寄生獣 【後藤討伐戦後】   作:だまぱんだはら

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第3話 警察とパラサイト(2)

「なに!??」

すぐさま、平間警視は拳銃を構えた。

その瞬間、ミギーはその形を露にした。ミギーがこういう公的な人間に対して自分の姿をさらすのは初めてかもしれない。

 

「平間さん、ちょっと待ってください。ミギーも少し待ってくれ。おれは、パラサイトとは言っても殲滅されたあいつらとはちょっと違うやつなんです。」

...あぶねぇ、この人すぐ拳銃撃ちかねないからなぁ。

 

「どういうことなんだね?泉君。」

「今回、問題になっているパラサイトに寄生されてるのは確かです。でも、僕が寄生されてるのは脳ではないので、人間の意識はしっかり残っているんです。寄生されたのはこの右手です。」

 

 

「なるほど、奴らは脳を乗っ取るから人間の意識が残らないが、脳以外に寄生した場合は人間の意識を奪うことはできないということだな。」

口では納得したかのような様子だが、拳銃を下におろす様子はない。

 

ミギーは臨戦態勢を維持しながらも、口を開いた。

「シンイチが話してしまったのではもう仕方がない。我々の生存を確約してもらえるのなら、警察に協力してやってもいい。それがない限り今すぐお前を殺す。」

 

ミギーにしては意外な内容だった。いや、ミギーですらどうしようもない状況なのかもしれない。むかしのミギーなら容赦なく平間さんが拳銃を取り出す途中で殺してそうだ。

 

「平間警視、俺としては人間に協力するのはやぶさかではありません。もちろん、僕は人間を殺さないように日ごろからミギーを止めてきたので、まだ殺した人間はいません。襲い掛かってきたほかのパラサイトなら返り討ちにしたことはありますが。」

「君の気持ちはわかる。だが、この取り調べの間だけ拳銃を構えたままにすることを許してほしい。君を完全に信用したわけではないからね。」

 

「わかりました。」

「ちなみに、私は君が山奥で殺したパラサイトを後藤だと断定しているが、あれは後藤なのかね。」

「はい。後藤に追われてその村まで逃げてきたんです。森の中で一度対決したんですが、負けてしまい、あなたが言っていたおばあさんに助けられたんです。」

 

「なるほど、それで二度目の挑戦で奴を倒したと。」

「はい。」

 

話しているうちに、平間警部の顔の緊張感がだんだん溶けてきた。脳を侵食されていなければ、少しは安全だと判断したのだろうか。

 

「一応聞いておくが、我々警察が君に危害を加えない限り君は我々に敵対することはないと思っていいのかね。」

 

「ミギー、いやこの右手のパラサイトは自分の生存が最重要項目なので、自分の生存を脅かす者はパラサイトであろうと、人間であろうと変わりはありません。俺は人間を殺そうとは微塵も思ってませんが、ミギーを僕が操れるわけではないので、俺に対し危害を加えようとした場合、あなた方に攻撃しないとは保証しません。確実に我々に危害を加えないと確証が得れればよりお手伝いができると思います。おれもこれ以上知り合いを亡くしたくないので。」

 

「なら、その右手だけをきり落とせばいいのでは?」

「そんなことをしたら僕からの栄養分が与えられないためこのパラサイトは死ぬでしょうが、俺が右手を失いますし、今後、後藤以上のパラサイトが出た場合、対処できなくなります。パラサイトを相手にするにはパラサイトを使うのが最も効果的かもしれません。」

 

「確かにそうだ。では、我々はほかのパラサイトから君と君の父などの君周囲の人間を保護しよう。その代わり、パラサイトに関する新しい情報や、強力なパラサイトに対する対処への協力を頼みたい。」

 

「了解しました。」

 

そして、新一と平間警視は契約書にサインして、お互いの協力を確認し合った。

 

新一は、父さんに右手のことを話す前にこの人に話すとは意外な展開になったなぁと他人事のように考えていた。少なくとも、警察から駆除の対象として命を狙われる立場ではなくなったことは大きな成果だと言えるかもしれない。

「案外、普通に話してみればよかったじゃないか。今まで、そこまでムキになって隠すことはなかったんじゃないのか?」

 

ミギーが少しあきれたような顔をして答えた。

「そんな安心してる場合じゃないだろう。今回で確かに警察や自衛隊から狙われることはなくなった。人間の脅威は去ったと言っていい。だがな、そうなるとパラサイトの連中からみれば、警察と結託したシンイチほど危険な存在はない。きっと何回も何回も殺しに来るぞ。」

「そりゃ、そうだけど国が守ってくれるとは思うけど...。危なくなればミギーと協力すれば...。」

「それに、警察だって本当にシンイチに危害を加えないか疑わしい。」

「なんで?」

「普通ならこのまま警察署から返さずに、検査などを行ってもおかしくはない。シンイチに寄生してるパラサイトが右手だけとは限らないからな。例の機械で全身を調べて本当に右手だけが寄生されてるのか確認を取らないのは、あの平間警視にしては少しヌケている。」

 

「じゃ、まさか、家に帰らせたのは罠ってことか?」

焦り始める新一をミギーは見て、

「わからん。今日はもう疲れた。もう寝る...。」

 

といって、眠ってしまった。

 

警察の罠。そこまで考えなきゃいけないのか。

 

平間警視を信じたい。だが、万が一今殺されに来たら太刀打ちできない。どうする。もういちど逃げるべきだろうか...。


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