思っていたよりも見てくれる人が多くて驚いてます。(ここよりもいい小説大量にあるよ?)
感想も来てて混乱してます。
今回もよろしくお願いします。
side:八雲藍
……何が起こっているのだ。
「んふふ〜、残ってくれて嬉しいわ、比叡〜」
「紫さん、ちょっとくっつきすぎですって……ほら、藍さんも見てますし一旦離れましょう? ね?」
顔を赤一色に染めて紫様を引き剥がそうとする比叡殿。どうやら紫様は彼が幻想郷に留まってくれることがこの上なく嬉しいようだ。無論、私だって感激している。だがちょっと待って欲しい、一体なんだこの構図は。
ーー想像してみてほしい、絶世の美男子の隣に醜悪の塊である存在が並んでいる、というか絡みついている場面を。あぁ、主とはいえ、私が従者であるとはいえ言わせてもらおう。
……吐いてもいいですか、と。
見苦しさの塊へと視線を巡らせなければ、それはそれは絵画を連想させる美しさだ。彼の腕に絡まる悪魔にさえ目を向けなければ、なのだ。
我が主人がこれだけ不細工であるーー私自身人のことは言えないがーーにも関わらずこれだけ好意的に接してくれる比叡殿には、感謝せざるを得ない。紫様のここまで晴れ晴れした笑顔など、いつ以来だろうか。
でも紫様、もう一言だけ言われてください。
紫様が比叡殿を信用している以上、私だけが仮面をつけているのは失礼に当たる。
考えがそこにたどり着き顔に手を伸ばし、私の下劣さを留めていた最後の砦を外す。
紫様以外の前でこうやって仮面を外すのは、もしかしたら初めてかもしれない。
顔に吹き付けられた空気は、どこか冷たく感じられた。
まだ春の陽気が漂っている時期とはいえ、ほとんど夏のようなものだ。この冷たさはきっと、私の心を表していてーー。
「……なんだ、やっぱり綺麗じゃないですか」
しかし私の精神はそんな彼の一言と朗らかな笑顔で、いとも容易く熱に上書きされていった。
紫様の事言えないなぁ。私も大概、惚れ込みやすいようだ。
side:上原比叡
藍さんは美女といえば美女なのだが、紫さんのそれとは若干異なる。
紫さんが妖しく光り、妖艶な美しさを帯びているとしたら、藍さんのものは凛々しさがベースにある。
鋭い目は彼女の心根の強さを表し、主を守るという忠誠心は常に佇まいから滲み出ている。俗に言う、『クールビューティー』という奴だ。
タイプの違う二人の姿は、むしろ二人一緒にいなければ不自然だと感じるかもしれないほど絵になっていた。
そのまま見惚れていると彼女の顔がみるみるうちに赤くなっていくのだが……褒められ慣れてなかったのかな?
自分の言葉に照れてくれているという事実がたまらなく嬉しくーー紫さんが泣いた時にも感じたーー自然と笑みがこぼれてしまう。
すると左から上着を軽く引っ張られる。
ゆっくり振り向くと、頬を膨らまし、少しむくれた表情の紫さんが、そこにいた。
怒ってるのかな? むしろ可愛かったり和んだりするんだけど。
「……藍ばっかりズルイわ」
そう言って紫さんは体を押し付けてきて、彼女の体の大きな双山や柔らかな肉付きとかの感触が直に伝わってくる。
これはちょっと、どころかかなり恥ずかしい。
だが悪い気分では無い為閉口していると、今度は藍さんがこちらに寄ってきた。
「……紫様ばっかりズルイです」
ペットは飼い主に似るなんていうけど本当にそうなんだなーあはは、なんて、俺は軽い現実逃避をする。
紫さんはいっそう強く腕を締め付けて来てーーぎゅうっ、という音が似合いそうな具合にーー対する藍さんはそっと腕を絡めてくる程度だ。しかし彼女は顔を真っ赤にしながら俺の右隣に座っているため、どちらも破壊力は相当である。
結局三時間近く経つまで彼女達は俺の横に付いてきた。離れた時には一瞬不安げな表情を見せたものの、
「流石にもう日が暮れてきちゃったから、色々準備しないと」
と言えば、二人とも満足気な顔に変わっていった。
今まで二人で周囲からの罵倒に耐えてきたんですから、そりゃあ離れられないですよね。