寄生獣 【後藤討伐戦後】   作:だまぱんだはら

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・登場人物
【泉 新一】
主人公。高校生。ある日、パラサイトが寄生しようと彼の右手から侵入したが、コードで腕を縛って、パラサイトが脳を奪うのを阻止したため、右手で成熟してしまい、右手に寄生することになった。
パラサイトの凶行によって、友人や母を失い、一時は心を壊してしまうが、本作の時間設定ではすでに人間の心を取り戻している。クラスメイトの村野里美のことが好きで、自分が生き残るための動機となる存在である。

【後藤】
通常、1つの体に1匹のパラサイトが寄生するが、後藤の体には複数のパラサイトが寄生しており、全身にパラサイトが寄生しているため、体中から触手をだすことができ、攻撃力やスピードなどははるかに人間の域を脱している。原作で登場するパラサイトの中では最強。性格は凶暴で、人間を殺しまわるために戦うことを考えている。他のパラサイトと同様に人間の生命への尊厳はまるでなく、市役所におけるパラサイト殲滅戦では、単独で生き残り、自衛隊を全滅させた。

【ミギー】
泉新一の右手に寄生したパラサイト。読書家で非常に知性が高い。原作のこの時点ではお互いに強い信頼関係を結んでおり、新一と友人となる存在。栄養は新一の血液から摂取するので人間を捕食しない。はじめは、きわめて冷淡で淡白な思考をし、人間の生死を顧みない言動や行動や、自分の生存を最大目的にする点で新一と対立することがあった。しかし、新一と交流するうちに人間らしい感情にも芽生え始め、人間の思考パターンや複雑な感情を理解できるようになってきた。感情的になった新一をいさめたり、新一を守るため自己犠牲的な行動をしたりするなど、原作のパラサイトの中では人間らしい思考の持ち主のひとり。


第1話 プロローグ

泉 新一は幸運にも青酸系毒物が混入した釘を後藤に刺したことで後藤を倒すことができた。後藤は複数のパラサイトから成る複合生命体であり、その強力なスピード、耐久力、攻撃力、回復力などすべての面で新一より勝っていたが、新一の幸運と新一の最後まで諦めない心が幸いした。

 

ごみを大量に廃棄し、空気や土壌、水質を汚染し、我が物顔で世界を支配する人間は、地球や他の生命体にとって毒でしかない。その毒である人間を上回る存在であるパラサイトは地球にとって必要な存在なのではないだろうか。特に多くのパラサイトの集合体である後藤は、市役所におけるパラサイト殲滅戦において、単独で生き残り警察を皆殺しにできるほど強力であり、人間を”間引き”するうえでは欠かせない存在なのではないだろうか。

 

殺したくない...

 

後藤は自分を殺そうとしたのは事実だが、今ここで必死に回復しようとしている生物を「人間の勝手な都合」で殺すなんてしたくない。新一はそう思った。

 

見逃すのは、人間としては明らかな罪といえる。また、今逃したら後で自分が死ぬことになる。しかし、生き延びようと必死にもがくこの「後藤」という生物を人間の都合で勝手に殺すのはいかがなものか。人間を殺すから生きる価値がない、生きていてはいけない、と人間が判断して実行する権利があるのだろうか。この生物も生きる権利があるのではないか。

しかし、ここで見逃すということはすなわち自分の死を意味する。また、自分の死に際して身近な人間も巻き添えで死ぬかもしれない。今まで死んでいった友人たちの死を無駄にすることになる。彼らは自分のせいで死んだと言っても過言ではない。しかし彼らの死が今の自分の生につながっていることは疑いようもない。ここで後藤にとどめを刺さないことは彼らに報いない行動であることは間違いないだろう。

 

殺すか、殺さないか。

 

殺しても殺さなくても罪となる。新一は葛藤した。

 

生物は本来自分の命が大事だ。自分の同種の命が大事だ。自分の命を守るために、同種の命を守るために、他種を殺すのだ。それは自然の摂理でもあるし、本能的にそれが最も大事なことなのは痛感している。

 

新一は鉈を振り上げ、後藤の意識の中枢神経が集まる脳を破壊した。そして新一は後藤の亡骸にただただ謝った。人間の都合を通したことをただ謝ることでしか償えなかった。

 

 

 

暗い山道を下り、老婆・美津代さんの玄関に貸してくれた鉈を置いた。

生きて帰ってこれた。この玄関を出たときは死しか考えていなかった。自分のせいで村の人間たちが殺されるわけにはいかない。今まで死んできた友人たちのことを考えれば、こんどは村人たちのために自分が命を投げ出す番だと、半ばあきらめていた。そんなある種の開きなおりをしていた新一に美津代さんがいったあの言葉。

 

「どんなことがあろうとも決してあきらめず臨機応変にね・・・・・」

 

あの言葉を決して忘れない。あの言葉に命を救われたんだ。

 

 

新一は固くそう決意した。

 

徐々に上がってくる太陽はまぶしかった。森、山、すべてのものに明るい光が降り注いだ。

 

「いま、おれは生きている...」

 

そうつぶやくと、ミギーは

「そうだな。」と淡白な声で言った。

 

「ミギーは相変わらずだな。」

新一はそう言うと、家路に就いたのだった。

 

 

新一にとってこの生還はパラサイトと人間との決着の始まりに過ぎなかった。




あくまでプロローグなので、ここまでは原作とあまり変わりませんが、第1話以降で本格的に動かしていきます。

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