美醜逆転幻想物語   作:れいさく まさと

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初投稿です。なんで東方のあべこべものって少ないんでしょうかねぇ()

成分補充を自ら行うのって当たり前ですよね? ね?




紫さん

 上原 比叡(かみはら ひえい)は凡人である。

 

 何でもできるがある程度までしか成長しない。

 

 身長は170ちょっとで、顔も中の上程度。

 

 交友関係もあるそこそこで……どこにでも居そうな、大学生。

 

 比叡とは、そんな男だ。

 

 だから今日もいつも通りに、ただ平凡な一日を過ごしていただけだった。

 

 ……なのに。

 

 

 

 

 

 

 スーパによった帰り道、このあたりであまり見かけたことがない人物に出会った。

 

 金髪で、肌は陶器のように美しく、スラリと伸びた手足。

 

 出るところは出て、引っ込むところは綺麗に引っ込んでいる。

 

 何よりもまるで彫刻かと見間違えるかのような整った顔。

 

 

 ……モデルさんかな? 服もあまり見慣れないものだし。

 

 

 話すのは気が引けるが、もし道に迷っていたら相手も困るだろうし、どうしたのか聞くだけ聞いてみるか。

 

 

「すみません、どうかしましーー」

 

 

 瞬間、突然の浮遊感。

 

 それが足元にいきなり現れた穴に落ちているとは、思いもしていなかった。

 

 

「なっ!? ちょ、うわあああああああッ!」

 

 

 体感時間は5秒といったところか。

 

 5秒後、俺の体は地に叩きつけられ、そのまま気を失った。

 

 

 

 

 

 side:八雲 紫

 

 ……私が一体何をしたっていうんだ。

 

 私はただ結界のほころびを直そうとしたらたまたま外の世界に出てしまって、修復後帰還。幻想郷の管理者たる行動しかしていないはずだ。

 

 なのに……。

 

 

「紫様。拉致はいけないと思います」

 

「だから違うって言ってるじゃないのよっ!?」

 

 

 なぜ、男性が一人ついてきてしまったのか。しかも超絶イケメンの(・・・・・・・)

 

 そういえば戻ってくる前、どこかから叫び声が聞こえたような。

 

 

「もう一度言います。自らの姿が受け入れられないからと言って、外の世界から好みの男性を拉致らないでください」

 

「私そんな度胸ないわよ! 第一、好みの男性を庭に叩きつけたりしないでしょう!?」

 

 

 別に好みでないかと言われればNOと言うしかないが。

 

 

「それに私達は妖怪。何刻と時が過ぎようと醜い姿なのよ? 受け入れてもらえるわけが……」

 

 

「……うー、ん。うぁ?」

 

 

 男性が起きる。男性の声なんて久々に聞いたかもしれない。でも今まで聞いてきたものとは、どこか違う。

 

 透き通ったとても綺麗な声。耳にしているだけで体の力が抜けていくようだ。

 

 っと、危ないところだった。私は咄嗟に持ち歩いているお面を付ける。

 

 こんな醜い顔を目覚めてすぐには見たくあるまい。

 

 そう配慮しての事だった。

 

 

「……変な宗教勧誘かな? すみません、そういうのには興味無いので」

 

 

 男性の口から最初に出た言葉はそれだった。

 

 その一言を聞くだけで、心臓が鼓動を早めだす。

 

 できるだけ目の前の彼にこの鼓動を悟らせないように努めて、答を紡ぐ。

 

 

「ここは、幻想郷。忘れられし者達が集う、あなたの知るものとは違う別の世界よ」

 

 

 それから私は彼に様々なことを説明した。

 

 はじめは間を丸くしていた彼も、私が真剣に話すうちにこちらの話に聞き入っていた。私の目を見ながら(・・・・・・・・)

 

 

「本当の話、なんですよね。それって」

 

「えぇ。そして貴方は今二つの行動が取れます」

 

 

 帰るか、帰らないか。

 

 この地に一度踏み入ってしまったからにはしなければならない、恒例の質問。

 

 ここで「親が心配なので」とか「あっちには友達がいるから」と言って「帰る」を選ぶまでが定型であり、というか大体9割はこっちを取るーー

 

 

「ーー最後に一つ、俺から質問というかお願いというか……があるんですが、聞いてもらえますか?」

 

 

 なんだろうか。名も伝えたし、説明に不備はなかったはずだ。他に聞かれることなんてあっただろうかと考えて。

 

 肯定の意を示すと、じゃあ、と言って。

 

 

「お面、取ってくれませんか」

 

 

 

 

 

 

 

 side:上原 比叡

 

 もう一回あの美しい顔を見てみたい。

 

 紫さん、だったか? その隣にいる人も絶対美人だろうし、スタイルいいし、ぶっちゃければ二人ともどストライク(多分)なんだが。

 

 だからこそ、なぜ顔を隠しているのか。

 

 あっちで見た顔とは変わってるとか? いやいやまさか、そこまでこの世界はおかしくないだろ。まず俺の体に、異変が見られないし。

 

 じゃあどうしてーー?

 

 

「とても、醜いわよ?」

 

 

 落ちてきた呟きはとても重く、寂しいものだった。

 

 

「肌が白くて、指も体も細くて胸が大きい。おまけに顔立ちが最悪。目も鼻も綺麗に整ってしまっている」

 

 

 それって全国の女性に喧嘩売ってません?

 

 逆に紫さんほど美しい女性を見たことがないんだが。

 

 呆気にとられている俺をそのままに、彼女は面を取った。

 

 やっぱり、

 

 

「ーー美しい顔だ」

 

 

 ……………………ハッ!? つい声に出てしまった!

 

 途端紫さんが俺に抱きついてくる。

 

 ちょっとメーター振り切れそうになるんでやめてもらっていいですかね、もちろん理性の。

 

 

「……もう一度、言ってちょうだい」

 

「うぉ、あ、う、美しいです、紫さん」

 

 

 嬉しい、と言ったのだろうか。

 

 その彼女の声は、涙で濡れていた。

 

 

 


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