ローグライク転生=二度死んだ男の生き足掻き放浪記=   作:パンデミック!

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まずキャラメイクで躓くっていうね


チュートリアルが鬼畜 その1

 

「さてもう一度言うぞ愚か者君」

 

この時点で俺のやる気は半減した。ついでにイライラが倍増した。

デバフ技なら即規制ものである。

 

「君は間違いなく稀代の愚か者だ。」

「二度与えられた生をそれぞれ無能と無知によって

 しかも飛び切りの伴侶や加護があったにもかかわらず台無しにした男だ。」

 

えっ?超絶美人で性格も良くておまけに料理上手の嫁持ちだったって?

 

「そして死後に(ぜんしん)に選ばれ、そのまた死後に(あくしん)に囚われるギリシャ級の不運も持ち合わせている。」

 

そこまで不運じゃねえよ!精々パン落としたらバター面がいっつも下になる程度だ!

 

「じゃあ、契約しようか。」

「じゃああああじゃねええ!!」

「なぜだ!?」

 

なんでびっくりしてんだよ!こっちがびっくりだよ!!

 

「ここまで褒めてなぜ契約しないのか、君には疑問が尽きないよ。」

「…………。」

「なんだね?」

「……お前、いままで何回契約結んだことあるの?」

「これが初めてだが?」

「なんでドヤ顔なんだテメーー!!」

 

どこにドヤ顔する要素があった!!

 

「大体どういう契約かも言ってねえじゃねえか!俺は利用規約だいたい読んでからサインする派なんだぞ!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()

「!」

 

悪魔のその一言は俺を閉口させ、不安にさせ、背筋に冷や汗を感じさせた。

必死に思い出そうとするも全く出てこない自らの名、いや俺のだけじゃない。

親父、お袋、友達、恩師、にっくきアイツ、

 

最愛の妻(おひめさま)

 

その総ての名前が出てこない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさかこのおもちゃ箱に入って万事無事だったとでも思っていたのかい?

 あの邪神がただのおもちゃ箱に放り込むだけでと本気で思っていたのか?」

 

「『入ったモノの名をすべて奪う』それがこのおもちゃ箱の唯一絶対のルールだ。」

 

激烈な恐怖が胸中を切り刻む。何故だ?ナゼ、名を思い出せないだけで??

 

「君は大変素晴らしいことに愚か者なので全く大したことないだろうと考えているだろうが、見当違いも甚だしいぞ。

 名前とは在るだけでそのモノ認識する大変便利なものであり、知るだけでお互いを結びつける大切なものだ。

 簡潔に言えば、名とは命綱の様なものなのだ。とりわけ実体(にく)を持たない者にとっては。」

 

そして悪魔は当たり前のことを告げた。

 

「綱渡りでいつもあった命綱を()()()()()()()()()()()()失くせば、壮絶に不安になるに決まっているだろう。」

 

________________

 

____________

 

________

 

何とか気持ちに一段落付き、悪魔とまともに喋れそうになったのはかなり時間がたった後だった。

 

「………それでどういう契約だ?」

「中々真剣な目つきになったじゃないか。

 私としてはもうちょっと臆病そうにしてくれたらなお高評価なのだが。」

「強がりは一流だ。」

「虚勢には慣れているということか。」

 

やかましい。

まあいいだろうと悪魔は契約を持ち掛けた。

「一つ、君は悪神の玩具箱を脱出し人間として復活し名の記憶を取り戻す。」

「一つ、君が今後得る魂は私に払う。」

「一つ、君が払った魂に応じて私は君に報酬を与える。」

「一つ、契約はお互いの名付けを持って成立とする。」

 

契約はかなりシンプルだった。

こんなに簡単ならさっさと言えよとか、

契約は契約でも雇用契約じゃねえかとか、

色々文句を言いたかったがそれよりも気になることがいくつかあった。

 

「お互い?」

「言っただろう、入ったものは名を失うと。

 もっとも私は元から名などないがね。」

 

どうやらこいつは名無しの悪魔衛門だったらしい。

 

「ていうか魂とかどうやって手に入れるんだよ。」

「何かを殺せばそれでいい。後は私が勝手に回収する。」

「殺せばて。」

「なに、どのみち否が応でも君の邪魔をしに色々来るから安心したまえ。」

 

安心できねーよ。今気持ち不安定なんだからそういうこと言うなよ。

 

「で、最後に聞きてえんだが……」

「なんだね?」

「なんで俺なんだ?」

 

これが一番気になった。俺は普通な男だ。

というかぶっちゃけこいつが言うほどではないが大した奴ではない。

なのに何故かこの悪魔は俺に契約を持ち掛けた。

その理由が知りたかった。こいつを知るためにも。

 

「さっきから言っているだろう。」

 

やれやれとでも言いたげに首を振って悪魔は答えた。

 

「君が愚か者だからだ。」

「英雄では駄目だ。彼らはいずれ我々(あくま)の助けなく自ら道を切り開く。」

「武人では駄目だ。彼らはいずれ我々(あくま)を打ち倒す。」

「賢者では駄目だ。彼らはいずれ我々(あくま)の契約の穴を見つけ、私は臍を嚙むことになる。」

「愚者でなくてはならないのだ。いや違うな、愚者でこそ我々(あくま)の契約者として最も相応しく、最も良き契約を結べるのだ。」

「そして君はこの契約を果たした時、」

 

悪魔はムカつくほどイイ笑顔でこう言った。

 

「君はその時救世主を超える三度目の復活を果たすのだ。」

「その名は広く知れ渡るだろう。愚者でありながら復活を果たした者の名を。」

「善の神々の勇者でもなく、邪神の魔物でもなく、」

()()()()()()()()()

 

()()()。それがこの悪魔の目的であるらしい。

そして俺は「このどや笑顔マジで腹立つ。」そう思いながら、

 

「コンゴトモヨロシク、『デーモン』」

「コンゴトモヨロシク、『フール』」

 

悪魔との契約を結んだ。

 

 

「さて契約には契約書がいるな。」

 

そう言って悪魔はいきなり俺の胸の中に手を突っ込んだ。

 

「!?!!?!!???」

「ちょっとくすぐったいぞ。」

「それ突っ込む前に言うセリフだろうが!!」

 

そんな突っ込みをスルーして俺の胸から文字通り悪魔は引っ張り出した。

一振りの剣を。

刀身長めので幅は普通、飾り気もなく、切れ味も悪そうで、ちょっと頑丈なだけのただの長剣(ロングソード)

あのチートの「何でも切れる剣」とは比べることすら無理そうな、普通の剣だ。

 

「これは君の魂を具現化したものだ。」

「お前何勝手に人の魂を剣にしちゃってんの!?」

「安心したまえ、収納は君の体に勝手に収まる。」

「置き場所に困ってんじゃねえよ!」

「これ以外に使える武器はないぞ。」

「え?マジで?」

 

聞いてねえぞおい!聞かなかったからね!クソが!

 

「壊れたらどうすんだよこれ!」

「大丈夫だ、私が直すよ。魂と引き換えに。」

「お前が直すの!?鍋や屋根じゃねえんだぞ!」

 

こうして俺は『悪魔の契約者』フールとなったのであった。

 

 

「しっかし君の魂は実に見事な冴えない風貌の剣だな。」

「悪かったな冴えなくて!」

「褒めているのだよ。」

「余計悪いわ!」

 




悪魔と契約を交わしたフール!
ここだけ見るとマジでダメ人間だね!
そんなダメ人間が牢から出て最初に出会ったのは骨人間だった!
悪魔曰く「君よりは幸運な人」はどうやら敵らしい!
ぶっちゃけ雑魚なフールは勝てるのか!?
そしてこのおもちゃ箱最下層「牢獄」からの脱出を阻む黒い影とは!?
次回「チュートリアルが鬼畜」
来週も投稿できたらいいな!

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