美醜逆転幻想物語   作:れいさく まさと

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できるとは思ってなかった連日投稿(白目)

しかもなんでか前二つよりも長いっていうね。なんでだろうね、本当。

見てくださっている方々、毎日感謝しています。
感謝ついでになんですが、皆さんも何か作品書いてみませんか?(ゲス顔)

もちろん冗談です。えぇ、ええ。

それと、感想には基本的にgoodをつける形で返信していこうかと思っています。質問とかがあれば返すかも知れませんけれど。

それでは今回も、ゆっくり見ていってください。


赤・白・黒・紫・藍

 side:上原比叡

 

 夕食後また両隣に二人が並んで、しかし真面目な顔を作り、幻想郷の紹介の際に隠していた信じられない事実を俺に話してくれた。

 

 この世界の美醜は、俺とは真逆であるのだという。

 しかも男性の顔のレベルが低く、俺のような普通の顔でもかなりのイケメンの部類に入っている、らしい。

 

 つまり、幻想郷では。

 

 吹き出物が美の象徴。

 肌は荒れていれば荒れているほど美しく。

 理想の体型はキュッ、ボン、ボン。

 

 

「……じゃあ紫さんと藍さんって」

 

「「吐き気がするほどの不細工(です)よ」」

 

「……信じられないです」

 

 

 彼女達妖怪は人間とは違い長寿で、なおかつ体型の変化が起こりにくいとのことで、生まれた瞬間に美女かブスかが分かってしまうのだと言う。

 

 どれだけ頑張っても理想の女性に近づけないというのは苦痛だっただろうなぁ。長く生きてきたのなら尚更。

 

 

「そんなに暗くならないで、比叡」

 

 どうやら、俺はいつの間にかそんな表情をしていたらしい。気落ちしていたのは確かだが、なるべく表に出さないようにこれでも頑張ったんだけどなぁ。

 

 

「今の私たちには理解者(あなた)がいる。それだけで十分よ」

 

 

 彼女の言葉に同意するように、藍さんが手を重ねてくる。

 

「俺は、貴方がたの助けになれたんでしょうか」

 

 

「勿論です、比叡様(・・・)

 

「でも比叡、図々しいとは思ってるのだけれど、一つ頼まれてくれないかしら」

 

 

 

 

 

「私たちだけじゃなく、私の知人たちも救ってくれないかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 side:博麗霊夢

 

 

 ズズズ、と。私が茶をすする音だけが境内に響く。

 

 幻想郷の守護者であり、力のあるものから代々紫によって選出される。

 

 それが博麗の巫女。

 

 だけどどうしてか選ばれるものは全て外見が劣悪な者達ばかり。私だってそうだ。

 

 しかもどれだけ自分を磨こうとしてもーー食事量を増やしたり、不摂生な生活を送っていた時期があったーー巫女としての仕事が、それらをまるっと無駄にしてしまう。

 

 妖怪退治。あれは想像よりはるかに体内のエネルギーを使う。そのせいでせっかくつけた脂肪が落ちる、というかまずつかなくなる。

 結局肉をつけようとするのは巫女を始めて一、二年で辞めた。

 

 それと、何年も博麗の巫女をやってきて未だに慣れないことがいくつかある。

 例えば、助けた村人達に恐怖の視線を向けられること、とか。私の顔が汚いのは違いないけど、だからって助けたのに感謝の念も持たずに逃げていかれるのは寂しいどころじゃない。

 

 博麗の巫女(私たち)の立場は二つ。

 

 守護者と、醜女。

 

 まだ『博麗』を譲る気は塵ほどもないものの、どこかの妖怪にサラッと殺されて死ぬのも有りじゃないかと、今の自分は欠片でも考えてしまう。

 

「……くだらない。私より強い妖怪なんて、そこら辺に転がってるわけないじゃない」

 

 

 

 

 

 

 ーー彼女は気づかない。自身の心の軋みに。

 ーー彼女は目を向けない。自身の心の穴に。

 ーー彼女は気づけない。自分の心が、既に、壊れかけていることに。

 

 

 

 

 

 

 満身創痍。それが彼女の心の現状だった。

 

 

 

「霊夢、何難しい顔してるんだ?」

 

 考え事をしていたせいか、外からの声に反応するのが遅れた。

 聞きなれた、私の親友の声だ。

 

「何でもないわ。それで、何の用事なの魔理沙。またお茶だけタカリに来たの?」

 

 だったら賽銭を入れていけ、と視線で訴えるも、カラカラと笑い飛ばし遠慮なく部屋へと上がってくる。

 

 彼女は霧雨魔理沙。私の唯一の親友で、この神社に来る珍客のひとりだ。

 

 魔理沙も相当な不細工だと、私も彼女も思っているのだが、あまり気にしていないようだ。

 

 その話を初めて振った時だって笑いながら

「魔法の実験とかで家に籠ることが多いから、あんまし気にならないぜ!」

 と言っていたのをよく覚えている。

 

「いいだろー茶くらい。死ぬわけじゃあるまいし」

 

「私にとっては死活問題なのよ」

 

 だって人里に買い物なんてあんまり行けないし。

 

 いつもの事だからと、半ば諦めて魔理沙にお茶を出す。

 

「……霊夢、足りないぜ」

 

「何がよ。ちゃんとお茶は入れてあげたでしょ、湯のみギリギリまで」

 

「そうじゃなくてだな、ほら、私は客人だぜ?」

 

 

 

 

「お茶請けとか」

「はっ倒すわよアンタ」

 

 

 

 

 もはや日常の一部となったこの掛け合い。

 

 これをやっている時は心が休まっている気がする。

 

 

「ーーー?」

 

「ーーー、ーーーーー。」

 

「ーー。ーーー、ーーー!」

 

 

 ……これ以上珍客が増えるのは勘弁願いたい。

 こっちに来られても、出すものなんてお茶ぐらいしか元々ないんだし。

 

 それに彼らがもし人間でも多分そいつらは参拝客じゃない。どうせ冷やかしとかその類だろうにーー

 

 

「ーーせっかく神社に来たんだし、参拝ぐらいはしていかないとね」

 

 

 ーーー!?

 

「……なぁ霊夢、い、今おおお男のここ声が」

 

「えぇ、私も、ハッキリ聞こえたわ……」

 

 私と魔理沙が同時に体を震わせる。

 

 ……まさか男の参拝客が来るなんて予想外だったわ。

 しかも、参拝してくれるの? この神社に?

 早くお面を取り出してこないと。もし見られたら相手が大変なことになってしまう。主に吐き気とか。

 折角の参拝者第一号をここで失う訳にはいかない。

 

 

 そう思い立ち上がった後、普通ならそこにいるはずもない、有り得ない声を二つ、私達は聞いた。

 

 

「そうしてくれたら霊夢も喜ぶんじゃないかしら。

 この神社自体あまり人が寄り付かない場所だから、彼女、お金があまり無いのよ」

 

「そうです比叡様。

 霊夢の信用を得るのなら参拝、もとい賽銭箱にお金を入れるのが一番手っ取り早いかと」

 

 

 おい私をどんなイメージで捉えてるんだそこの妖怪二名。

 

 ってそこじゃない。

 え……、紫と藍?

 

 

 

 賽銭箱に銭が入り、空間で音が反響し、私の耳にまで届く。

 でもそれ以上の衝撃に、私は体を動かすことが出来なかった。

 

 

 

「そうだ、上がっていかない、比叡。

 お賽銭も入れたことだし、霊夢も歓迎してくれるはずよ」

 

 

 

 紫が放ったその言葉で、私はやっと我に返ることが出来た。

 

 そうだ、お面を取りに行かなければ。何故紫と藍が男性を連れているのかは知らないけど、来ると言った以上その足はもう止められまい。

 

 だったらせめて、せめて顔だけは隠しておかなければーー。

 

 

 

 

 

「ーーで、その博麗の巫女が、彼女よ」

 

 

 

 

 正面から聞こえた紫の声。

 

 気のせいだと、嘘だと言ってくれ。

 

 そこはこの部屋の出口だ。

 お面は別の部屋にあるからと、たった今部屋を出ようとしていたところなのに。

 なんでそこに、スキマを使ってまでアンタが立っている。

 

 

 

 

 

「そう、この子が」

 

 

 

 

 居た、居てしまった。

 そこに、参拝してくれた男性が。

 

 顔を見られたくない、でもお賽銭を入れてくれた相手に対して顔を背けたままでいるのはどう考えても失礼だ。

 

 数秒の葛藤の末、後者が勝ち上がり意を決して私は顔を上げた。

 

 

 

 その後の記憶は、無い。

 

 最後の記憶は男性が綺麗な目と顔で私を見つめ、笑ってくれたことだった。




今更なんですけど『UA』ってなんですか?

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