【第二期完結】けものフレンズ ~セルリアンがちょっと多いジャパリパーク~   作:奥の手

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第十四話 「やまとふぃるたー!」

『ただいま! ギリギリ間に合ったよ。危ないところだった』

 

ダンザブロウダヌキとヒクイドリを連れたセッキーは、カバンさんとサーバルの待っているバスへと戻りました。

 

「お帰りなさい、セッキーさん」

「おかえりー。あ、そっちにいるのがダンザブロウダヌキだね? どっち?」

『こっちがダンザブロウダヌキ。こっちがセルリアンハンターのヒクイドリだよ』

 

紹介を受けて、ダンザブロウダヌキとヒクイドリが頭を下げます。

 

「ダンザブロウダヌキです。危ないところを助けていただきました」

「ヒクイドリだ。感謝してもしきれない。命の恩人だよ」

 

二人して微笑むダンザブロウダヌキとヒクイドリに、カバンさんとサーバルも間に合ってよかったと安堵の笑顔を浮かべます。

 

「初めまして、カバンと言います。それでこっちが」

「サーバルキャットのサーバルだよ! よろしくね」

 

よろしく、とダンザブロウダヌキとヒクイドリも頭を下げます。

顔を上げたカバンさんが、セッキーの方へ向き直りながら質問を投げました。

 

「今、どんな様子なんですか?」

『森に点在しているセルリアンはおおむね支配下に入ったかな。でもどうやらまだまだ新しいのが生まれているみたい』

「それは…………大元からなんとかしないと、キリがないですよね」

『だね。そこでなんだけど、ダンザブロウダヌキが仮説を立ててくれてね」

「仮説ですか?」

『山のフィルターが外れて、セルリウムが大量に放出されているのが今回のセルリアン騒動の原因じゃないかって』

「そんなことが……それじゃあ、フィルターを張り直さないと、ずっとセルリアンが出続けるってことですか?」

『可能性は高いんだ。だから、今から僕たちでフィルターを張りなおすために、四神の再配置をしようと思うんだけど、場所がね」

 

カバンさんがハッとした顔で頷きます。

 

「四神の場所、ゴコクエリアのはわかりませんね。ラッキーさんも…………」

 

手元の基幹部品に目線を落としたカバンさんですが、返ってきた答えは、

 

『わからないよ。音声データも残されてないね』

「ですよね……」

 

カバンさんは少し肩を落としたようにつぶやきます。

 

「どうするんですか?」

『大丈夫。ちょっと思い当たる節というか、調べれそうな人をあたってみるから』

 

そういうとセッキーはバスに乗り込み、後部座席の荷物置き場からレミアのポーチを引っ張り出しました。

中から通信機を取り出します。

 

ダンザブロウダヌキが通信機を見て、

 

「研究所のものとは違いますね? どなたのですか?」

『これは僕たちの旅の仲間で、今は行方不明になってるレミアって子の通信機なんだ。これの繋がる先がボクの言う〝思い当たる人〟だよ』

 

そういうとセッキーは通信機の電源を入れて、回線を繋ぎました。

周波数はいじりません。どうやら前回繋いだ周波数がそのまま残っているので、このままで繋がるようです。

 

『あー、もしもーし。聞こえますかー? どうぞー?』

 

しばらくのノイズ音の後、雑音混じりに、

 

『はいはい。こちらベラータです。その声は誰だろ…………あ、セッキーちゃん? かな?』

 

通信機の向こうの人物が返事をしました。

 

 

『――――というわけで、ハッキングを仕掛けて四神の位置を割り出して欲しいんだ』

 

セッキーの説明とお願いに、通信機の向こうから返ってきた答えは、

 

『時間はちょっとかかるかもしれませんが、いいですよ! やってみましょう。なんせセッキーちゃんのお願いですからね』

『よろしく頼むよ』

『任せてください。あぁ、そうだ、それと』

 

ベラータは快く承諾してから、一呼吸間を置いて言葉を続けました。

 

『今その場にレミアさんがいないということは、何か起きてるんですね?』

 

その言葉に、セッキーは一瞬言い淀みます。

流石に鋭い状況判断です。隠すようなことでもないので、分かっている範囲でレミアに起こったこと、そしてレミアが行方不明になっていることを伝えます。

 

『そうですか…………やられるような人ではないと信じたいですが、状況が状況ですね。行方がわからないとなればサポートのしようがありませんし…………そうですね、俺の方でも監視カメラを調べてみます。何かわかれば連絡するので、通信機の電源を入れておいてください』

『わかった。頼むよ』

『お安い御用です。俺にとってレミアさんは大切なメッセンジャーですからね。ジャパリパークの様子を伝えてもらうという大事な役目がありますから、帰ってきてもらわなければ俺も困ります』

 

ベラータの言葉にセッキーは若干の苦笑いを浮かべながらも、捜索に手を貸してくれるということに素直に感謝しました。

 

『それじゃあベラータ、まずは四神の位置特定をお願いするよ』

『ええ、同時並行してレミアさんも探します。しばらくしたら連絡しますね』

『よろしく頼んだ』

『頼まれました』

 

通信はそこで終わりました。電源は入れっぱなしにして、いつでも受信できるようにしておきます。

セッキーは、レミアのポーチをそのまま腰へと巻き付けて、通信機を収納しました。

 

『とりあえずこれで四神の位置は割り出せると思う。時間もあるし、ボクたちは山へ登ろう』

 

セッキーの言葉にダンザブロウダヌキが頷きます。

 

「そうですね、まずは山へ登らないと。皆さん行きますか?」

「手があった方がいいだろう。四神? とやらを探すんだろ?」

「そうです。人数はいた方がいいので、カバンさんとサーバルさんにも手伝ってもらえたらと」

「そのつもりだよ! ね、カバンちゃん!」

「はい。ボクたちも同行して四神の再配置を手伝います」

「一回やったことあるからだいじょーぶだよ! 任せて! 高さが大事なんだよねー」

 

サーバルの得意げな顔に、ダンザブロウダヌキとヒクイドリは安心したように笑みをこぼしながら山を見上げました。

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

 

それから数時間。

 

山の山頂へ続く道を、森の中を抜けて、急斜面を登っている一行です。

山頂までの道はキョウシュウエリアの山と同じように、途中から木も草も生えないような土と岩だけの道になっていました。

 

森林限界の高さまで登っているというよりは、どこか人為的にそうなってしまったかのような岩と土だけの道です。

セッキーは、もしかするとこの山で昔、何か大きな戦いがあったのかもしれないなぁなどと思いながら歩みを進めていました。

 

「結構来たね、そろそろ休まない?」

 

サーバルの一声で、ちょっと休憩することとなりました。

カバンさんがカバンの中からジャパリまんを人数分取り出して渡していきます。

 

山の中腹よりさらに登った場所。下を見れば随分と高い、見晴らしの良い場所です。

 

地平線の向こうにはうっすらと隣の草原地方の草原が見えています。そこへ続く森の中には、所々に動きを止めたセルリアンが見えています。赤や水色などの目立つ色ですから、すぐに発見できました。

 

「セルリアンはどこから生まれているんだ?」

 

ヒクイドリがジャパリまんを齧りながらダンザブロウダヌキに聞きました。

ダンザブロウダヌキもジャパリまんを一口齧りながら、

 

「山の頂上、から来ていると予想していたのですが、特定はできません。もしかすると漏れ出したセルリウムが山の麓まで流れて、そこで反応してセルリアンになっている、ということも考えられます」

「そうか。あぁ、そういえばここに来るまでにセルリアンはいなかったな」

「ええ、そうです。なので麓で生まれている可能性が高いですね」

『どこで生まれても、近くにボクの配下のセルリアンがいればそのまま仲間にできるから、心配はいらないよ』

 

セッキーの言葉にヒクイドリは少し苦笑いをしながら、

 

「まったく、強すぎる特技だな。敵わんよ」

『対セルリアン、それも黒以外にしか効かないからね。なんでも配下にできるわけじゃないよ』

「例えば、セッキーさんでも敵わないような敵となるとどういったものになるんでしょうか?」

 

ダンザブロウダヌキの問いかけに、セッキーは少し考えて、

 

『例えばそうだね、ビーストには一度負けてるし、ヘリのセルリアンも防衛戦を強いられると思う。何に対しても強気に出られるわけじゃないから、ボクもまだまだなんだよ』

「ビーストと、ヘリのセルリアンですか。確かに、あの二つの存在には今の所対抗策がないですからね」

『遭遇したら逃げること。全くそのとおりだよ』

「そうですね」

 

話している間にももぐもぐとジャパリまんを食べて、全て食べ終えた一行は立ち上がって先を目指し始めました。

出発し始めてすぐに、今度はセッキーがダンザブロウダヌキに質問します。

 

『研究所に戻ってから聞こうかなって思ってたんだけど、今聞いちゃいたいことがあるんだ』

「なんでしょうか?」

『ダンザブロウダヌキは、神のフレンズを知らないかな?』

「神のフレンズ…………ですか?」

『そう。実は僕たち、その神のフレンズを探して旅をしているんだ。何か知らない?』

「ええ、それでしたら、知り合いですよ」

『!?』

 

ダンザブロウダヌキの言葉に、セッキーは驚いて振り返りました。

カバンさんとサーバルも「ええ!」と顔を見上げてダンザブロウダヌキを見ます。

 

「知り合いというかライバルというか、まぁ、そういった感じです」

『何ていう名前なの?』

「〝イヌガミギョウブ〟という、タヌキの総帥のような立ち位置です。肩書き的には彼女は化け狸の中でも神格化されていて、いわゆる神様のフレンズに当たるのかなと」

 

ダンザブロウダヌキの言葉に、セッキーはわなわなと拳を振るわせると、その拳を天高く振り上げました。

 

『やった! やったよレミア! ついに見つけたよ!!』

 

声を弾ませて喜ぶセッキーに、ダンザブロウダヌキは微笑みながら言葉を続けます。

 

「彼女に会いたければ竹林の奥地へ向かうのが良いですよ。そこに住んでいます。ただもしかすると向こうから出向いてくれる可能性もあります」

『え、そうなの?』

「はい。彼女、趣味は釣りと酒とフレンズ観察でして。妖術を使って島中のフレンズの様子を見張っているんですよ」

『そ、そんなことできるの…………?』

「できるんですよね。なので、彼女が気になっているフレンズは観察対象ですし、そうでなくてもなんとなく島中のフレンズの動向を知っているのが彼女のすごいところでもあります。もし会いたいと強く願えば、向こうのほうから来てくれる可能性もありますね」

 

それは良いことを聞いたと、セッキーは小躍りしてしまいそうになるのをすんでのところで止めました。

なんにしても朗報です。神のフレンズ、イヌガミギョウブなるものを見つけ出せました。それに願えば会えるというおまけ付きです。

 

『早くレミアを見つけなきゃ』

「そうですね。その、レミアさんという方が会いたいんですよね?」

『うん。今はいないけど、必ず見つけてイヌガミギョウブと会わせるよ』

 

草木の生えない土と岩だけの斜面でしたが、セッキーの登る足はとても軽やかで、嬉しそうなものでした。

 

 

山頂へ近づくにつれて、周りの景色にも変化が訪れていました。

空気が妙に輝いています。空を見上げると虹色の気体がそこら中に立ち込めて、キラキラと瞬いていました。

 

「カバンちゃん! なんだかキラキラしてるね!」

「うん。これって…………もしかして、サンドスター?」

 

首を傾げるカバンさんに、ダンザブロウダヌキは頷きながら言葉を返しました。

 

「そうですね。山の火口からここ数日、常に吹き出しています。それと、あれがセルリウムですね」

 

ダンザブロウダヌキの指差す先では黒くてドロドロとした、粘度の高い液体が一筋の流れとなって斜面を下っていました。

 

「やはり、山頂から漏れ出したセルリウムが麓まで流れて、あるいは流れている途中に、無機物と反応してセルリアンが大量に発生しているようですね」

 

ダンザブロウダヌキの言葉に一同頷きます。先を目指して、歩き続けました。

 

程なくして到着した山頂には、キョウシュウエリアにもあったように結晶化した巨大なサンドスターが火口の中からそびえ立っていました。

高さにすればビル三階分はありそうです。

火口からは、虹色の気体がキラキラと瞬きながら空気中に立ち上っています。

 

サンドスターを吐き出し続けている山が、そこにはありました。

 

『それじゃあ、まずは四神を探そう。手分けして、もしかしたら地面に埋まっているかもしれないから、掘り起こす勢いでいこう』

「四神の見た目はどんな感じなんだ?」

 

ヒクイドリが首を傾げています。答えたのはカバンさんでした。

 

「見た目は石板です。キョウシュウと同じものだったら、ですけど、これくらいの大きさで、模様が描かれていました」

「なるほど、石の板を探せば良いんだな」

「はい、そうです」

 

全員が四神のイメージを共有したところで、捜索開始です。

手分けして探し始めました。

 

それから数十分後。

 

「あったよ! みんなー! こっちこっち!」

 

初めに見つけたのはサーバルでした。火口の中心からほどほど東側にあったので、おそらく青龍です。

続け様にダンザブロウダヌキが北側で玄武を、ヒクイドリが南側で朱雀を見つけました。

西側にいたセッキーとカバンさんはまだ見つけられていないようです。

 

「どこにあるんでしょうか…………」

『完全に埋まってるのかな? どこだろう』

 

困り顔で周囲を軽く掘り返していたカバンさんとセッキーでしたが、その時セッキーの腰につけていたレミアのポーチの中から、通信機が音を立てました。

通信が入っています。

 

『おや、ベラータかな? こちらセッキーだよ』

『はい、つながりましたね。こちらベラータです。頼まれていた四神の位置が特定できました』

『おお! よかった! いま三つは見つかったんだけど、白虎だけ見つからなくてさ』

『元の位置から動いている可能性が高いですが、とりあえず場所を伝えますね』

 

そう言うとベラータは、パンフレットを基準にして火口付近のエリアを振り分けて、四神の位置をセッキーに伝えました。

セッキーとカバンさんはゴコクエリアのパンフレットを持っていませんでしたが、これはダンザブロウダヌキが地図代わりに常備していたのでなんとかなりました。

 

『それじゃあ、元々の白虎の位置はエの3なんだね?』

『そのようです。その辺りを中心に調べてみてください。高さについてはわからないので、色々試してみる必要がありそうです』

『わかった。とりあえず探してみるよ』

 

そう言って通信を終えたセッキーは、全員を集めて西側の白虎の捜索に当たってもらいました。

程なくして、

 

「あった! 埋まってたよー! 匂いでわかったんだ!」

 

サーバルが白虎を掘り出すことに成功しました。お手柄です。

元々の位置からだいぶ離れたところに埋まっていました。

 

『それじゃあ、四神を元の位置に配置しよう』

 

東西南北の四神を、ベラータから聞いた座標に置きます。

 

『カバン、四神を置いたら自動的にフィルターは張り直されるんだよね?』

「そうですね。正しい位置に置いたらすぐに火口に張られていました」

『じゃあやっぱりどれかの高さが合ってないんだね』

「そういうことなら私が変身して持ち上げましょう」

 

ダンザブロウダヌキは一瞬にしてハクトウワシの姿になると、白虎の石板をもって宙に浮きました。

三メートルほど上がった途端に、

 

『お!』

「合ってたみたいですね」

 

石板が光りました。

火口を覗き込むと、音もなく幾何学的な模様が端から端まで伸びていきます。数秒で火口を覆い尽くしました。

 

『これでセルリウムも流れ出さないかな』

 

セッキーの言葉に、降りてきたダンザブロウダヌキが石板を置きながら返します。

 

「一応、ちょっと周囲を見てみましょうか。セルリウムらしきものが漏れ出ている場所をさっき発見しましたので」

『そうだね。そこが漏れてなければ、任務完了かな』

 

ダンザブロウダヌキの言うセルリウムらしきのものが漏れていた場所に行くと、そこにはドロドロとした液体が流れていた後がありました。今はもう流れ出していない様子です。

 

「ふう…………一件落着ですかね」

『だね。下山しようか』

 

山の麓でのセルリアン大量発生事件は、これにて解決したようです。

白虎の石板は地面においても光り続けていたので、とりあえず大丈夫なようです。

他の四神も問題なく光っており、火口のフィルターも張られたまま動きません。大丈夫そうです。

 

全て安全を確認したのち、一行は下山し始めました。

 

山を降りる頃、時効はすっかり夕方です。

西の空の太陽はオレンジ色に輝き、世界を朱色に染め上げています。

木々の生えているところまで下山しました。夕日に影が長く細く伸びていきます。

 

ダンザブロウダヌキが振り返りながら質問を投げました。

 

「みなさんはこれからどうしますか?」

 

ヒクイドリはその質問に少し考えた後、

 

「私の役目は終わったみたいだから住処に帰るよ。君たちはどうする?」

 

セッキーとカバンさん、サーバルは、

 

『ボクたちも一旦研究所に戻るかな』

「そうですね。それから、レミアさんの捜索に出かけましょう」

「そうだね! アライグマとフェネックがどうなってるのかも気にな――――カバンちゃん伏せてッ!」

 

サーバルの言葉は最後まで続きませんでした。

鋭く叫ぶや否やカバンさんを押し倒します。その、先ほどまでカバンさんのいた場所を、風切り音が通り過ぎました。

 

『ッッ!!』

 

セッキーもすぐさま反応します。カバンさんに襲いかかってきた者に対して、真正面から上段蹴りを叩き込みます。

勢いと膂力に任せた一切躊躇いのない蹴りが、襲撃者の側頭部にめり込みましたが、

 

『くっ! ダメか!』

 

襲撃者は上体を柔らかくそらし勢いを殺すと、そのまま後ろに飛び退きました。

 

周囲は木々に囲まれた森の中。その中でも数メートルにわたって木の生えていない少し広々としたこの空間に、襲撃者は木の生えているギリギリのところまで下がります。セッキーたちとの間に数メートルの間合いが生まれました。

 

「ガルルルルルルルルルルル…………」

 

牙を剥き出し、涎を垂らし、黒い瘴気を体中から立ち上らせながら唸っています。

襲撃者――――それは、いつぞやの峡谷にて一戦を交えたビーストでした。

 

『まさかここで襲われるとはね…………ボクが時間を稼ぐ。カバンはみんなを連れてバスまで避難して』

「セッキーさんはどうするんですか!」

『なんとかするよ。今セルリアンに招集をかけてる。直に集まると思うから戦力はあるよ』

「でも……」

『逃げて。じゃなきゃ守りながらなんて戦えない』

 

セッキーの額に一筋の汗が流れていました。表情に余裕はありません。セルリアンを含めて全力で戦っても勝率は五分五分だと、セッキーは内心で奥歯を噛みました。

 

カバンさんは、このままセッキー一人を置いて逃げて良いのか、一緒にどうにかして逃げるべきではないかと迷いましたが、

 

「…………わかりました。無理だと思ったら、すぐに逃げてください」

『わかった』

 

セッキーはビーストから目を離さないまま言葉を続けます。

 

『万が一そっちに行った場合、ヒクイドリ、サーバル。カバンとダンザブロウダヌキを守って』

「あぁ、当然だ」

「まかせて!」

『行ってッ!』

 

セッキーの叫びに、カバンさん、サーバル、ダンザブロウダヌキ、ヒクイドリが走り出します。目指すはバスです。

 

ビーストは逃げていく四人を目で追っていましたが、

 

「グルルルルルルルルルル」

 

視界からいなくなると、セッキーの方へと視線を移します。どうやら一対一での戦いに乗ってくれる様子です。

 

『君が何を目的にフレンズを襲っているのか知らないけど…………ここで止めるよ』

 

セッキーの周囲に虹色の粒子が舞いました。

 

「グルルルル――――ガァァァァァッッ!!!」

 

キラキラと宙にたなびくサンドスターに、ビーストはまるでそれが見たかったと言わんばかりに一声、叫びを上げると、セッキーの方へと突進してきました。

 

正面から、勢いを増して間合いを詰めてくるビーストに対して、セッキーは不敵な笑みを浮かべ呟きます。

 

『そう易々とやられると思わないでね』

 

 




次回「vs.ビースト」

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