、このままここにいるとボクたちも危ないと思う。バスを動かして、遠くに逃げて、後からセッキーさんを探そう」

「わかった! すぐに出発しよう!」

 

そう言ってサーバルは後部に乗り込みました。カバンさんは横にいたヒクイドリとダンザブロウダヌキの方を向いて、

 

「ヒクイドリさんとダンザブロウダヌキさんも乗ってください。一緒に遠くへ離れましょう」

「あぁ、わかった――――が、どうやらそれは叶わないようだ」

 

ヒクイドリが姿勢を低くしました。次の瞬間には、地面を強く踏み込み、鋭く飛び出したかと思うと、

 

「ガァァァァァァッッッ!!」

「かかってこい!」

 

ビーストの、大きく振りかぶって振られた爪を足で蹴り飛ばして止めました。

ビーストの爪はカバンさんに向けられていたようです。振り返って、すぐ間近で爪と足を交錯させている二人に、カバンさんは腰の力が抜けそうになるのをなんとか堪えて後ろへ下がりました。

ダンザブロウダヌキはすぐさまバスの後部へと入り避難します。中からカバンさんを呼ぶために叫びます。

 

「カバンさん! こっちへ!」

「そんな…………セッキーさんは、セッキーさんはどうなったんですか…………」

 

しかしダンザブロウダヌキの声は、カバンさんに届きません。

カバンさんの顔から血の気がひいていきます。

 

まさかやられたのか。死んでしまったりしていないだろうか。

そんな悪い予感が頭の中を支配しては、もう冷静ではいられません。

 

セッキーさんがやられたかもしれない。じゃなきゃこんなに早くビーストがここに来るわけがない。

このまま戦ったら、ヒクイドリさんも、サーバルちゃんも、やられてしまう。

 

もう二度とお話しできなくなる。

一緒に遊ぶことも、ジャパリまんを食べることも、お出かけすることも、冒険することもできなくなる。

 

そんなの――――そんなのいやだ。

どうすればいい。どうすればこのビーストを止められる?

どうすれば追い払える?

 

前はどうやった?

何をして追い払った?

 

「そうだ…………レミアさんの…………!」

 

カバンさんの目の前では、ヒクイドリとビーストが爪と足を激しくぶつけて戦っています。

周囲の落ち葉が蹴り飛ばされ、木の枝が踏みしめられ、土が辺りに撒き散らされています。

 

その激戦のすぐ横を抜けて、カバンさんはバスの後部へ。レミアのポーチへ、そこにある、ホルスターに収まっている壊れていないリボルバーに手をかけます。

 

「カバンさん…………? 何を……?」

「まってて、ヒクイドリさん!」

「うみゃみゃみゃみゃー! ヒクイドリ! 挟み撃ちだよ!」

 

ヒクイドリとビーストの戦いにサーバルも駆けつけます。バスから飛び降りて、ヒクイドリへと爪を奮っていたビーストの背中へサーバルは爪を立てました。

 

しかし、サーバルの爪はビーストの背中へ届く前に、ビーストの腕に遮られます。まるで背中に目がついているかのような反応速度で攻撃を止めたビーストは、そのまま邪魔者を排除すべくサーバルを蹴り飛ばしました。

 

蹴りが腹部へとめり込みます。サーバルは低い声を漏らしながら体をくの字に折り、そのまま後ろへと飛びました。

 

「サーバルちゃんッ!!」

 

吹き飛ばされるところを目にしたカバンさんから悲鳴が上がります。

しかしサーバルは後ろに飛んだ体をくるりと捻って、柔軟に、しなやかに落ち葉の上へと着地しました。

 

蹴りを喰らって、体が後ろへ飛ばされたと同時にダメージを受ける前に自分から飛んだ模様です。見た目ほど激しいダメージは受けておらず、すぐさまサーバルは走り出して戦線へと復帰しました。

 

ヒクイドリがビーストのヘイトを集めています。その隙を縫うようにサーバルが爪で攻撃を仕掛けます。

サーバルの攻撃もヒクイドリの攻撃もビーストには届いておらず、直前で止められるか受け流されているようでした。

 

が、しかしそれでいいとカバンさんは思いました。時間が稼げている。ビーストがこちらから意識を外して戦ってくれている。

 

ならば。

この隙に。

 

カバンさんは決意を固めました。

 

これが当たればどうなるか、カバンさんは直接見てきた訳ではありません。

大きな音と、煙が出て、ものすごい速さで鉛の球が飛んでいく。

当たったものを粉々にして破壊する。

そう、アライさんとフェネックに聞いています。

 

とても危険なもの。でも使い方を正しくすれば身の安全を守ってくれる頼もしい道具。

いつの日かレミアさんはそう言って教えてくれました。

 

どうか、ここにいるフレンズ皆さんの身を守ってください。

誰に対してかわかりませんが、カバンさんはそう祈って銃口をビーストに向けます。

 

ビーストは激しく動いています。狙いが定まりません。両手でしっかりと握って、一度だけ撃ち方を教えてもらった照明弾と同じようにして持って、狙って、引き金に指をかけます。

 

「お願いします………………止まって……っ!」

 

願うように。

祈るように。

これ以上ビーストが、他のフレンズを襲わなくていいように。

誰も怪我をしなくて済むように。

 

カバンさんは引き金を引きました。

 

すどん。

 

腹の底から響いてくる発砲音が、森の木々にこだまします。

驚いた鳥たちが一斉に樹木から飛び立ちました。

 

ビーストは、

 

「ガ…………」

 

立ち止まっています。ヒクイドリとサーバルが、ビーストから距離をとって注意深く睨みつけています。

 

ビーストの足がもつれました。その場で二歩三歩とたたらを踏みます。

 

ビーストの左腹部に、じわりと赤いシミが広がりました。左の脇腹です。黒いセーターを身につけているビーストでしたが、その黒色を染め上げていく赤黒い血が、広がっていきます。

ビーストは傷口を押さえました。信じられないと、自分に起きたことを受けれられないかのような顔で、そのままふらふらとよろつきます。

 

「あ…………」

 

ビーストと、カバンさんの目が合いました。

その目を見て。

カバンさんは。

 

「ッ!」

 

リボルバーを右手に持ったまま、ビーストに駆け寄ります。

 

「カバンちゃん!」

「やめろカバン!」

 

ヒクイドリとサーバルが悲鳴を上げるかのように叫びましたが、カバンさんは足を止めずビーストのもとまで駆け寄ります。

 

ビーストは、駆け寄ってきたカバンさんにもたれかかるようにして倒れました。

カバンさんが体を抱き抱えます。ビーストの体からはいまだに薄く黒い瘴気が立ち上っていましたが、カバンさんはお構いなしに抱き上げると、その場に座り込みます。

 

ビーストの頭を抱えて持ち上げます。抱き込むようにしてその瞳を覗きこみます。

 

「…………ごめんなさい」

 

カバンさんは今にも泣き出しそうな声で、それだけを絞り出しました。

サーバルとヒクイドリ、ダンザブロウダヌキも、警戒はとかないままビーストの周りを囲みます。

 

ビーストは、力のない目でカバンさんを見ていました。

笑っているわけでも、泣いているわけでも、怒っているわけでもありません。

ただ無表情で、しかし目だけはカバンさんを見たまま離さず、カバンさんに抱かれていました。

 

『…………仕方がないよ。そうするしかない』

 

その声に全員が振り返ります。そこには、たくさんのセルリアンを連れたセッキーが歩いていました。みんなのところへと向かっています。

サーバルが、声を震わせながら、

 

「カバンちゃんが…………カバンちゃんが…………」

『言わなくても大丈夫。銃声は聞こえてた。こうするしかないよ。レミアも、きっとこうしてた。間違ってない』

 

サーバルは唇を震わせながら俯きます。

カバンさんも、ヒクイドリも、何も言えないまま、ビーストを見遣りました。

 

ビーストは、力無い目でカバンさんを見ていましたが、やがて目を閉じると、体の力を抜いてだらりと腕を垂らしました。

 

『…………これ以上、この子に他のフレンズを襲わせないためにも、こうするのが最善だよ。願わくば、安らかに眠ってほしい』

 

カバンさんはこくりと頷き、ビーストを地面に下ろしました。

その、ビーストの顔を見て、

 

「あ…………れ?」

 

小さく呟きます。次に、傷口を見ます。そこには、虹色のキラキラとした粒子が集まっていました。

左脇腹に空いた、どす黒く血で染まっているその場所に、輝かしいまでのサンドスターが集まっています。

 

「こ、これは、一体…………?」

「サンドスターが……集まっていますね。もしかすると…………傷を修復しているのかもしれません」

 

ダンザブロウダヌキが掠れるような小さな声でそう呟きます。

セッキーがビーストの口元に手をやります。

 

『呼吸してる。死んでないよ』

「!」

 

カバンさんの表情が晴れます。パッと上げた顔には、笑みのようなものも浮かんでいました。

セッキーはダンザブロウダヌキの方へ向き直りながら口を開きます。

 

『傷が修復されたら、また暴れ出すかもしれない』

「そうなる前にどうにか手を打ちたいですね……ただ、並の拘束具では逃げ出してしまうでしょう」

『セルリアンで、囲んでおこうか。手足も触手で縛って』

「効果があるかはわかりませんが、何もしないよりはいいでしょうね。そうしましょう」

 

全員が立ち上がり、セッキーがセルリアンを呼び寄せた、そのときです。

 

「ああああああああああ!!!!! やっぱりいたのだ! 全員いるのだぁ!」

 

木々の間、草をかき分けながら。

 

「フェネック! みんないるのだ! アライさんの鼻はやっぱり偉大なのだ!」

「はぁ…………はぁ…………やー、まずいねこれは。いやラッキーなのかなー…………」

 

元気な声で叫ぶアライさんと、息を切らせたフェネックが二人して出てきました。

 

『な、なんで? レミアを探してたんだよね?』

「そうなのだ! レミアさんを探してたのだ! そしたら――――」

 

アライさんの言葉を遮るように、あたりに轟音が轟きました。

それは。

まるで蜂の羽音のように一つながりになっていて。

そして、その音を聞いたのは初めてではありませんでした。

 

『ッ!!』

 

集めていたセルリアンをセッキーはすぐさま密集させて周囲を固めます。

その直後。

 

集まったセルリアン目掛けて無数の弾丸が降り注ぎました。

 

「こいつに! 追われて! 逃げてたのだ! やばいのだぁぁぁぁぁ!!!」

 

アライさんの声が銃声に負けじとこだまする森の上空に。

 

テールローターを復元した、漆黒のヘリのセルリアンが、コックピットの目玉をぎょろりと地上に向けました。

 

 

 




次回「vs.セルリアン」

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